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どぞ

初兎

わ…ここが乾学園…!

父さんも母さんも龍も、心配するのは無理もないんかもしれん。

自分が親でも、娘を通わせるのを躊躇してしまう。

でも、うちは"普通の女の子"やないから大丈夫や。

えっと、事前に先生からは正門前で待っていればええって言われたけど…。

いるま

おい

背後から声をかけられた気がして、反射的に振り返る。

うちの視界に映ったのは、同じ紫の瞳をした、随分と綺麗な顔をした男の人。

ただ者ではないと、うちの本能が感じた。

彼の全身から漂うオーラは、知性、品性、そしてうっすらと滲み出る脅威。

この人、きっと強い。

にしても…雑誌に出てくるモデルさんみたいに整った容姿をしとる…。

美しくどこかミステリアスなその容姿に、一瞬魅入ってしまう。

いるま

お前か、こんな時期に編入してくる女子生徒は

初兎

は、はい…!

編入生というのは間違いなく、うちのことだと思う。

でも、『こんな時期に』と言う言葉が引っかかった。

ちょうど後期の始まるキリのいい時期やと思うんやけど…

不思議に思い、ジッと彼を見つめていると、目の前の人は不敵に口角の端を上げ、うっすらと笑みを浮かべた。

いるま

まったく…どんな頭で編入試験を通ったかと思ったのかと思えば、どこからどうみてもガリ勉だな

…うっ、否定できん…。

今の自分の姿はもう嫌と言うほど見たから、的確な表現で突いてきた彼に反論しようにもできんかった。

ボサボサ頭にビン底メガネやもん…仕方ない仕方ない。

でも、ガリ勉って失礼やなっ。

いるま

裏口編入かと思ったが、その見た目なら納得だな

…え?裏口…?

いるま

ついて来い

いるま

理事長室まで案内する

先ほどの言葉がどうしても気になって、うちは後ろから声を投げかけた。

初兎

あ、あの…さっきの、どう言う意味ですか…?

いるま

何が?

初兎

裏口編入、とか…

彼の言い方は、うちの容姿を見るまでは裏口入学を使ったと思っていた、とでも言うかのような言い方やった。

まるで編入は不可能かのような言い方が、引っかかる。

いるま

…知らないのか?

知らないのかって…何がだろう?

表情で知らんと伝えると、再び前を向き歩みを止めずに話し始めた彼。

いるま

乾学園が、幼稚舎から一貫校なのは知っているな?

初兎

は、はい…

いるま

初等部や中等部への編入試験は、それなりの学力があれば合格可能だ

それなりの学力…。

確かに乾学園は暴走族の巣窟と言われながらも、国内トップクラスの進学校だ。

当たり前に、高い学力を求められる。

それは知っとるけど…。

いるま

…が、高等部への編入はあり得ない

いるま

いや、あり得なかった

いるま

今までは

初兎

どうしてですか?

いるま

高等部への編入試験は、難関大学の入試レベルだ

いるま

しかも、その試験で満点を取らなければ合格は下されない

初兎

…え?

いるま

つまり、そんな学力の者は存在しないに等しいから、学園創設以来不可能とされていた

初兎

そ、そうなんですか…

そんなに難易度高かったんや…、ここの編入試験。

全ての謎が解決し、納得したように首を二度縦に振る。

すると、彼が再び振り返り私を見た。

物珍しいものを見るような目で。

いるま

なんで驚く?

いるま

お前は合格したんだぞ?

初兎

あ…そんなに難しい試験やったんやなって…

…あ、あれ?

うち、今失礼なこと言っちゃったかな…っ。

弁明しようと頭の中で言い訳を考えとると、彼が突然吹き出した。

いるま

…はっ、お前面白いな

初兎

へ?

お、怒って、ない…?

いるま

あの試験、俺も試しに受けさせてもらったんだが散々な結果だったよ

いるま

あの難題に引っかからないなんて、相当頭がキレるんだろうな

いるま

素直に尊敬する

いるま

あんな試験を通る奴がいるとは到底思えないが、何よりもその見た目が証明だ

いるま

見るからに今まで勉強しかしてきませんでしたって容姿だからな、真っ当に試験を受けて通ったんだろう

いるま

認める

…ん?

今さらっと貶されたような…。

けど今の見た目が真面目にしか見えへんのは事実だから、気にせず流そう。

いるま

俺はこの高等部の3年、紫苑いるまだ

いるま

生徒会副会長もしてる

いるま

なにか困ったことがあれば、いつでも俺に頼ればいい

…って、副会長さん⁉︎

このマンモス校の生徒会役員ってことは…やっぱり、すごい人物らしい。

初兎

ありがとうございます

初兎

うちは有栖初兎です!

いるま

俺のことはいるまでいい

初兎

さ、流石に先輩に呼び捨ては…いるま先輩って呼んでもいいですか?

