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美しき記憶

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美しき記憶

5 - 美しき記憶

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2021年02月01日

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国王

ウィリアムの派遣場所は…

国王

D区だ

オリビア

D区?

国王

あぁ

オリビア

じゃあ今すぐそこに…!

国王

それが、少々問題があってな

オリビア

どういう事ですか?

国王

D区は極めて危険な区域だ

国王

今から助けを向かわせる所だ

国王

女性が近づくのは危ない

オリビア

そんな!

オリビア

ウィリアムは無事なんですか?!

国王様は言いずらそうに

顔を背ける

国王

…さぁ

国王

だが、ウィリアムは立派な男だ

国王

確証はできんが生きているだろう

オリビア

(そんなの無責任よ…!)

オリビア

お願いです、国王様

オリビア

私を、そのD区に行かせてください

国王

それは出来ない

国王

国民を、ましてや兵士でもない女性を

国王

戦場に連れて行くことはできない

オリビア

私はどうでも良いんです!

オリビア

もう死んだっていい…

オリビア

ウィリアムが無事なら私なんて!

国王

…………

国王様は黙り込み、何か考えているようだった

国王

…己の身体よりウィリアムが大切か

オリビア

もちろんです

オリビア

私は彼を…彼を…

オリビア

愛していますから!

私の声が王宮内に響き渡る

オリビア

だからお願いします…

国王

そこまで言われては仕方がない

国王

ただし、身の安全は保証できん

国王

それでも良いか?

オリビア

もちろんです

オリビア

ウィリアムに会えればそれで良いんです

国王

分かった

国王

では、こいつについて行きなさい

国王様が手を叩くと

奥から先程の召使いが出てきた

国王

D区にオリビアを連れていくんだ

王宮の召使い

D区にですか?!

王宮の召使い

国王様、それは一体…

国王

オリビアの意思だ

国王

私もあそこには兵士しか連れて行きたくないが

国王

愛の力は引き裂けんよ

王宮の召使い

かしこまりました

王宮の召使い

では、オリビア様はこちらへ

オリビア

えぇ

オリビア

国王様、ありがとうございます

国王

気にするな

国王

無事で帰ってくるんだぞ

オリビア

はい、きっと

D区に着く頃には日は沈み

辺りは暗闇に包まれていた

空には満天の星が散りばめられ

その中でも月は一際輝いていた

オリビア

(今日も月が綺麗ね)

オリビア

(きっとウィリアムも無事だわ)

馬の蹄の音がパカパカと暗闇にこだまする

王宮の召使い

オリビア様、もう少しです

オリビア

分かったわ

…………

王宮の召使い

オリビア様、起きてください

オリビア

ん…

私は眠ってしまっていたようだ

オリビア

あら、ごめんなさい…

オリビア

眠ってしまっていたわ

王宮の召使い

お気になさらず

オリビア

それにしても静かね…

オリビア

世界に私たちだけしかいないみたいに

王宮の召使い

D区がこんなに静まり返ったのは初めてです

王宮の召使い

何か異変があったのかもしれません

王宮の召使い

少し行くと基地があるはずです

王宮の召使い

急ぎましょう

…………

基地に着いた

だが、やっぱり誰もいない

王宮の召使い

…おかしいですね

オリビア

何だか嫌な予感がするわ…

私は首元のブローチを握りしめた

王宮の召使い

少し様子を見てきます

王宮の召使い

オリビア様はここに

オリビア

えぇ、気をつけて

召使いが走り去り

夜の戦場に1人になった私は心細くなり

ブローチを握る手に力を込めた

そして強く願った

オリビア

(ウィリアム…)

オリビア

(無事でいて…)

すると、ふいに目の前が明るくなった

オリビア

…?

召使いが戻ってきたのか

初めはそう思ったが何か違う

そう、光は首元のブローチから出ていた

緑色に輝きある一点に向かって真っ直ぐ光が伸びている

オリビア

これは…

「ウィリアムはこの光の先にいる」

直感でそう判断した

オリビア

……!

そう思うといても立っても居られなくなり

その光を辿り走り出した

王宮の召使い

オリビア様?!

後ろからは王宮の召使いの声が聞こえる

王宮の召使い

どうされたのですか?!

オリビア

きっと、この先にウィリアムがいるのよ!

私は首だけで後ろを振り向き

召使いに笑ってみせた

…………

どのくらい走っただろうか

荒い呼吸で息をする

寒さからかその度に口からは白い息が出てくる

オリビア

ウィリアム!

顔を上げ、そう叫んだ

オリビア

……!

私は目の前に広がる光景に身体が凍った

オリビア

なんて…酷い…

私の目に映ったのは

そこらじゅうに倒れている兵士たち

死んでいるのか生きているのかすらも分からない

地面には赤黒い血が染み付いている

オリビア

ウィリアム…どこなの…?

私はフラフラとおぼつかない足取りで

光を頼りにウィリアムを探す

その時、か細い声が聞こえた

「オリ…ビア」

酷く掠れていて消えてしまいそうな声

だけど、絶対にウィリアムの声だった

オリビア

ウィリアム!

私は自分の目の前にある岩の反対側を覗いた

すると、ウィリアムが岩にもたれるような体制になって

ぐったりとしていた

オリビア

あぁ、ウィリアム…

酷い傷を負っていた

頭には何重にも包帯が巻かれ

顔や服は煤だらけ

身体の至る所に傷がある

オリビア

酷い怪我よ…

オリビア

(早くウィリアムを助けないと…)

オリビア

(でも、どうやって?)

