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夜月
夜月
夜月
夜月
夜月
夜月
一瞬だった
煙と風の中から男が跳躍し、私の顔を掴んで地面に押さえ付けた
私が放った渾身の技は
時間稼ぎにもなっていなかったのだ
力と体重によって、押し付けられた頭が軋む
男の指の間から、振り上げられた拳がみえる
回避法、もしくは生存法について思索中…
次の瞬間
頭蓋骨を割るような衝撃が、流星のように首から上を襲撃した
声にもならない激痛
それは数日──いや、数年続けられたかも知れない
酷く長い圧倒的な暴力は突如止められた
彼女は社畜だった
上司からの暴言、部下からの擦り付け、終わらない課題と仕事
そして───意味の分からない勘違いからの死
だから、だからこそ、彼女は"理不尽"が許せなかった
ユニークスキル〚自由人(しばられぬもの)〛の発動を推奨します
莫大な魔素が彼女の核の部分から爆発
男の半身に大きな穴を開けた
男が体制を崩した瞬間、トドメとして〚狙撃者〛を発動
そのまま全速力で逃げた
去り際、ちぎれた腕の断面を押さえながら
後ろの男へ、叫んだ 中指を立てて
彼は彼女を追いかけもせず、その場に留まっていた
彼女が開けたであろう穴はもう塞がっている
彼は思う 他者へ驚愕したのは何千年ぶりだろうと
彼は考える 彼女が何故あの瀕死の状態で、あれ程の魔素を噴出出来たのだろうと
彼は思い出す 何故彼女はあんなに、恐怖を抱いた相手に、愉しそうな顔で笑ったのだろう
何故あんなに、輝かしい魂の光を見せるのだろう
彼女の気配はもう無い
紅い、朱い月がただ照らしていた