太宰 治の記録。

太宰 治には記録がない。

彼の記録三年前、 "一匹狼" に入った頃から始まる。

彼は乱雑に、持っていた資料を 机に置いた。

やはり見つからない。

彼自身にだって分からない。

記憶すら存在しない。

まるで彼の人生が3年前 突然始まったかのように 12年間の記録は 何処にもない。

かといって別にその空白の12年間が 知りたいわけでもない。

むしろ興味すらない。

彼は何にも興味がない。

金·酒·他人·仲間や自分自身にすら 何の興味もわかない。

なのに彼は今日も 呼吸するかのように 何かを探している。

ｶﾁｬﾘ。と音をたてて銃口が 後頭部に当てられる。

刺客か。 いや違う。

ﾌｯ。と微笑し、胸元のポケットに 手をいれる。

静かな殺意の籠った声。 一般人なら心臓発作を起こして 死に至るだろう。

だが彼は表情すら変えず 涼しく笑っている。

大地までもが悲鳴をあげそうな 笑顔で微笑む。

ち、ﾌﾟｰｯと口をふくらます少女。

幽鬼 かなめ 水灰色の長髪をもつ"一匹狼"の死神

ポートマフィア

中原 中也だよ。

"殺し"だけだ。

席を立ち太宰は闇の中へと 消えていった

闇に消えていくせなかに 彼女は微笑んだ。