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だいふく
目を開けた瞬間、視界が歪んだ
痛みで、頭の奥がズキズキと脈打つ
身体はまるで別人のものみたいに重く、腕も脚も、思うように動かない
……なんだ……これ……
ソファの革が肌にくっついて、汗と涙と、血の気配がまだ残っていた
吐き気が込み上げてくる。喉がひりついて、声も出ない
脚を動かそうとした瞬間――腰に鋭い痛みが走った
麗央
呻き声が勝手に漏れる
脚の付け根、太腿、背中、どこもかしこも痣だらけ。中も外も、火傷のように熱を持っている
動けねぇ……っ
震える指先でソファの肘掛けに触れた
だがその体勢のまま、起き上がることすらできない
どれだけ時間が経ったのかわからない
ふと、物音がして、誰かの足音が近づいてくる
零斗
聞き慣れた声。零斗だ
零斗
零斗
言いながら、ふっとしゃがみ込む
その視線が、まるで仔猫でも見るかのように優しくて――ぞっとする
零斗
そう言うと、零斗は躊躇なく麗央の身体に手を入れた
腰と膝の下に腕を差し込まれ、ぐいっと持ち上げられる
麗央
身体中がギシギシと軋み、息が詰まった
零斗
からかうように笑いながらも、零斗の手つきは妙に優しい
しっかりと支えながら、お姫様抱っこの姿勢で立ち上がる
朔矢
朔矢
後ろから、朔矢が笑いながらやってくる
だがその視線も、昨日のそれとは少し違う
どこか“満足した飼い主”みたいな、落ち着いた色を帯びていた
朔矢
朔矢
蓮
蓮が静かに言いながら、タオルと水を差し出してくる
麗央はその光景を、まるで夢みたいにぼんやりと見つめていた
蓮
蓮
零斗の胸元で揺られながら、麗央は小さく息を吐く
なんなんだよ……
昨夜との落差が、怖かった
優しくされるほど、またいつ壊されるのかがわからなくなって、心の奥が震えた
だけど――腕の中は、あたたかかった
そして、そのぬくもりは、“逃がす気がない”という宣言のようでもあった
零斗
脱衣所まで抱えられたまま運ばれ、零斗にそう言われる
けれど、麗央はかすかに首を振った
羞恥と警戒が、全身に張り付いている
見られたくない……触られたくない……
麗央
零斗
そう言われても、確かに立てそうにない
一晩中まともに眠れていない身体は、熱と怠さに包まれている
思い出すのも嫌な感触が、下半身にまだ残っていた
零斗
囁く声がやけに優しい
その柔らかさが逆に怖かった
零斗がシャツを捲り、下着ごと脱がせようとした瞬間、麗央の身体がびくんと跳ねる
麗央
零斗
嘲るように言いながらも、零斗の動きは手慣れていた
乱暴ではなく、だが容赦もない
ずるりと布が剥がされ、痣だらけの肌が露わになる
太腿の内側には赤黒く残った指の跡、背中には擦れたような傷、首筋には噛み跡
身体中が、昨夜の“証拠”で埋め尽くされていた
零斗
後ろから、朔矢が笑いながら風呂場に入ってくる
零斗
朔矢
朔矢
零斗はため息をついて、麗央の身体をそっと抱き上げると、そのまま浴室に足を踏み入れた
湯気に包まれた空間に、柔らかな照明が差していた
けれどそのあたたかさが、どこか不気味に思える
零斗
麗央
零斗
案の定、身体が動かず、麗央は零斗の手に身を任せるしかなかった
ぬるめの湯で濡らされたタオルが、肩に触れるたびにぴくりと身をすくめる
零斗
そう言いながら、零斗は腕、胸、腹、脚――そして太腿の内側へと、ゆっくりタオルを滑らせる
麗央
零斗
零斗
無神経に聞こえる言葉
けれど口調は妙に優しくて、逆に心が削がれていく
なんで、こいつら……こんなに普通にしてんだよ……
涙がまたこみ上げそうになるのを、歯を食いしばって堪えた
風呂から上がると、用意されていたバスローブのようなものを羽織らされた
そのまま零斗に抱えられ、リビングのソファに戻される
龍牙
蓮
蓮が差し出した救急箱の中から、龍牙が無言で軟膏とガーゼを取り出す
そして、何も言わずに麗央の脚を軽く開かせた
麗央
龍牙
無表情のまま、手早く塗布されていく
ひりつく患部に冷たい薬が触れるたび、思わず身をよじる
朔矢
朔矢がそう言って、わざとらしく笑う
朔矢
朔矢
そう言われた瞬間、ぞっとする寒気が背中を走った
もう……逃げられねぇ
湯で温まった身体は、逆に意識をはっきりさせていく
痛みも、羞恥も、薬の匂いも――全部が、現実だった
そして彼らの「優しさ」が、どれほど歪んでいるかを、ようやく思い知らされる
だいふく
だいふく