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カーテンを閉め切った暗い部屋
唯一の光源であるスマホの明かりが、ゆあんくんの瞳を冷たく照らしている
ゆあんくん
画面に映っているのは、ライブのオフショット
満面の笑みでピースをする「うり」は、ファンなら誰もが拝むような、完璧なファンサだった
ただの「ファン」だった頃の俺なら、これ一枚で一晩中幸せに浸れたはずなのに
ゆあんくん
指先で画面をなぞっても、冷たいガラスの感触しかしない
……何も、感じない
いや、胸の奥でどす黒い感情が、泥のように体温を奪っていく
ゆあんくん
今の俺が欲しいのは、ライブ用の完璧な笑顔なんかじゃない
脳裏にこびりついて離れないのは、昼間のリビング
ヒロくんに髪を触られて、少しだけ目を細めた、あの「無防備なうり」の横顔だ
ゆあんくん
スマホを裏返し、叩きつけるようにベッドに顔を沈める
…グループのメンバーとして、正体を隠して隣にいる
そんな「禁じ手」を使ってまで手に入れたかったのは、こんな、嫉妬で頭がおかしくなりそうな毎日だったのか?
ファンでいられたら、それでよかった
あいつを「神」として崇めていられたら、幸せだった
……そんな綺麗な言葉は、もう、灰になって消えてしまった
ゆあんくん
「わからせてやる」なんて
あんな傲慢な言葉で、一線を越えてしまった
正体を隠している自分への罪悪感と、あいつを独占したいという醜い欲
その板挟みで、もう、純粋な「ファン」を演じ続けることはできない
画面の中の「推し」は宇宙の果てにいるみたいに遠くて、 壁一枚隔てた隣にいる「あいつ」は、息が止まるほど近い
ゆあんくん
暗闇の中で、自分の右手だけが、熱を持ったように脈打っていた
うりの体温を直接知ってしまったこの手が、
もう「ただのファン」には戻れないのだと、残酷に告げていた