テラーノベル
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沈黙が落ちた。 泡立て器の音も, 換気扇の低い唸りも, 今はやけに遠く感じる。
康平は蓮音の返事を待ったまま, 何も言わずにボウルを置いた
康平
その言葉は,やはり優しかった。 逃げ道を用意している つもりなのだろう。
蓮音は視線を落としたまま, 指先を強く握る。
蓮音
そうじゃない
無理に言わせないで ほしいのではない。 無理に考えさせないでほしい。
蓮音
呼びかけた声が, 思ったより低く出た
康平は,少しだけ 驚いたようにこちらを見る。 名前を呼ばれること自体は, もう珍しくないはずなのに。
康平
その一言が,近い。
距離が,物理的にではなく, 意識の上で縮まる。
蓮音は, 喉の奥がひりつくのを感じながら、 それでも言葉を探した。
蓮音
蓮音
蓮音
康平は一瞬考えるような顔をして それから苦笑した。
康平
蓮音
康平
そう言って, 特に気にした様子もなく 肩をすくめる
──やっぱり
分かっていない。
この人は, 自分がどんな距離感で, どんな目で見られているのか, 本当に分かっていない。
蓮音
声が,わずかに震えた
康平は, その変化にようやく気づいたのか, 視線を連音の顔に戻す。
康平
その呼び方。
胸の奥が、きゅっと縮む。
蓮音は, もう一歩も引けない場所に 立っていることを, はっきりと自覚した。
蓮音
蓮音
蓮音
そう言ったのは, 逃げでも嘘でもなく, 最後の踏みとどまりだった
康平は,その言葉を信じてしまう
康平
そう言って, いつもの距離に戻ろうとする
その背中を見た瞬間, 蓮音は はっきりと理解した。
──このままじゃ,壊れる
壊れるのは, 関係か,自分か, たぶんその両方だ。
蓮音は深く息を吸った。 そして,自分でも驚くほど, 静かな声で言った。
蓮音
康平が振り返る。
康平
蓮音
この関係が もう後戻りできない地点に来た 最初の合図だった。
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