テラーノベル
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二人で並んで歩く、早朝の高専。 まだ太陽が昇りきっていないグラウンドには、うっすらと白い霧が立ち込めていた。 真希:「……ふわぁ。……誰だよ、朝練なんて言い出したのは」 真希はわざとらしく大きなあくびをして、乙骨から一歩分、距離を置いた。 隣を歩く憂太の肩が時折触れそうになるたび、さっきまでの「僕だけど」という声が頭の中でリピート再生されて、心臓がうるさくて仕方ない。 憂太:「あはは。昨日のチャットで、僕が『明日、朝練で起こしに行くね』って言ったら、真希さん『寝坊すんじゃねぇぞ』**って返してくれたじゃん」 憂太が、真希の顔を覗き込むようにして笑う。 その顔が近すぎて、真希は思わず視線を逸らした。 真希:「……っ、あれは……っ、お前が来たいって言うからだろ!」 真希は逃げるようにグラウンドの真ん中まで歩き、手慣れた動作で木刀を構える。 まだ誰もいない静かな空間に、シュッ、シュッ、と鋭い素振りの音だけが響いた。 憂太:「……やっぱり、真希さんは格好いいな」 少し離れたところで、憂太ががぼそっと呟いた。 その声は霧に溶けて消えそうだったけど、静かなグラウンドでは嫌でも真希の耳に届いてしまう。 真希:「……っ、集中しろっつってんだろ! ほら、さっさと構えろ!」 照れ隠しに声を荒らげた真希だったが、憂太は刀を構える代わりに、ゆっくりと真希に歩み寄ってきた。 憂太:「……真希さん、ちょっと待って」 真希:「あ? なんだよ、攻撃してこねぇのか?」 憂太:「……ここ」 憂太の手が、真希の耳元に伸びる。 冷たいはずの朝の空気の中で、彼の指先の熱だけが、真希の肌に鮮明に伝わった。 憂太:「……髪、一箇所はねてるよ。寝癖かな。……ふふっ、可愛い…」 憂太が、真希の髪をそっと指先で整える。 至近距離で合う、彼の優しくて、どこか楽しそうな瞳。 真希の鼻先を、憂太の甘い香りがかすめた。 真希:「(……っ! こいつ、絶対わざとやってる……!!)」 真希の顔は、朝焼けよりも赤く染まっていた。 突き飛ばそうとしたその時、霧の向こうから「おーい、二人とも早いな!」とパンダの声が聞こえてきて……。 (つづく)