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夜の雫

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夜の雫

3 - 落し物の傷

♥

626

2025年08月06日

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昼の鐘が鳴り終わる頃

○○は中庭のいつものベンチにいた

淡い陽が差す中

バックから取りだしたのは

スマホだった

○○

やっぱり...可愛い

何度観ても可愛い

そんなことを考えながら

○○は前髪を整えた

そこ

空いてる?

不意に声がして顔を上げると

見慣れない制服の女の子がたっていた

綺麗な髪に完璧なメイク

細身だけど背は高い

...この前どこかで

空いてない?

○○

あ、ううん

○○

空いてます

彼女は微かに会釈をしてから

ストンと隣に腰を下ろした

誰かを待ってる様子もない

1人だった

こっち風通し良くていいね

中の教室

ちょっと暑苦しくてね

その声に○○は笑った

○○

そうかも

○○

うちの学校静かだからね

まぁ...お嬢様学校だし

あ、そうだ

自己紹介まだだったね

○○

え、あー...

芽依

伊達工の芽依

芽依

よろしくね

○○

ううん

○○

大丈夫

○○

私は聖月の○○です

芽依

○○ちゃんかー...

芽依

なんか

芽依

周りと違うね

○○

よく言われるかも

それっきり私たちはそれぞれのランチに目を戻す

でもその静けさは

悪くなかった

スマホを出すと

芽依

○○

ん?

芽依

やっぱり○○ちゃん

芽依

昨日廊下で見た子か

○○

え?

昨日の廊下...?

○○

○○

そうかも

○○

男の子といた?

芽依

そうそう!

芽依

あーやっぱり○○ちゃんか

芽依

可愛くて印象残ってた

○○

えー...嘘だ

芽依

ほんとだってば

芽依は笑いながらパンの袋を開けた

○○も春の風を感じながら

そっと目を閉じた

ざらついた午後の日差しが

酷く暑かった

伊達工の仮教室

聖月の一角を借りたばかりのこの空間は

まだ違和感があった

二口

あっつ...

二口はシャツをだらしなく出し

雑に仰いでいた

二口

吉宮さーん

二口

エアコン下げてー

今16度だから

これ以上下がらないですー

二口

はー...まじか

二口は椅子を少し斜めにして

そのままスマホをいじっていた

興味もないのに開いたSNSの通知を無視し

ひとつため息をついた

芽依

よっすー

二口

ん...芽依かよ

二口

どこ行ってた、昼

芽依が教室に戻ってきて

二口の前の席に座った

パッと見は暑さにやられていたが

口元のどこかが緩かった

芽依

中庭

二口

中庭?

芽依

うん

芽依

静かに食べたかった

芽依

ここうるさいし暑い

二口

らしくねぇな

芽依

そっちこそ

芽依

空き教室で寝てるかと

二口

なんか空き教室

二口

エアコンつかなかった

芽依

下調べ済みってわけね

芽依は水筒の蓋を開けながら

ぼそっと続けた

芽依

あー、なんかね

芽依

面白い子いた

二口

面白い子?

二口は顔を向けずに鼻で笑った

芽依

うん

芽依

聖月の子なんだけど

芽依

ちょっと変わってて

二口

へー...

二口

珍しいな

芽依

そう?

芽依

まぁ...話しやすい子だった

放課後

〇〇は昇降口で足を止めた

○○

あ、そうだ

お母さんにLINEしないと...

そう思いブレザーポケットに手を入れると

○○

あれ

○○

ない...

ポケットの中にスマホはなかった

急いで教室まで引き返した

心臓が少し早く鳴っている

あずさちゃんのスマホケース

やっと手に入れたのに...

廊下を曲がった先

教室の前で誰かがスマホを手にして待っていた

伊達工の制服だった

手に持たれているのは○○のスマホ

○○

あ...

○○

それ

思わず声が出ると

彼はこっちを見てからスマホを出した

お前の?

これ

冷たい目が私を見た

○○

そうです

○○

ありがとうございます

○○が両手で受け取ろうとした瞬間

彼の視線がケースに止まった

そのスマホケース

ダサいから外せよ

言葉は思ったよりも低く

刺さるようにまっすぐだった

○○

...は?

思わず返した一言に

彼は何も答えず背中を向けた

去っていく背中だけが残る

○○は唇をキュッと結び

スマホを握りしめた

...なんなの

あの人

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