テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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LINE１３８６

第1話 - あ

2023年12月06日

#スカッと

タナカトシキ

ツカサ

お姉ちゃん！結婚やめて！！

イノリ

もー何よ、結婚式当日に。やめられるわけないじゃない

ツカサ

ごめん。お姉ちゃんがあまりに幸せそうだから、こんなギリギリになるまで黙ってて

ツカサ

でも、その男は危険だよ！

イノリ

何が危険なのよ？ソウジロウさんに失礼なこと言わないで

イノリ

私の娘のアヤノにも凄く優しくしてくれて、本当の親子みたいに仲が良いんだから

ツカサ

だから問題なのよ！

イノリ

だから何がよ！

イノリ

夫に先立たれてからずっと、女手一つで娘を頑張って育ててきたのよ

イノリ

そろそろ幸せになってもいいんだって思っていたのに、邪魔しないでよ！

イノリ

もうすぐ結婚式って時にこんなこと言われて、気分最悪なんだけど！

ツカサ

お姉ちゃんが頑張ってきたのは知ってる。こんなこと言って、悪いとは思ってる

ツカサ

でもあの男はやめて！あの男、ロリコンなんだよ！

ツカサ

アヤノちゃんのこと狙ってるんだよ！

イノリ

は？ちょっといい加減にしてよ！

イノリ

彼のことそんな風に言って…許さないんだから！

ツカサ

本当だよ！

ツカサ

あいつ、私の娘のミサオのこともよくいやらしい目で見てるの！

ツカサ

やたら着替えを手伝おうとしたり…

イノリ

ソウジロウさんは親切で言ってるだけよ。勘ぐらないで！

ツカサ

やたらとミサオとアヤノちゃんの写真を撮ってたりしたの、気付いてないの！？

イノリ

彼、写真が趣味なのよ

イノリ

ソウジロウさんは子供の成長記録を残したいだけよ

ツカサ

そんなアングルじゃなかった！

イノリ

あぁもう、昔からツカサは心配性すぎるのよ！

ツカサ

シングルマザーの娘目当ての再婚って多いんだよ！

イノリ

彼がそんな人なら、アヤノがあんなに懐くはずないわ

イノリ

とにかく、これから結婚式なんだから邪魔しないで

イノリ

LINEの通知切るから！

ツカサ

ちょっとお姉ちゃん！話聞いて！！

～一時間後～

イノリ

不在着信

イノリ

不在着信

イノリ

ちょっと！私の結婚式で新郎と駆け落ちするとか何考えてるの！？

イノリ

散々、ソウジロウはロリコンの変態だから結婚するなとか言ってきたのは、

イノリ

結局彼を奪いたいがための嘘だったわけね！？

イノリ

わかってるの！？自分が何をしたか！！

イノリ

結婚式の最中に、会場のみんなが見てる前で彼に近づいて、

イノリ

「愛してるわ。夫とは別れる。お願い、私と結婚してうちのミサオの父親になって」

イノリ

って言うなんて！両親もあんたの夫も見てたんだからね！

イノリ

あんた、みんなに絶縁されても仕方ないことしたのよ！わかってんの！？

ツカサ

わかってるよ…だから、凄く勇気が要った

イノリ

じゃあなんでこんなことしたのよ！

イノリ

その後すぐにあんたと結婚するとか言い出して、

イノリ

あんたと手を繋いで二人で逃げて行ったソウジロウも何なのよ！

ツカサ

落ち着いてお姉ちゃん

イノリ

これが落ち着けるものですか！

イノリ

婚約者と妹、二人に同時に裏切られるなんて！

イノリ

そんなに私が幸せになるのを邪魔したいの！？私が苦労してるのを、見ていたはずなのに！

イノリ

あんたなんかもう妹じゃない！二度と顔見せないで！

ツカサ

新郎なら警察に引き渡したよ

イノリ

へ？

ツカサ

式場からずっと私が手を引いてリードしたら、素直に付いてきてくれた

ツカサ

そこが警察署だと気付くまでね

ツカサ

ごめんねお姉ちゃん

ツカサ

でももう、こうするしかなかったんだ

ツカサ

「駆け落ち」の最中に彼のスマホを盗み見て、

ツカサ

犯罪の証拠も手に入れたしね

イノリ

あ、あんた何言ってんの？

イノリ

犯罪の証拠って、まさか…

ツカサ

ザクザク出てきたよ。ミサオやアヤノちゃん、そして近所の女の子たちの

ツカサ

誰が見てもアウトな盗撮写真、動画の数々

ツカサ

