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カタカタ
カタカタ
カタカタ
カタカタ
四畳半の狭い部屋の中
二種類の無機質な音が カタカタと響いている。
カタカタ
カタカタ
カタカタ
カタ…
先に音を止めたのは 冴内 蒼空(さえない そら) という少年だった。
冴内蒼空
喜びの余り叫びながら 両腕を突き上げて大きく息を吐く。
冴内蒼空
冴内蒼空
思わずニヤニヤと緩む口許を隠しもせず、 出来上がったばかりのそれを抱き締めた。
いつの間にかもうひとつの 音も止まっていた。
代わりにワナワナ震える小さな肩。
蒼空を睨み上げる少女がいる。
少女の名前は 可愛 シエル(かわい しえる)。
可愛シエル
カシャン!
シエルは携帯型ゲーム機を 床に放り出した。
冴内蒼空
蒼空は抱き締めていた物をパンッと開いて 見せびらかすように差し出した。
落ち着いたトーンの赤いブラウス。
バルーンのように膨らまされた袖と 袖口には可愛らしいフリル。
蒼空が自慢気に手にする服こそ つい先程までミシンでカタカタと 作っていた物に他ならない。
蒼空の趣味は服作り…
それも、飛び切り可愛い女の子の服作りだ。
そんな蒼空の渾身の1着を見る シエルの表情は忌々しげに歪められていた。
可愛シエル
ブツブツ言いながらゲーム機を 拾い上げたシエルは ゲーマーと呼んで問題ない。
冴内蒼空
早口で一息に言われた文句の意味は 理解できないまま 蒼空は口先だけの謝罪を繰り返した。
冴内蒼空
シエルはジト目になって 蒼空の顔を見上げると 諦めたようにのそのそと立ち上がり
パサ…
制服の上に着ていたセーターを脱ぎ捨てた。
冴内蒼空
蒼空は慌てて立ち上がると 椅子に服を乗せて部屋の外へと逃げ出した。
シエルはその背中を無表情で見送ってから 小さく笑みを溢した。
放課後、蒼空の部屋で二人。
ミシンとゲームのカタカタ鳴る音と 時折の会話。
これが二人の日常だ。
この話は、
見た目はまぁまぁ
成績もまぁまぁ
運動神経までもまぁまぁ
そんな冴えない 冴内蒼空 と
見た目は可憐で美しく
成績も学年上位を維持
スポーツまでもそつなくこなす
そんな可愛い 可愛シエル の
愛と青春の物語
(本当に?)