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カチカチカチ
僕は虚空をペンライトで照らす。
ペンライトの光は
一瞬ガラスに反射して
闇に消える。
カチカチカチ
それでも僕は
ペンライトを押し続ける。
誰かがきっと
この、閉塞した空間から助け出してくれる。
それだけを信じて。
僕は闇の中から呼びかける。
ー・ー・/ーー・ー
ガラスの向こうが
うっすらと白み始めた。
夜が終わったことを確認して、僕は目を閉じる。
叫ぶノドは潰れてしまった。
ここは地獄だ。
弱い者から
深い眠りに堕ちてゆく。
息苦しいほどに狭い空間で
僕の右手を握る
老婆の枯れ木のような手だけが、暖かい。
僕は目を閉じる。
再び夜が訪れるまで。
ー・ー/ー・
耳が聞こえないのは幸いだろうか。
僕は老婆の手を握ったまま
ペンライトを窓の外へ向ける。
ー・ー・/ーー・ー
カチカチカチ
・・・/ーーー/・・・
ペンライトがガラス窓に反射する一瞬
地獄絵図が浮かぶ。
耳が聞こえないのは
きっと幸いなのだろう。
苦悶に満ちた人々の表情が、割れたガラスに映るたびに
そう思う。
ー・ー・/ーー・ー
誰かいますか
・・・/ーーー/・・・
助けてください
ー・ー・/ーー・ー
誰かいますか
・・・/ーーー/・・・
助けてください
僕は夜通しペンライトで合図を送る。
音の聞こえない闇の中で
老婆の手の暖かさだけが現実だ。
・・・/ーーー/・・・
叫ぶ声の代わりに
僕は虚空を照らし続ける。
ー・ー/ー・
隊員
隊長
隊員
隊長
隊長
隊員
隊長
隊長
隊員
隊員
隊長
隊員
隊長
隊長
隊長
隊員
隊員
隊長
隊長
隊員
隊員
・・・/ーーー/・・・
隊長
・・・/ーーー/・・・
隊員
・ーー・/・・・/・ 〈お願いします〉
・・・/ーーー/・・・ 〈助けてください〉
・ーー・/・・・/・ 〈お願いします〉
隊員
隊長
隊員
ー・・・/ー・・ 〈よくない〉
ーー・ー/ー/ーー・・/・・ーー・・ 〈捜索を続けていますか?〉
隊員
・・・・/・ー・ 〈ここにいます〉
・ーー・/・・・/・ 〈お願い〉
・・・/ーーー/・・・ 〈助けて〉
隊員
隊員
ーー/・ー/ー・/ー・ーー 〈MANY〉
・・・/ー・ー〈死んだ〉
隊員
隊員
隊員
・・・・/・ー・〈ここ〉
ーーー/・ーー〈老婆〉
ー・・/ー・〈下へ〉
ーー・/ー・・・ 〈GOOD BYE〉
ーー・/ー・・・ 〈神の祝福を〉
・・・/・・/・ー・・/・/ー・/ー 〈SILENT〉
ー・・/ー・〈下へ〉
ー・ー/ー・
夜が明ける。
ペンライトの弱い光では
もう助けを呼ぶこともできない。
老婆の手が
強く僕の手を握った。
眠りなさい。
音のない耳では
老婆の声を聞くことはできない。
それでも
眠りなさいと
そう言われた気がした。
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
リポーター
ー・ー/ー・
了