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翌朝、青は自分でも驚くほど穏やかな気持ちで目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて、
昨日の桃の温もりが少しだけ残っている気がして、
青はぼんやりと天井を見つめながら、ゆっくり息を吐いた。
青
その考えが胸に浮かんだ瞬間、喉の奥が熱くなる。
条件は、あとひとつ。
やっとここまで来れた。
昼食を一緒に食べて、手を繋いで、キスをして、
そして昨日、桃は最後まで青を怖がらせないように、
何度も「大丈夫」と言ってくれた。
帰りも、青の家まで送ってくれた。
青は目を閉じる。
思い出すだけで顔が熱くなるのに、
それ以上に胸が苦しかった。
あんなに優しくされる資格なんて、
自分にはない気がした。
だって全部、"条件"のためだったから。
……本当に?
ふと浮かんだ考えを、青は慌てて振り払った。
違う。
違わないと困る。
もし違ってしまったら。
自分が、本当に桃をーー。
青
青は布団を頭まで被った。
考えたくなかった。
教室へ入ると、桃は既に来ていた。
目が合う。
桃
桃の少し笑った表情に、青の心臓は跳ねる。
青
自然と返事が出る。
桃
桃は青の机に紙パックのジュースを置いた。
桃
青
桃が笑う。
青も少しだけ笑う。
そんな何気ないやり取りが、どうしようもなく嬉しかった。
昼休み、2人は屋上にいた。
涼しい風が吹く。
桃はフェンスにもたれながら言う。
桃
青の箸が止まる。
青
桃
桃は笑う。
桃
青は俯く。
「好きになりそうだったから。」
そう言えたらどれだけ楽なんだろう。
放課後。
ふたりで並んで帰る。
沈黙さえ心地よい。
信号を渡るタイミングも、歩幅も自然と合っている。
桃
青
桃
青は少し考えてから、小さく笑った。
青
夕焼けが2人を照らしていた。
その瞬間だった。
頭の奥に声が響く。
『条件5、隣の席の人を殺す』
青の呼吸が止まった。
世界から音が消えた。
さっきまで暖かかった夕焼けが、一瞬で凍りついたみたいだった。
隣には桃がいる。
何も知らない桃が。
その夜、青は眠れなかった。
ベッドに横になっても、条件が頭から離れない。
殺す。
桃を。
考えたくないのに。
駅のホームを見ると落とす想像をしてしまう。
車道を見ると押す想像をしてしまう。
階段を見ると突き落とす想像をしてしまう。
青
布団を頭まで被る。
涙が滲む。
自分が怖かった。
桃を傷つける方法を考えている自分が。
それから青は桃を避け始めた。
昼休みも。
帰り道も。
目が合えば逸らした。
会わないように逃げた。
でも、桃は追いかけてくる。
桃
優しい声。
それだけで胸が苦しくなる。
ある日の昼休み。
隣の席から桃が声を掛けた。
桃
青
青は顔を上げずに言った。
桃
青
桃
青
思わず強い声が出た。
教室が静まり返る。
桃も固まった。
青は立ち上がり、そのまま教室を飛び出した。
トイレの個室に閉じこもり、鍵をかける。
そして、その場にしゃがみ込む。
息が苦しい。
涙が出る。
青
桃は何も悪くない。
なのに。
どうして。
放課後。
昇降口を出たところで、腕を掴まれた。
桃だった。
桃
青
桃
珍しく強い声。
青は俯く。
桃
答えられない。
答えたら死ぬ。
神様との約束だから。
桃
その言葉を聞いた瞬間。
堪えきれなかった。
ぽろり、と涙が落ちる。
桃が固まる。
青も固まる。
しまった。
本気でそう思った。
桃
青
桃
青
桃
青
桃
桃は困り果てている。
青は必死に涙を拭く。
でも止まらない。
しばらくして、桃が小さなため息をつく。
桃
桃
青の肩が震える。
青
桃
桃
その言葉が、胸に刺さった。
桃
青は唇を噛む。
桃
涙がまた溢れた。
そんなこと言われたら。
もっと殺せなくなる。
数日後。
青は階段の前に立っていた。
人通りは少ない。
下を見れば硬い床。
ここから落ちたら。
死ぬかもしれない。
その時。
桃が来た。
桃
条件が頭を埋め尽くす。
死にたくない。
生きたい。
やれ。
今なら。
今しかない。
青は震える手で桃の制服を掴んだ。
桃
桃が振り返る。
その顔を見た瞬間。
昼休みに笑った顔。
抱きしめてくれた腕。
自分の名前を呼ぶ声。
全部が浮かぶ。
青
力が抜ける。
階段を駆け下り、その場から逃げる。
涙が止まらなかった。
その日から、毎晩泣いた。
生きたい。
でも、桃を死なせたくない。
どっちも本音だった。
どっちも捨てられなかった。
そして期限の日。
青は桃を呼び出した。
人気のない校舎裏。
夕暮れ。
風が冷たい。
2人きり。
長い沈黙が続いた。
やがて青が震える唇を開く。
青
そしてーー
「僕、今まで桃くんのこと利用してた」
𝙉𝙚𝙭𝙩…♡×1000
コメント
3件
書き方上手すぎ...???? なんか全部が本人たちのセリフに聞こえて余計に響く 桃くんのこと考えると泣いちゃう青くんに変わったのが嬉しいけど、その泣いてる理由が「♡♡♡ないといけない」、から悲しいよね、 続き待ってます!!
続きが気になりすぎる…
うわ…第8話、読んだ…。最後の「利用してた」の告白、青の震える声が聞こえてきそうで胸がぎゅってなった。今まで積み重ねた優しさがぜんぶ嘘だったらどうしようって、青自身が苦しんでるのが伝わってきたよ。桃くん、何も知らずに「一人で抱え込むな」って言ってるのがまた切なくて…。あと「顔赤い」とか「おはよ」の日常シーンが眩しすぎて、むしろそれが後の展開とギャップになって辛い。次が気になりすぎる…。