そして、それをSNSでロリコン仲間達に共有してた…

イノリ

嘘…本当に！？

ツカサ

今、ソウジロウさんは警察の取り調べを受けてるよ

ツカサ

本人も認めてる。信じられないなら、彼のスマホの中身の写真を送るよ

ツカサ

～写真～

イノリ

確かに彼のスマホだ…そんな…嫌だ…

ツカサ

私も、ミサオの母親としてショックだったよ。覚悟してたけど。それでも証拠は保存した

ツカサ

お姉ちゃんがアヤノちゃんのために、

ツカサ

女手一つでずっと頑張ってきたのは、私が一番よくわかってるよ

ツカサ

ソウジロウさんは、そんなお姉ちゃんを支えてくれる存在だったんだよね

ツカサ

あの人のことを話すお姉ちゃん、とても幸せそうだったもの

イノリ

うん…この人なら私達を助けてくれる、って思ったの

イノリ

もう無理して頑張らなくていいんだ、幸せになっていいんだ、

イノリ

両親揃った普通の家庭になれるんだ、って…

イノリ

本当に大切な存在だったんだよ

イノリ

だから、なんだかまだ信じられない…

イノリ

私とアヤノをずっと支えたいと言ってくれたのは、全部嘘だったってこと…？

ツカサ

お姉ちゃんの一番大切な存在って、誰？

イノリ

え？

ツカサ

アヤノちゃんでしょ。ずっとアヤノちゃんのために、頑張って来たんでしょ

ツカサ

恋をするのも、再婚を考えるのもいいけど、

ツカサ

もう少しアヤノちゃんの安全について考えて

ツカサ

私も、出来るだけ二人を支えるから…

イノリ

…そうだね

イノリ

私、彼の本質から目を背けてた。アヤノにも本当に申し訳ないよ

イノリ

亡くなった夫にもね。ミサオちゃんも被害に遭わせてしまったし

イノリ

それに、ツカサにこんなことをさせてしまった。離婚されて絶縁されるかもしれないのに…

ツカサ

あ、それは大丈夫

ツカサ

旦那にも両親にも事情は話してあるから

ツカサ

まぁ、『無茶するな』ってＬＩＮＥで怒られたけどｗ

イノリ

そうなんだ…でもまだ誤解してる招待客達には、私から弁明しておくね

ツカサ

ありがとう

イノリ

ううん、お礼言うのはこっちの方

イノリ

アヤノのために、ありがとう

イノリ

籍まだ入れてなくて良かったよ

イノリ

それにしても、無茶な賭けに出たわね…

ツカサ

うちのミサオの方が小さくて、あいつの好みだと感じてたのよ

ツカサ

実際、ミサオの方により執着してたみたいだしね。だから読み通りに釣れたわ

ツカサ

あっヤバい！

イノリ

どうしたの？

ツカサ

ソウジロウさんが警察署の窓から逃げ出したみたいなの！

ツカサ

多分、お姉ちゃんの元に戻ってくると思うから気を付けて

イノリ

わかったわ

～数十分後～

ソウジロウ

不在着信

ソウジロウ

イノリ！助けてくれ！！

ソウジロウ

俺騙されてたんだ！あの女は恐ろしい奴だった

ソウジロウ

やっぱり俺にはイノリしかいないよ！！

イノリ

え？何よ今更

ソウジロウ

怒ってるんだよな。俺の心変わりに…本当にごめん

ソウジロウ

魔が刺しただけなんだ。本当に愛してるのはイノリだけなんだ！許してくれ！

イノリ

ソウジロウ…

イノリ

わかったわ。私もあなたに、アヤノの父親になってほしいから許すことにする

ソウジロウ

イノリ…！

イノリ

今どこにいるの？

ソウジロウ

イノリの家の近くだ！

ソウジロウ

頼む、訳は聞かずに匿ってくれ！あの女から逃げたいんだ！

イノリ

わかった。ひとまず、倉庫の鍵が壊れてるからそこに隠れてて

ソウジロウ

ありがとう、イノリありがとう…！

～数十分後～

ソウジロウ

おい、どうして警察がここに来るんだよ！！

イノリ

だって、私が通報したんだもの。あなたを探してる警察にね

イノリ

逃げようとしても無駄よ。倉庫も、私が開かないように外から細工した

ソウジロウ

は！？一体なんでこんなことすんだよ！ふざけんな、出せよ！

イノリ

さっき、愛してるのは私だけだ、って言ったわよね？

イノリ

でも、違うよね？魔が刺して心変わりしたっていうのも、ツカサに対してじゃないよね？

ソウジロウ

おい、何の話だよ…

イノリ

あなたがアヤノ目当て…正確には小さい子目当てだったってこと、わかってんのよ！

ソウジロウ

な、何言ってんだよ！俺はそんな変態じゃない！

ソウジロウ

