叶夢
お兄ちゃん!鬼ごっこしよう!
良宇
叶夢。ごめんな、にいちゃん今は遊べないんだ。
叶夢
え〜!なんで!遊ぼうよ!
良宇
近所の凛ちゃんと遊んできなさい
叶夢
うぅ…
ママ
叶夢!お兄ちゃんは今、忙しいんだから、お外で遊んできなさい!
叶夢
うん…
この時、お兄ちゃんは中学3年生で受験を控えていました。
なのに、家族に八つ当たりもせずに今でも私はお兄ちゃんを尊敬しています。
叶夢
ただいまー
ママ
お帰りなさい。ご飯できてるわよ。
叶夢
今日のご飯なに?
ママ
鯖の味噌煮よ。
叶夢
え〜!叶夢ハンバーグがいい〜!
ママ
文句言うんじゃないの!ほら!手洗って!
叶夢
いただきまーす
叶夢
マズイ…
ママ
マズイなんて言うんじゃないの!
叶夢
ママ〜!やっぱり叶夢ハンバーグがいい!
ママ
もう!うるさいわね〜
良宇
叶夢。ちょっと待ってて。
ママ
良宇?
良宇
はい。叶夢。冷凍チンしただけだけど。
ママ
良宇?いいの?
良宇
うん。叶夢。あとそのお魚、3口だけ食べようか。
叶夢
うん。
良宇
はい!叶夢えらい!じゃあ、あとはお兄ちゃん食べるから。もういいよ。ハンバーグ食べて
叶夢
お兄ちゃんありがとう!
良宇
お粗末様でした。
ある日、家族で山へハイキングへ行った時。私はこの時、10歳でした。
叶夢
お兄ちゃん!楽しみだね!
良宇
そうだね〜!
ママ
それにしても、今日晴れてよかったわね〜
パパ
そうだなー。
叶夢
夜だよ!夜!肝試ししようよ!
パパ
だめだよー!山には熊さんや狼さんがたくさんいるんだぞー!
ママ
叶夢なんかは食べられてしまうわよ
叶夢
えー!怖いよー!お兄ちゃん!
良宇
大丈夫だよ。叶夢は静かにしていれば来ないから。
良宇
もし襲ってきたら、お兄ちゃんが倒してあげるからね!
叶夢
お兄ちゃんかっこいい!ありがとう!
ママ
さあ、もうそろそろ寝るわよ〜
パパ
良宇。電気消して!
叶夢
うーん…朝?
叶夢
まだ夜じゃん…
叶夢
あれ?お兄ちゃんは?
叶夢
お兄ちゃーん!
叶夢
なんで声が帰って来ないの?
?
ヴォーン!
叶夢
遠吠え?
叶夢
狼さん?
叶夢
どうしよう!狼さんに食べられる!
?
ヴォーン…
叶夢
え…狼さん…?
叶夢
やめて!来ないで!
良宇
待って!
叶夢
お、お兄ちゃん!
叶夢
え…?なんで血だらけなの?
良宇
……
叶夢
お兄ちゃん?
良宇
…ごめんな。叶夢…。
良宇
お兄ちゃん実は、狼なんだ…。
叶夢
え…?なに…言ってるの…?
叶夢
お兄ちゃんは人間じゃないの…?
良宇
うん。だから、お兄ちゃん。もう山へ帰らないと行けないんだ。
叶夢
ママ達にさよならって言わないの?
良宇
ママもパパも、お兄ちゃんが狼って知ってたから。
良宇
このハイキングだって、お兄ちゃんを山に返すために来たんだから。
叶夢
待ってよ!お兄ちゃん!お兄ちゃんとまだ一緒に居たい!
良宇
え?
叶夢
叶夢、お兄ちゃんのこと…
叶夢
大好きだから!
良宇
お兄ちゃんも、離したくないくらい大好きだよ。
叶夢
なら…
良宇
でもだめなんだ!
良宇
もう、俺の体は獣臭くて笑われるし、気持ち悪い毛は生えてくるし、
良宇
これじゃ、学校にも社会にも出られないよ!
良宇
しっかり、ママとパパと一緒に話し合って決まったことなんだ。
村の人
こっちだー!
叶夢
貴方達誰?
村の人
この山の下の方で暮らしている者だ。
村の人
君はお母さんのところにいなさい。
叶夢
でも!お兄ちゃんが!
村の人
いいから!
叶夢
キャッ!
良宇
お、お前!俺の妹に触るな!
村の人
お前みたいな獣には言われたくないな!
良宇
うるさい!
村の人
この私たちに口答えするとはな!いい度胸をしておる。そこは褒めてやる。
村の人
本当は餓死させようと思ったが、こんな奴を生かしておく自体無駄だ。
村の人
今ここでお前を殺す。
叶夢
やめて!
村の人
構え!
村の人
チッ!的が外れてしまった。
良宇
叶夢!!叶夢!!!
村の人
おやおや可哀想に、こんなに若いのに…
良宇
てめえ…
村の人
次こそお前の番だ!
村の人
死体はこのままでいいだろう…
村の人
この女の子のためにも、
パパ
…え?
ママ
叶夢!?良宇!?
村の人
悪いですが、狼を打つつもりだったんですが、この子が庇ってしまいまして。
ママ
なんてことを!!
パパ
…!
ママ
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
パパ
グスン…
近所のおばさん
知ってる?北澤さん家のお子さん、死んだんですってね。
豪華な家のおばさん
可哀想に…。まだ2人とも若いのに…
近所のおばさん
なんか、2人とも顔と顔を近づけて、まるで生きているように
近所のおばさん
頰がピンクに染まっていて、
近所のおばさん
微笑んでいたそうよ。