1年後
俺は去年、絢から貰った赤い箱を机に置いた状態で
椅子の上に正座していた。
平 哉翔
無事受験も終わり受かった哉翔は自由の身である。
平 哉翔
リボンを解き、ゆっくりと慎重に箱を開けていく。
平 哉翔
机に中身をばらまけてみると何枚かの写真があった。
修学旅行のものや、文化祭の時のもの。生物で植物の観察に出た時のもある。
平 哉翔
よく箱を見てみると、どうももう一段あるようだ。赤い色紙で分からなかった。
みてみると、
平 哉翔
とりあえず、パソコンに繋いでみる
『え、えーっと、き、聞こえますかー?』
平 哉翔
1年前に録音したのだろうか。残念ながら画面は真っ暗だ。
『えっと、1年後の哉翔君ですか?1年前の紡希絢です。』
平 哉翔
なんだかこちらまで緊張してしまう。
『えっと、この音声を聞いているということはきっと大学受験が終わり、合格発表も終えた頃だと思います。』
不意に、もう少し前に見てたらどんな気持ちだっただろうと考える。
『つきましては、1年前の私から1年後の哉翔君へ伝言?があります。』
『3月11日。○○県✕✕市△△町の、1500-3番地。午後1時より待っています。』
プツンと切れる。
俺は慌てて今日の日付と時計を見る。
平 哉翔
ここから指定の場所までは恐らく1時間は余裕でかかってくる。
平 哉翔
俺は大急ぎでポケットに財布と携帯。それから、貰った写真とUSBを突っ込んで駅に向かった。
紡希 絢
もしも音声を聞いていなかったらどうしよう。
もしも聞いていて、忘れてしまっていたらどうしよう。
そんなネガティブなことを考えていると少し胃が痛くなってきた。
紡希 絢
勢いでまた会おうとUSBに録音してしまった。
この1年間。ほんとに会っていいのか分からなくて、考えて考えて。
やっぱり行こうと決めた。渡してしまったものを取り消すことなんてできないししたくない。
紡希 絢
あと6分で指定の時間。はなから夜までは待つつもりなのだが、少しドキドキする。
すると、すごい速さの足音が聞こえてくる。
紡希 絢
見間違えない。
見間違えるはずない。
1年経っても変わらない。
私の好きな人。
平 哉翔
紡希 絢
いきなり目の前で止ったかと思いきやむせ始める哉翔君。
紡希 絢
もうよくわかんなくなって大パニックになる。
平 哉翔
平 哉翔
紡希 絢
紡希 絢
びっくりした
去年とは全く声が違うのだ。
元々少し高かったように聞こえたのだが今はすごく低く聞こえる。
きっと1年で声変わりしたんだろう。
平 哉翔
紡希 絢
確かにコンタクトには変えた。
メガネだと視力がダダ下がりでちょっとやばいなと思ったので夏からコンタクト。
そうするとみるみる視力は回復して行ったのであった。
紡希 絢
平 哉翔
モソモソと言われても聞こえないものは聞こえない。私は聞き返す。
紡希 絢
平 哉翔
哉翔君が顔を覆いながら叫ぶ。
少し背が伸びたかな。
見上げながら思う。
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
そう、ここはあの場所。
私たちが出会った場所。
紡希 絢
平 哉翔
何故か海に来た。何故かは分からない。けれど潮風が気持ちいい。
紡希 絢
平 哉翔
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
哉翔君が不敵な笑みを浮かべる。
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
そこで一旦会話が途切れる。
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
また途切れてしまう。
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
実は世界史が得意教科なのである。
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
紡希 絢
平 哉翔
1年越しなのに変わらない会話
変わらない気持ち
紡希 絢
潮風が目に染みたせいだろうか
コンタクトがズレたせいだろうか
無性に泣きたくなる。
平 哉翔
きっと、周りからは驚いた目で見られているだろうな。
さっきまで鳴いていた犬も鳴きやんでいた。
紡希 絢
さっきまで重なっていたものがふっと消えてしまう。
私は少し名残惜しいような気持ちで哉翔君の顔を見る。
平 哉翔
哉翔君は嬉しいような泣きたいようなそんな顔をしていて、
平 哉翔
哉翔君は私を抱きしめた。
初恋は実らないとかよく言われる。
女子生徒
紡希 絢
今日も可愛い教え子たちと話す。
女子生徒
紡希 絢
女子生徒
紡希 絢
女子生徒
クラス中から完成が上がる。
ナイスー!だとか、どうなんですかー!だとか。
紡希 絢
紡希 絢
女子生徒
紡希 絢
紡希 絢
女子生徒
紡希 絢
女子生徒
紡希 絢
少女漫画のような私の青春
けれどそれは少女漫画じゃなくて私の青春。
正反対な私と哉翔君。
『やっと、捕まえた』
捕まってしまったあの日。
少し懐かしいな。
紡希 絢
哉翔君は今頃何してるかな。
空を見上げて私は思う。
私の彼氏の事を。
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