また君が俺の手を握ってくれるのなら。(🍍☔️)

空のような髪色

小さな手

元気で可愛らしい声

“雨乃こさめ”が行方不明になってから、10年が経った

“送り犬(オクリイヌ)”は夜行性だから、昼間はあまりやる気が出ない

…いや。それは俺だけかもしれない

こさめがいた時は、このくらいの時間でも走り回れるくらいの元気があった

ﾊﾞﾀﾝｯｯ!!!

余計辛くなる

だから俺は、あーいう活発な女が苦手

ﾋﾀﾋﾀﾋﾀｯ‼︎

ｽﾞﾙｯ!!!

掴んだのは、こさめじゃなかった

その時こさめが着てた、杏色の上着だった

時期は冬。このあやかしの村は、雪が降らない代わりに地面が凍る

だから、足を滑らせてしまった

その時、自分で言った言葉が、現実を叩きつけた

あまりのショックで俺は気を失い、もうそこからの記憶はない

ただひたすら、こさめを探し続けた

次の日、レスキュー隊などが崖の下を探してみたけれど、どこにもいなかったらしい

雨乃家とも、だんだん喋れなくなった

俺が、もう少し早くこさめを助けてれば、こんなことにはならなかった。だからか、良好だった雨乃家とも壁ができてしまった

雨乃こさめ

俺に笑顔を与えてくれた、同じ送り犬の女の子

俺の初恋

10年経った今でも、これは変わらない

いつか必ず、好きだと伝える

そう決めていたのに、

こさめが隣にいる明日がない。存在しない

…なんで、後回しにしてたんだよ､､､俺は…

『あ！それ！！』

『ねーねーっ！』

今、目の前にいるのが、雨乃こさめ

10年間探し続けてきた、俺の…

初恋相手

そうだ

空のような髪色

小さな手

元気で可愛らしい声

これは紛れもなく、こさめだ

恐れるものはない

たとえ、こさめが変わっていようが

もう一度、その小さな暖かい手で、俺の手を握ってくれるなら

「おかえり」

“送り犬だった”俺の、初恋相手

続く