霧我
霧我
霧我
鴉
アレン
ゴーム
布団も枕も、血で紅く染まっている。
__「解毒薬」を投与して数時間後。 アレンの容態が急変した。
ミファエルの介護も兼ねながら、あらゆる手を施すが、アレンは体をエビのように反らして喀血を繰り返すばかりだ。
ゴーム
歯痒くて、不甲斐なくてヒステリックな声を上げる俺の手を、アレンが弱々しく掴んだ。
アレン
アレン
ゴーム
アレン
ゴーム
ゴーム
アレン
ゴーム
アレンの手からどんどん握力が弱まって行く。 アレンは瞳に涙を滲ませ、言った。
アレン
アレン
母の命と引き換えに、俺は生まれた。
母の亡骸の横で産声を上げる俺の髪は、王族にあるまじき黒。
生まれて来た俺と息を引き取った母を見た父は、最初にこう言ったと言う。
「呪いだ」
父が選んだのは、隠蔽。
名前すら与えられなかった俺は、物心ついた時から、城の地下深くに幽閉され
国民に認知される事 無く生きて来た。
俺の存在を知っているのは城でも一部の人間。 父、総騎士長。
そして
アレン(回想)
コルティア 王子
鴉(回想)
剣術の練習に使う木刀が、次々体に打ち付けられる。
アレン(回想)
バチィ!
鴉(回想)
コルティア 王子
コルティア 王子
アレン(回想)
総騎士長の息子アレンと、「正式な」コルティア王子は、城では有名な悪童らしい。
度々城を抜け出し遊び呆け、そして毎日のように地下を訪れては俺を いたぶって楽しんでいた。
___魔術養成学校の終業の時間になると、2人は競うように階段を駆け上がって行く。
最近の2人の関心は どっちが先にミファエルと言う生徒を口説けるかで、に向いている。
鴉(回想)
___あの2人からは多くの事を学んだ。
俺と言う人格は、あの日々で形成されたのだから。
執事長
俺の存在を知っているのは、王族と総騎士長親子ともう1人。
唯一俺を「王子」と呼び、人間扱いしてくれる。
執事長は、今日も更新した痣と火傷の手当てをしながら、申し訳なさそうに唇を噛んだ。
執事長
鴉(回想)
その言葉が聞けただけで充分だ。 __俺を養護する事で、執事長が何十歳も年下の若手にも笑い者にされている事を知っている。
鴉(回想)
鴉(回想)
鴉(回想)
鴉(回想)
執事長
鴉(回想)
鴉(回想)
鴉(回想)
執事長
ガサッ
草木を踏み、背後に人の気配。 肩越しに振り向く。
コルティア 王子
__血に濡れた腹部を庇いながら、「正式な」王子が涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして立っていた。
王子は執事長の姿を認めると、片方の唇の歯を吊り上げるように笑った。乱杭歯(らんぐいば)がむき出しになる。
コルティア 王子
王子は座り込むと、白髪を振り乱し唾を飛ばして喚いた。
コルティア 王子
コルティア 王子
コルティア 王子
コルティア 王子
コルティア 王子
ドスッ
逃げる際、執事長が持たせてくれた短剣で
後ろから心臓を刺した。
目と口を大きく開けたまま、王子はゆっくりとうつ伏せに倒れる。
執事長
血に染まった短剣を投げ捨て、俺は執事長に微笑みかけた。
鴉(回想)
鴉(回想)
鴉(回想)
鴉(回想)
霧我に、蛇革で編んだ鞄を渡す。
霧我
中を覗き込んだ霧我が大袈裟に肩を竦めた。
鞄からはみ出るのは、雪のように白い髪____
鴉(回想)
霧我
霧我
鴉(回想)
「侵攻軍には風の雅美がいます。そのような発言は」
執事長が慌てた様子で、手近な紙にペンを走らせる。 俺もペンを取った。
「聞かせてるんだよ。 カラスに見回らせた。アレンが対抗勢力を率いてる。そこと衝突させるんだ」
鴉(回想)
鴉
霧我
鴉
鴉
鴉
鴉
鴉
霧我
鴉
鴉
鴉
霧我
漆黒の剣は、うつ伏せの霧我の心臓部にあてがわれる。
鴉
鴉
鴉
鴉
ド ス
執事長
鴉
執事長
鴉
執事長
執事長
鴉
執事長
執事長
執事長
執事長
鴉
執事長
鴉
執事長
鴉
鴉
執事長
執事長
鴉
執事長
執事長
鴉
執事長
鴉
執事長
鴉
鴉
鴉
執事長
鴉
鴉
鴉
鴉
執事長
執事長
執事長
鴉と常闇 残夢は
夜の闇にその姿を紛らせた。
魔術世界大戦記
了
コメント
5件
心を揺さぶられる、壮大なファンタジーでした! 激しさがこちらに伝わってくるバトルシーンも、まさにチャットノベルでしか表現できない独自性のあるものでした。そしてその根幹であるストーリーもよく考えられて作ってあるのが伝わってきました。お見事です‼️
完結です! 初めてのバトル物でした😳きっと絶対に!「んン?何言ってんの物理分かってる?」と!思う箇所があったかと思いますが!まぁあたたかい目で!!(おい) 黒髪の呪いの王子、と言うのは中学生くらいの時にぼんやり考えてた設定でした😳形に出来て幸せです😳 読んでくださりありがとうございました❗