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こぽっと唇から、血が垂れる。
俺はここまでか。
己の死期を悟った瞬間、心に渦巻く色んな想いが、濁流となって溢れだす。
走馬灯が俺の頭を過る。走馬灯とは、死に際に、人生の様々な情景が脳裏に現れては過ぎ去っていくというものの筈だ。
浅倉潤
思わず自嘲してしまうほど、俺の走馬灯は、城戸の兄貴一色。
あの人と出会った日のこと、俺を学校に行かせてくれたこと、夢を語ってくれた事が、つい先ほどの事のように思い出されていく。
浅倉潤
今まで辛うじて、言葉を紡いでいたが、体から失われていく血液により、とうとう声すら奪われてしまった。 それでも、声を発しようとするも、全て気泡のように消えていく。
なんか、人魚姫が泡になって消えていく情景に似ている・・・
その瞬間、俺は一つの答えに辿り着く。
ああ。そうか、俺は城戸の兄貴の人魚姫になりたかったのか。
近くで城戸の兄貴を笑顔を見れるだけで、嬉しくて、あの人の為になら命を捧げてもいいとすら思えた。きっと、人魚姫も王子様の側にいられるだけで幸せだった。
だから、王子を犠牲にして生きることよりも、幸せな思い出を抱えたまま、人魚姫は海に身を投じ、泡となる事を選んだ。同じような選択肢を突き付けられたら、きっと俺もそうする。
好きな人には生きてて欲しいから。
でも、どんなに俺が願っても、俺は人魚姫にはなれない。
だって、俺と人魚姫とでは、大きな相違点がある。人魚姫の体は泡となって消滅し、王子のもとに帰る事はなかったが、俺の亡骸は、きっと城戸の兄貴のもとに帰る。
結局、俺は何者にもなれないまま、あの人達(家族)の貼ったレッテル通りに、出来損ないのままで死んでいくのか。
せめて、城戸の兄貴の人魚姫くらいになってから死にたかったな。
あれ?そういや俺、一度も城戸の兄貴に俺の事どう思ってるか尋ねた事なかったな。
惜しい事してしまったわ。 今から聞こうにも、時間残ってへんやん。ほんま、神様はいけずなことばかりしてくれはるわ。
しょうがない。また、いつか向こうで、再開出来たら
貴方にとって、俺はどんな存在だったのか、聞かせて貰うことにするわ。
俺は一つの願いを胸にしまい、眠りについた。
死者は何も語らない。 だから、彼の先を知るすべはなし。 されど、冥福の住人ならば、彼の行く末を見届けた者達がいてもおかしくはないだろう。 果たして、彼(か)の者の今際の願いは叶ったのだろうか?
おわり
あとがき 捕捉。 浅倉の言いかけていた言葉の全体文↓「どんだけ俺の心を占領してくれとんですか。きっちりと後で、占領料請求させて貰いますわ」。 最近、童話パロはまってる。人魚姫の話自体が悲恋だから、書くとそっちに引っ張られるよね。 pixiv投稿用に、あおかづで白雪姫書いてるけど、こっちは暗くないんだよな。白雪姫に出てくる、王子様はネクロフィリア(死体愛好)っぽい描写があるが、名言されてないためギリ死体コレクター。でも、死体を欲しがったり、四六時中死体を眺めてたりする時点で、グレーよりの黒だと思うけどな。