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nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 警察官パロ⚠️ 黄様若干翠様に嫌われ⚠️ 敬称に違いあり⚠️ パクリ禁止⚠️
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7,赦しの夢
夜の独房は、世界から切り離されたように静かだった。
時計の針もない。
窓の外に見えるのは、分厚い鉄格子と、遠くの月だけ。
その光が、冷たく床を撫でていた。
美琴はベッドに横たわり、ぼんやりと天井を見上げていた。
寝返りを打っても、眠気は降りてこない。
頭の奥で、何かが囁いている。
——思い出せ、と。
——あの時の、約束を。
瞼を閉じた瞬間、闇がゆっくりと形を変えた。
夏の匂い。
青い空。
蝉の声。
気づけば美琴は、あの頃の自分に戻っていた。
川のほとりを流れる風は、どこまでも生ぬるかった。
木陰の下、麦わら帽子を被った少年が網を構えている。
少し離れた場所では、もう一人の少年が石を積み上げていた。
足元の水しぶきが陽光を跳ね返す。
虫取り網の先には、蜻蛉が一匹、空へ逃げていった。
虫取り網の先には、蜻蛉が一匹、空へ逃げていった。
その声はどこまでも優しかった。
彼の名は——須智。
十二歳。
近所に住む兄のような存在だった。
夏休みのたびに、美琴は須智の家に入り浸っていた。
虫取りも、花火も、昼寝も、全部一緒。
須智が笑えば、美琴も笑う。
それが当たり前の日々だった。
川の水をすくいながら、美琴がぽつりと訊ねた。
須智は少し驚いたように顔を上げ、それから微笑んだ。
その瞳は真っすぐで、眩しかった。
美琴は小首を傾げる。
須智は少し考えたあと、空を見上げて言った。
美琴はまだその言葉の重さを知らなかった。
けれど、須智が言うなら、それはきっと大事なことなんだと、素直に思えた。
その声は無邪気で、真っすぐだった。
須智は一瞬黙ったが、すぐに笑った。
美琴は嬉しそうに小指を差し出した。
からん、と蝉の声の中に誓いの声が溶けた。
それが、美琴の人生で初めての“約束”だった。
次に見えた景色は、雪の夜だった。
須智の家。
こたつの中に二人並んで座り、宿題を広げている。
窓の外では粉雪が舞い、みかんの甘さが漂っていた。
鉛筆を止めて、美琴が言う。
須智はしばらく考えてから、真面目な声で答えた。
須智は迷わずに言った。
幼い美琴は、ただ頷いた。
その時はまだ、“正義”の裏にある痛みを知らなかった。
知らなくてよかった。
知らないままでいられたなら――。
こたつの中で、須智がふと笑う。
――優しい。
その言葉が、胸の奥で何度も反響した。
その夜、美琴はその言葉を抱いたまま眠りについた。
雪の降る音が、やけに静かに感じられた。
夢の中の景色が、少しずつ歪み始めた。
白い雪が、赤に染まっていく。
須智の笑顔が、ぼやけて遠ざかる。
呼びかけても、声は届かない。
代わりに、耳の奥でサイレンが鳴り響いた。
血の匂い。
冷たいアスファルト。
視界の端で、誰かが崩れ落ちる。
――女性の悲鳴。
――逃げる影。
それを止められず、立ち尽くしたままの自分。
夢と現実の境が、ゆっくりと溶けていく。
次に目を開けた時、美琴は独房の中にいた。
息が荒い。
額には冷や汗。
頬を伝うのは、涙だった。
静寂の中で、その雫がぽたりと床を濡らした。
唇が震える。
誰もいない空間に向かって、美琴はかすれた声で呟いた。
その言葉は、鉄の壁に吸い込まれていった。
誰も答えない。
ただ遠くで、監視カメラの赤いランプが瞬いていた。
その光が、まるで“罪”そのもののように、美琴を照らしている。
――“正義っていうのは、正しいことを行うってことだよ”
あの日の声が、どこからか聞こえてくる。
それは、祈りのようで、呪いのようでもあった。
呟いた声は、誰にも届かない。
美琴の中で、“正義”という言葉が静かに崩れていった。
鉄格子の隙間から、月の光が差し込む。
美琴はその光に手を伸ばした。
けれど、届かない。
掴もうとするたび、光は逃げていく。
――赦しは、まだ遠い。
美琴は、そう思いながら、ゆっくりと目を閉じた。
再び訪れる闇の中で、須智の笑顔だけが鮮やかに残っていた。
7・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡80
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コメント
9件
時差コメ失礼します<(_ _)> 切なすぎて心臓グッってなりました😇 神作品すぎてもう泣けます…
時差コメ失礼 すちくんとの記憶の描写上手すぎる!次回も待ってる!
時差コメ再び(?) やっぱり神なんですよ。いいですか?神なんですよ。