継国緑壱
そう言ってまた女の子は
継国緑壱
動かなくなった
継国緑壱
しかし日が暮れ始めると
継国緑壱
女の子は桶の生き物を田んぼに
継国緑壱
逃がした
継国緑壱
連れて帰らないのか?
女の子
うん、、、
女の子
親兄弟と引き離される
女の子
この子たちが可哀想じゃ
継国緑壱
じゃ俺が一緒に家へ帰ろう
女の子
えっ
継国緑壱
黒曜石のような瞳の
継国緑壱
その女の子は“うた”という名前だった
継国緑壱
私と“うた”は一緒に暮らすことにした
継国緑壱
“うた”は朝から晩までよく喋る
継国緑壱
女の子だった
継国緑壱
私は“うた”のお陰で他人と自分の
継国緑壱
世界の視え方が違うことを知った
継国緑壱
生き物の体が透けてみえる者など
継国緑壱
聞いたこともないそうだ
継国緑壱
私はその時初めて漠然とした
継国緑壱
疎外感の理由がわかった気がした
継国緑壱
“うた”は糸の切れた凧のようだった
継国緑壱
私の手を
継国緑壱
しっかりと繋いでくれた人だった
継国緑壱
10年後私たちは夫婦になった
継国緑壱
“うた”の臨月が近づき
継国緑壱
出産に備えて私は産婆を
継国緑壱
呼びに出かけた
継国緑壱
日が暮れる前に帰るつもりだった
継国緑壱
途中で山三つ向こうへ行こうとする
継国緑壱
老人に出会った
継国緑壱
自らも心臓が悪いというのに
継国緑壱
戦で負傷し死にかけている
継国緑壱
我が子の元へ急いでいた
継国緑壱
老人を息子の元まで送り届け
継国緑壱
産婆を呼ぶのは明日にして
継国緑壱
家路を急いだが
継国緑壱
日が暮れてしまい
継国緑壱
“うた”は
継国緑壱
腹の子諸共殺されていた
継国緑壱
自分が命より
継国緑壱
大切に思っているものでも
継国緑壱
他人は
継国緑壱
容易く踏みつけにできるのだ
継国緑壱
私は10日程ぼんやりして
継国緑壱
妻と子供の亡骸を抱いていた
継国緑壱
鬼の即席を追ってきた剣士に
継国緑壱
弔ってやらねば可哀想だと
継国緑壱
言われるまで