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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ パクリ禁止⚠️
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6,矛盾の国に生きる
午前九時四十五分。
サイレンが乾いた冬の空を裂いた。
亥留馬が短く報告する。
その声には感情がなかった。
まるで機械のように冷たく、正確だった。
犯人は地面に押さえつけられていた。
震える両手、割れた眼鏡。
血の匂いが、舗装されたアスファルトの上にまだ生々しく漂っている。
それでも、亥留馬の目は冷静だった。
むしろ静かすぎて、不気味なほどに。
口元だけがわずかに動く。
それは皮肉とも、警告ともつかない言葉だった。
蘭がその隣に立ち、深く息を吐いた。
軽く手を上げて応じた亥留馬は、被疑者を車に押し込み、ハンドルを握る。
その横顔を見ながら、蘭はふと目を細めた。
無表情。
だが、瞳の奥には確かに“熱”がある。
亥留馬という男は、正義の形を壊すことを恐れない。
――だからこそ、誰よりも壊れやすい。
パトカーのエンジンが唸りを上げ、冷たい風の中を滑り出す。
無線の声が絶え間なく鳴るが、車内はそれ以上に静かだった。
信号待ちの間、亥留馬がぽつりと口を開いた。
不意の問いに、蘭は眉を上げる。
蘭は苦く笑う。
その言葉に、亥留馬は僅かに目を伏せた。
青信号に変わる。
車は刑務所の門をくぐり、鈍い音と共に鉄格子が閉まる。
——その音を、蘭は嫌いだった。
いつも聞くたびに、「自由」という言葉の重さを思い知らされる。
事務棟に戻ると、各自が作業室へと散っていく。
報告書、尋問記録、延命対象者のリスト。
何百枚もの紙が音もなく積み上がり、世界の“歪み”を形にしていた。
亥留馬は黙々と書類をまとめていた。
白紙の上でペンの音だけが響く。
その手がふと止まる。
机の端に置かれた一枚のファイルが目に入った。
清水心雨 学生殺人事件容疑者 被害者:五名 動機:黙秘 備考:犯行に使用された鈍器は未発見。
亥留馬は息を呑んだ。
若すぎる。
彼が見た被疑者の中でも、最も幼い。
無意識の呟きが漏れる。
そして次の瞬間、自分の頬を叩くように頭を振った。
——同情するな。
それで一度、取り返しのつかない誤りを犯した。
“情”は、正義を歪める。
ペン先が紙に落ちた瞬間、扉がノックされた。
入ってきたのは、湯気の立つカップを手にした蘭だった。
軽口を交わしながら、蘭は亥留馬の机に目を落とした。
ファイルの名前を見た瞬間、その笑みが静かに消える。
蘭はコーヒーを机に置き、ゆっくりと呟くように言った。
亥留馬は少しだけ目を細めた。
その表情に、答えの迷いが滲んでいる。
蘭は小首を傾げ、少し笑った。
その声には笑みが混じっていたが、目は笑っていなかった。
蘭はまっすぐに言った。
亥留馬はその言葉を聞いて、少しだけ視線を落とした。
過去の影が胸をよぎる。
——かつて、自分の判断でひとりの囚人を死なせた。
同情が正義を狂わせ、結果として命を奪った。
あの日から、感情を閉じることを覚えた。
それでも、まだ心の奥で燻っている。
静かに言うと、蘭は目を細めた。
蘭は微笑む。
沈黙が降りた。
蛍光灯の明滅が、二人の影を揺らす。
蘭は笑いながら頷いた。
そう言って、蘭はカップを持ち上げた。
湯気の向こうで、二人の視線が交錯する。
——矛盾だらけの国で、彼らはそれでも立ち続ける。
守るためではなく、壊すためでもなく。
ただ「信じたい何か」を手放せずに。
6・了
主
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡70
主
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コメント
3件
いい話だ……もう多分次くらいで泣きそう、