テラーノベル
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雨の音はさらに激しくなって、世界には俺とうりしかいないみたいだ
俺の服を掴むうりの手に、さらに力がこもる
ゆあんくん
ゆあんくん
自分の不甲斐なさに泣きたくなりながら、俺はただ立ち尽くしていた
でも、その時
ドクン
雨音を突き破って、耳の奥で自分の心臓が大きく跳ねる
うりの震えを受け止めている、俺自身の感情が激しく揺さぶられる音
最初は、雷の余韻だと思った
…でも違う
これは、隣にいるこいつの存在を、その弱さを
逃げ場のないほど近くで感じている俺自身の鼓動だ
うり
ゆあんくん
こいつのことを「神様」みたいに思ってた
画面の向こう側で輝く、触れてはいけない、ただ崇めるべき存在
ファンとして適切な距離を保って、安全な場所から幸せを願っていればいい……
それが、一番あいつを傷つけない「正解」だと自分に言い聞かせてきた
でも、今はどうだ?
目の前で蹲り、俺に縋りついているのは、あの最強で無敵のような配信者なんかじゃない
雷に怯え、呼吸を乱し、俺の裾を真っ白になるまで握りしめている
……ただの、一人の人間だ
ゆあんくん
すとん、と
俺の中にあった重い何かが、ようやく腑に落ちた
俺が今、こいつをどうにかしてやりたいと思っているのは
「推しを守りたい」なんて綺麗で純粋な理由じゃない
「助けたい」んじゃない
「ずっと、隣にいたい」んだ
この震えを止められるのが、俺であってほしい
苦しい時に真っ先に名前を呼んでもらえるのが、俺であってほしい
「ファン」なんて言葉の裏に隠れて、見守るフリをするのは、もう限界だ
ゆあんくん
認めた瞬間、モノクロだった世界に色がつくみたいに、視覚が鮮明になる
大切で、愛おしくて、誰よりも近くにいたい
「推し」への憧れなんて枠じゃもう収まりきらない
どうしようもないくらい真っ直ぐな、恋だ
俺は一度コンビニの中に戻り、並んでいた一番大きな傘を一本掴んで、会計を済ませた
ゆあんくん
ゆあんくん
あいつを驚かせないように、そっと、壊れ物に触れるような手つきでその手を取る
雨を弾く傘の持ち手の冷たさと、その奥にある、うりの手のひらの熱
溢れ出しそうな恋心を心の奥に押し殺して、努めていつもの、優しい声で
うり
繋いだ指先から、うりの震えが直接心臓に響く
俺は傘を開き、自分の方を少し濡らしながら、うりを雨から隠すように包み込んだ
「推し」だからじゃない
ただ一人の人間として、俺はこの雨の中からこいつを連れ出したい
ゆあんくん
ゆあんくん
俺は、一歩前を歩き出した
繋いだ手は離さない。けれど、決して無理には引かないように
あいつが濡れないように傘を傾けながら、ゆっくりと一歩ずつ この手の先に、どんな答えが待っていようと
俺はもう、自分の気持ちから逃げないと決めた
コメント
2件
コメント失礼します!! この物語?めっちゃ良かったです!! 一気読みしました!! 尊かったです!!! また、続き書いてください!!楽しみにしてます! あと、フォローさせて頂きます! さっきのコメントは誤字したので消しました