アヤノのことだって、実の娘みたいに大切に思ってる！

イノリ

じゃあなんでツカサに『ミサオの父親になって』って言われて釣られたのよ！

イノリ

ミサオちゃんの方が好みだったから！？

ソウジロウ

違う！

イノリ

あんたのスマホの中身の写真、ツカサから送られてきて知ってるのよ

イノリ

盗撮写真の数々、ロリコン仲間とのやり取り…

ソウジロウ

あ、あいつに嵌められたんだ！

ソウジロウ

俺はただ、アヤノやミサオちゃんの成長を記録したくて…

イノリ

じゃあなんで下着を重点的に映してるのよ！

ソウジロウ

それは…

イノリ

懐いてくれたアヤノの信頼を裏切って…さっさと捕まれ犯罪者！

ソウジロウ

本当に違う！魔が刺しただけなんだよ！

ソウジロウ

ネットの仲間達にそそのかされて、軽い気持ちで…

ソウジロウ

ミサオちゃんに釣られたのだって、ネットの仲間達にミサオちゃんの方が

ソウジロウ

受けが良かったからなんだ！俺は乗せられただけだ！許してくれ！

イノリ

呆れた…今度は人のせいにして責任逃れしようっていうのね

イノリ

乗せられてあんなことするような奴、なおのことごめんだわ！

ソウジロウ

待ってくれ！アヤノ目当てだったから怒ってんのか？

ソウジロウ

アヤノに嫉妬するなよ！

イノリ

は？

ソウジロウ

俺が本当は幼いアヤノ目当てだったからって、嫉妬してるんだろ？

ソウジロウ

大丈夫だって。俺が本当に愛してるのはイノリ、お前だけだから！

イノリ

そういう問題じゃないっていうのがわからないの！？

イノリ

ミサオちゃん目当てでツカサに乗り換えようとした時点で信用できない言葉だけど、

イノリ

娘を守りたい気持ちがわからずに『嫉妬』で片づけるようなあんたに、

イノリ

父親になってもらわなくて本当によかった…

ソウジロウ

なんだよ！お前みたいなコブ付きのババア、

ソウジロウ

俺みたいなの以外に貰い手なんかないんだからな！

イノリ

それなら、再婚なんかしなくていい！

イノリ

あんたみたいな男と結婚するくらいなら、アヤノが自立するまで再婚なんかせずに

イノリ

アヤノと二人で生きていく。アヤノを守っていく！

ソウジロウ

わかった。結婚はしない。だから、警察だけはやめてくれ！

ソウジロウ

俺達、愛し合ってた仲だろ！？

ソウジロウ

今後はお前らにもミサオちゃんにも関わらないから、それでいいよな！？

イノリ

それで、他の子を今度は餌食にするっていうの？

ソウジロウ

それは…

イノリ

そんなの、このまま見過ごせないわ

ソウジロウ

ひっ！け、警察が倉庫を開けて…嫌だ、助けてくれ！！

イノリ

せいぜい刑務所で更生することね

～数時間後～

イノリ

ツカサ、ありがとう。あんたには感謝してもしきれないわ。本当にごめんね…

ツカサ

もういいって

イノリ

あの後、アヤノにも話を聞いたんだ

イノリ

そしたら『ソウジロウさんに変なことをされかけることはあったけど、

イノリ

ママが幸せそうに笑ってるし、私がソウジロウさんと仲良くしてたら喜ぶから言えなかった』って…

イノリ

私、何も気づかなくて、本当にバカな母親だった

イノリ

これからは、全力で娘を守っていくわ

～後日談～

ツカサ

その後、ソウジロウさんは取り調べて余罪がポロポロ発覚し、

ツカサ

裁判で有罪判決を下され、塀の向こうへと行きました

ツカサ

刑務所では、他の囚人達のストレス解消のサンドバッグとして役に立っているそうです

ツカサ

私の名誉は、姉や主人が招待客達に説明して回復させてくれていました

ツカサ

その分、ソウジロウさんの所業も広まったことでしょう

ツカサ

全てが終わった後、姉とアヤノちゃんは亡くなった義兄のお墓参りに行き、

ツカサ

姉は『これからも遠くから私達を見守っていてください』

ツカサ

と手を合わせたそうです

ツカサ

私も、二人の幸せを祈らずにはいられません

ツカサ

そしてミサオがこれから、二度とあんな奴に出会わずに、健やかに育つようにとも祈っています

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タナカトシキ

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