オリビア

(ウィリアムを1人にはさせられない…)

オリビア

(でも…でも…)

私は何も出来ない自分に腹が立ち

涙が溢れ出てきた

オリビア

(どうしたら…良いの…)

ウィリアム

オリビア…聞いてくれ…

オリビア

なに、ウィリアム…?

ウィリアム

僕はもう助からない…

オリビア

そんな事言わないでよ…!

オリビア

助けてみせるわ、だから…!

ウィリアム

いいや、助けなくていい

ウィリアム

もう…無理だよ…

ウィリアム

ゴホッゴホッ!

ウィリアムは血を吐いた

オリビア

もう話しちゃダメよ!

オリビア

お願い、ウィリアム!

ウィリアム

オリビアに…伝えたい事がある

オリビア

…なに…?

ウィリアムは傷だらけの冷えきった手で

私の手を包み込むように握りしめた

ウィリアム

僕は君の事を愛している…

ウィリアム

10年前…

ウィリアム

告白を断ったのにも理由があったんだ

ウィリアム

僕は兵士の息子だ…

ウィリアム

だから、いずれ戦場に出る事は決まっていた

ウィリアム

だから、君と離れ離れになるのが怖くて

ウィリアム

断っていたんだ

ウィリアム

伝えるのがこんな時ですまない…

オリビア

ほんとよ…

オリビア

最後の最後まで黙ってるなんて…

オリビア

ウィリアムのバカ…

そう言うと彼は優しく私を抱きしめた

ウィリアムの心臓の音が直に伝わってくる

離れたくない、そう思った

ウィリアム

オリビア…

ウィリアムが耳元で囁く

オリビア

なに…?

ウィリアム

僕が死んで、全ての記憶がなくなっても

ウィリアム

僕はまた君と出会いたい

ウィリアム

いや、探し出してみせるよ

ウィリアム

だから、それまで待っていて…

オリビア

もちろんよ…

オリビア

愛しているわ、ウィリアム

ウィリアム

僕も愛して───。

ウィリアムの言葉はそこで途切れ

背中にあった手はダラリと落ちた

オリビア

…………

オリビア

………………

徐々に冷たくなっていくウィリアムを

強く抱き締めた

数十年後

私はウィリアムの死から立ち直れず

屋敷に籠る日々が続いた

そんな私を救ってくれたのが

今のパートナーだった

オリビア

(この場所も久しぶりね…)

ソフィア

お母様~!

美しい黒髪の少女が私を呼ぶ

この子は娘のソフィアだ

オリビア

あら、ソフィア

オリビア

どうかしたの?

ソフィア

男の人から伝言を預かりました

オリビア

男の人?

オリビア

お父さんではないのね?

ソフィア

えぇ、お父様じゃない誰かです

ソフィア

白髪で背の高い、まるで女性のように綺麗な男性でした

オリビア

……!

オリビア

その男の人はなんて?

ソフィア

「僕のことを覚えているかな」

ソフィア

「君が前を向けたようで良かったよ」

ソフィア

「今はまだ会えないがまた君と笑い合える日が来ると信じている」

ソフィア

「オリビア、愛しているよ」

ソフィア

と、おっしゃっていました

ソフィア

お母様、どういう事です?

ソフィア

あの方はどなた?

オリビア

(きっと、ウィリアムね…)

私の頬に一筋の涙が触れた

ソフィア

お母様…泣いているんですか?

オリビア

ソフィア、その男の人はね…

『説明中』

ソフィア

そうだったんですね

ソフィア

お母様をまだ愛しているなんて素敵!

ソフィア

きっと空で見守ってくれているのんですね

オリビア

えぇ、そうね

オリビア

貴方もそんな人を見つけるのよ

ソフィア

分かりました、お母様!

ソフィアの笑った顔は

ウィリアムが私に向けていた笑みにそっくりだった

まるでウィリアムが近くにいるような

そんな気がした

ソフィア

そういえば、お母様

オリビア

なに?

ソフィア

その首元についているブローチ

ソフィア

そのブローチは初めて見ました

ソフィア

とても綺麗…

私はブローチに優しく触れた

オリビア

これは、大切な遺品よ

オリビア

さっき話したウィリアムのね

オリビア

だから、普段はつけていないのよ

ソフィア

そうだったんですね

ソフィア

お母様に良くお似合いです

オリビア

ありがとう

オリビア

ソフィアもつけてみる?

ソフィア

良いんですか?

オリビア

もちろんよ

オリビア

…………

オリビア

ほら、つけれた!よく似合っているわ

ソフィア

わぁ、なんて綺麗なんでしょう…!

オリビア

…それは貴方にあげるわ

ソフィア

え、でも、お母様…

ソフィア

大切なものなんでしょう…?

オリビア

良いのよ

オリビア

大切にすれば、きっとウィリアムも喜ぶわ

ソフィア

分かりました!

ソフィア

大切に使わせてもらいます

オリビア

えぇ、きっとソフィアの助けになってくれるわ

ソフィア

ありがとうございます!お母様!

オリビア

喜んでもらえてよかったわ

オリビア

ほら、お屋敷に戻りなさい

ソフィア

はい、また後ほど!

手をヒラヒラと振り

ソフィアは屋敷に戻っていった

オリビア

…ウィリアム

オリビア

きっとそこにいるのよね

オリビア

本当にありがとう

オリビア

今でもたまに思い出す

オリビア

…愛しているわ

「僕も愛しているよ」

ウィリアムが私の隣でそう言っているような気がした

「」

[完]

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