旅人
旅人は疲れ果てていた
雪山で迷って何日も彷徨っていたのだ
旅人
重い足を無理やり動かして、前へと進む
旅人
ふわりと、春の風がどこからか香った
ある雪山には、伝承があった
「雪山の春」
英語では「flower snow」と呼ばれる話だ
雪山で迷っても、暖かい春の風や花の匂いや色をした雪の方へ行ってはいけない
そこはもう、人の世界ではない
人を超えた何かの潜む世界なのだから
旅人
春のような暖かい空気に、花畑のような甘い香り
花のような色をした雪
普通に考えてみれば異様な光景だが、
寒さでまともな思考が働かない旅人には、凄く幻想的に思えた
旅人
最早焦点の定まらない眼で目の前の幻想へと旅人は石のように固くなった足を進める
旅人の進んだ後には、色とりどりの花が咲いていた
旅人
花のような雪の道を進むと、開けた所に出た
旅人
思わず感嘆の声をあげるほど、そこは美しかった
凍りついた道は春の陽気を受けて虹色に輝き、
赤やピンク、紫などの美しい花が咲いている
旅人
???
旅人
そこに現れたのは、妖精と形容するにふさわしい少年だった
日の光のような髪色に怪しげな紫の瞳
所属不明の軍服は、彼の人間ばなれした容姿を引き立てているかのように感じる
???
???
旅人
???
旅人
???
???
旅人
???
???
そいつは、静かに旅人に触れた
旅人は、淡い光を放って赤い花に変えられてしまった
???
???
この世界は人間だけのものではない
これは当たり前の話だが
この世界の何処かには
ひとの予想を超える生き物も潜んでいるのだ
コメント
10件
なるほなぁ。 「きつねの窓」みたいな世界観……? かも?()
自然を大切にしないと私も妖精に。。:(;゙゚'ω゚'): 今回も素敵なお話でした( ˊᵕˋ )