ザッザッザッ
目を凝らしてよく見てみた。
間違いない。何度も夢にみた街だ…
約束の土地だ
僕と彼女の約束の土地…
回想
淳
紗江
紗江は大きな瞳でこちらを見た。
淳
紗江
淳
紗江
紗江
淳
淳
少女は…紗江は、しばらくうつむいていた。
そして呟いた。
紗江
淳
淳
そして二人は手を握った。
いよいよ出発の日になった。
紗江は見送りに来てくれた。
潮風になびく髪が、淳を一層、感情的にさせた。
淳
紗江
乗船場で、僕らは何も話さなかった。
ボーーーーーーー
出発の汽笛が鳴り響く。
さよならも言わずに、二人は手を握った。
そして淳は船に乗り込んだ。
淳
淳
淳
その日から淳の東京での生活は始まった。
回想終
そして今
淳は帰ってきた。
淳
淳
淳は紗江に渡そうと林檎を右手に握りしめていた。
淳は紗江の家に向かった。
日は既に傾き、黄昏時であった。
淳
紗江の家についた。
淳
少し立ち止まり、ようやく決心したようにドアに手を伸ばした。
手はカタカタと震えた。
コン コン コン
ノック音が響く
冷たい空気に透き通った声が響き渡る。
キィーーーー
ドアは開かれた。
淳
そこには紗江の姿があった。
赤ん坊を抱えた紗江の姿が……
紗江
ドアの奥には米をとぐ男の姿が見えた。
「あいつが亭主なのだろう…」淳はそう確信した。
紗江
紗江は気まずそうにこちらを見ている。
淳
淳
淳
淳は林檎を差し出した。
淳
紗江
淳
淳
淳はそう囁いた。
淳は駆け出した。
故郷の原っぱまで走ってきた。
淳は倒れこむように、仰向けに寝転んだ。
淳
澄んだ夜空に輝くはずの星たちは、にじんで見える。
淳は固く瞳を閉じた
淳
淳
淳
淳は立ち上がった。
そして男は石ころを力強く蹴飛ばし、星の下を歩いていく。
まだ手の中にほのかに残る、林檎の香りを嗅ぎながら。
《林檎エレジー》【完】
コメント
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涼さん (字間違ってたら、すみません) 素敵な人ですね! 私もこういう人になりたいです!