いるま

ああ、構わない

よかった…思ったより優しそうな人だ…。

昔から、父さんに初対面には疑心暗鬼なくらいで接するようにきつく言われていた。

だからそれなりに力のある人物は、直感でわかる。

彼もうちのそれに反応があったから怖い人やったらどうしようと思ったけれど…どうやら、常識のあるいい人そう。

初兎

うちのことは初兎って呼んでください

初兎

これからよろしくお願いします!

次の瞬間、なぜか顔を赤らめるいるま先輩。

…あれ?どうしたんかな?

不思議に思いそのままじーっと見つめると、そんなうちに気づいてか、急に顔を背けた。

いるま

…っ、あ、ああ

いるま

よろしくな

どうしたんやろう…?

いるま

…まさか、な…

いるま

これが"あいつ"に似てるなんて、どうかしてる

チラッと覗き込むように顔を見れば、やっぱり赤く染まった頰。

…いるま先輩、風邪気味なんかな…?

それにしても…。

モブ1

見て…!いるま様がいる…!

モブ2

きゃー!ほんとだっ…!

女の子達からの視線がすごい…。

視線を集めているのは、もちろんうちではなく隣にいるいるま先輩。

みんな目をハートにして、先輩の方を見ていた。

モブ1

いるま先輩もだけど、生徒会メンバーってほんと素敵だよね〜

モブ2

ほんとほんと!

モブ2

私は橙多様がかっこいいと思う!

モブ3

分かる〜!

モブ3

寡黙でかっこいいよね!

モブ3

でも、可愛さじゃ如月くんが1番じゃない?

知らない名前がちらほら聞こえるけど、どうやら女の子達は生徒会の話をしているらしい。

生徒会って、人気なんやなぁ…。

モブ1

みんな素敵だよね!

モブ2

でもやっぱり1番は…

モブ三人衆

ないこ様でしょ〜!

よく分からないけど、ないこっていう名前の人が1番人気なのかな…。、

と言うか、いるま先輩はこんなに視線を集められとるのに気にならないのかなっ…堂々としてらっしゃる…。

女の子達は相変わらず、楽しそうに話していた。

モブ3

主席で運動もできてその上生徒会長なんて、ハイスペックすぎるよね…!

モブ1

あー、女嫌いじゃなかったらお近づきになりたかった…

モブ2

一度でいいからないこ様と話してみたいなぁ…

そんなに人気な人がおるんや…

モブ3

…て言うか、いるま様の隣にいる地味なやつ誰?

こ、これ…うちのことやんねっ…。

モブ1

さー?

モブ1

なんか案内してるみたいだし、生徒会の仕事中かなんかじゃない?

モブ2

いるま様が汚れるから近づかないでほしい〜

くすくすと笑い声が聞こえて、恥ずかしさといるま先輩への申し訳なさで視線を下げる。

うちみたいなちんちくりんが隣を歩いてすみません…!

そう心の中で謝罪した時、いるま先輩が口を開いた。

いるま

気にするな

いるま

品の無い女子生徒もいるが、なんとでも言わせておけ

あれ…?聞こえとったんや…。

初兎

は、はい

初兎

ありがとうございます

ある部屋の前で、いるま先輩は足を止めた。

いるま

ついたぞ、初兎

いるま

ここが理事長室だ

初兎

ありがとうございました

ここでいるま先輩とはバイバイかと思ったけれど、どうやら先輩も理事長室に入るようで、うちの先を進んでくれる。

三度ドアをノックし、いるま先輩はドアノブに手をかけた。

いるま

失礼します

いるま

編入生を連れてきました

中から、返答はない

しかし、先輩はロックをいとも簡単に開け、私に入るように促した。

初兎

失礼します

晴翔

初めまして、有栖初兎さん

晴翔

理事長の乾晴翔です

初兎

初めまして

晴翔

よく来てくれたね

晴翔

キミのような優秀な人材が我が校に来てくれて嬉しいよ

晴翔

教師一同皆、歓迎している

初兎

そんなふうに言っていていただけて嬉しい限りです

初兎

ありがとうございます

晴翔

どうぞ座ってくれ

晴翔

キミには少しだけ、今日これからの学園生活について話をさせてもらおうと思ってね

初兎

失礼します

私の隣にいるま先輩も腰を下ろす。

晴翔

我が校については知っていると思うが、国内でもトップクラスの学力を誇っている。

晴翔

その他、部活動や野外活動にも力を入れているから、全てのおいて、他の高校では経験できないようなレベルで勝負できるだろう

晴翔

…と表の説明はこんな感じだ

晴翔

裏のことは…そこにいる副会長にでも聞いてくれたまえ

…裏?

晴翔

なあに、少し乱暴な生徒もいるが、校内での暴力事件は即効退学だ

晴翔

ここで問題を起こす者はいないから安心してくれ

晴翔

それと…1つ、キミに謝らないといけないことがある

総長さま、溺愛中につき。

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コメント

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ウタイテ書いてぇ

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