TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

迷惑な子ども達

一覧ページ

「迷惑な子ども達」のメインビジュアル

迷惑な子ども達

1 - 迷惑な子ども達

2019年04月30日

シェアするシェアする
報告する

弘樹

パパ!電車がきたよ!

5歳の弘樹が叫んだ

祐希

ボク、電車に乗るの初めて!

3歳の祐希は興奮気味だ

父親である一樹は息子二人と手をつなぎ、電車に乗り込んだ。

3人が乗ると同時にドアは閉まり、電車はすぐ発車した。

2人

しゅっぱーつ!!

大きな声で叫んだ2人の言葉はピタリと重なった

昼間のこの時間、乗客はまばらで、電車はすいていた。席も十分に空いている。

しかし、弘樹と祐希は、キャーキャーと甲高い声を上げながら電車の中を走り始め、落ち着いて席に座ることなど考えもしないようだ

その様子を見て、皆が「ほほえましい」と感じるわけがない。

その中に、露骨に不愉快そうな顔をした、1人の女性客がいた。その女性は頭痛持ちだった。

子ども達のはしゃぐ声を聞きながら女性は心の中で、毒づいた。

女性客

(ああ、あの声!頭がズキズキする。さっき一緒に乗って来たあの男が父親よね。下を向いたままで居眠りでもしてるのかしら。それとも寝たふり?子供に注意もしないでなんて無責任なの!)

弘樹

あ!海だ!ユウキ!海が見えるよ!

祐希

どこどこ?見えないよ、お兄ちゃん!

弘樹

ほら、また見えた!ここに乗って見なよ!向こうのほうに見えるから!

靴を履いたまま二人は座席で立ち上がる。

そこは、頭痛持ちの女性が座るすぐ横だった。

カーブで電車が大きく揺れる。

小さな二つの体もバランスをくずしてよろける。

女性客

キャッ

女性の白いスカートには、無残にも祐希の靴跡がくっきりと付いてしまった。

女性客

なにやってるの!

女性は、子どもではなく、寝たフリをしているであろう父親に向けてそう怒鳴ると、子供たちから遠く離れた席へと移動していった。

その様子を見ていたのが、品の良い老夫婦と、その夫である厳格そうな老紳士だった。

老夫婦

おやまぁ、かわいい坊や達が乗ってきたと思ってたけれど、2人とも元気すぎるわね。あなた

老紳士

子どもの問題ではない!あの父親が、きちんとしつけなくてはいけないだろうに、何をやっとるのか!?

父親

(どうしたらいいのか…。祐希と弘樹になんて言ったらいいんだ。こんな時弘美だったらどうするんだろう…)

周囲の声など耳に入る様子もなく、父親は、下を向いたままブツブツとつぶやいた。

老夫婦

まぁ、あなた!お兄ちゃんが向こうの座席に寝っ転がり始めましたよ。まあ、弟ちゃんまで真似をして…

老紳士が体を震わせながら立ち上がった

老紳士

一言いってやる!迷惑だけじゃなく、あの子達のためにもならん!自分の子供すらしつけれんとは、どうなっているんだ!

老夫婦

ちょっとあなた!

老紳士

おい!君はあの子達の父親だろ?なぜ何も言わず黙っているんだ!

父親

あ、すいません。そうですね考え事をしていて、子供達を見ていませんでした。気づかず、申し訳ございません……ちゃんと、話すべきなんでしょうね

老紳士

なんだと!まるで他人事だな!最近の親は自分の子供にきちんと話ができんのか!親として言うべきことはなんなんだ!親がそんなんだと不幸になるのは子供なんぞ!

父親は、力なく口を開いた

父親

そうですよね。親として、ちゃんと子供に言わなくてはいけませんよね?

老紳士

当たり前だろ?!何を言っとるか

父親

実は……

老紳士

実はなんだ?

父親

今朝、妻が…あの子達の母親が…亡くなったんです。それで、あのこ達なんでそれを伝えればいいかと考えあぐねて。なんて言えばいいか分からなくて……

老紳士

なっ……

予想外の展開に老紳士は言葉を失った

立ちつくす老紳士。

涙を目に浮かべうなでる父親

子どもたちが老紳士のところへ来て、

弘樹

パパを泣かすな!

祐希

パパをいじめるな!!

と、小さな拳で、老紳士の足を力いっぱい殴り付ける。しかし、老紳士は、足に痛みを感じなかった。ただ、殴られるたびに胸がえぐられるように痛んだ

老紳士

そうだったのか。お気の毒に…

もう、老紳士の顔からは怒りは消えていた

老紳士

それでも……君は父親なんだ

父親

は、はい

父親の目から涙がこぼれ落ちた

彼は立ち上がり、老紳士に向かって深々と頭をさげた。

老紳士は何も言わず、何度もうなずきながら妻の待つ席へと戻っていった。

父親

弘樹、祐希、皆さんに謝るんだ!

弘樹

ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした!

祐希

でした!

弘樹と祐希も父親の口まねをした

そして親子そろって頭を下げた。

改札口への階段を幼い兄弟は、はしゃぎながら下りていく

その後ろ姿を見つめながら、父親は大きく息を吸った

そして噛み締めるように自分に言い聞かせた。

父親

(弘樹と祐希を父親として全力で育てていこうそれがこれからの自分の役目なんだ。もし自分が死んで、妻の弘美が一人残されていたとしたら、きっと弘美もそう決意したに違いないのだから)
loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