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とある物書きの挑戦譚【第二期】

第15話 - セオドアの帰国

415

2021年12月13日

#ファンタジー

#転生

#転生モノ

#創作

#異世界転生

#一次創作

セシル

クリジアまでもうすぐだな。

セシル

休憩にここを利用して良かった。

モブ

そうですね、セシル様。

モブ

別の同盟国の様子も確認できますし、何よりここは民のもてなしが素晴らしいです。

セシル

ああ。

セシル

む、

セシル

セオドアはどこだ？

モブ

セオドア様は船の上ですよ。

モブ

よほど船が好きなのでしょうね…昨日も酒を飲まず窓の奥にある海を見てましたから。

セオドア

…。

セシル

…。

セシル

ふっ、

セシル

よほど、ベルとの結婚が待ち遠しいようだ。

セシル

お前ら、そろそろ乗るぞ。

モブ

はっ！

子供

お兄ちゃん、砂のお山作って〜！

子供

いいよ！海まで競走だー！

子供

きゃー！

セシル

！

子供

見てお姉ちゃん！お船がある！

子供

本当だ！…行ってみよう！

セシル

…。

ザッザッザッザッ

セオドア

！…

子供

ねぇ！誰か乗ってるよ！

子供

おーい！

子供

どこからきたのー？

子供

おーい！おーい！

子供達がセオドアに向かって手を振る。

セオドア

…。

セオドア

ふふ。

セオドアが子供達に向かって手を振る。

子供

あ！手振った！

子供

こんにちはー！

キャッキャッ

セシル

…。

セシル

おい。

セシル

お前とお前、足に自信はあるか？

モブ

はっ…？

セシル

あの愚民を殺せ。

モブ

！？…

セシル

聞こえなかったのか？

セシル

殺せ。

モブ

か、

モブ

かしこまりましたっ！！

子供

このおふね、おっきいねぇ！

子供

どこから来たのー？

セオドア

ふふっ…かわいいな。

セオドア

！…

セオドアが部下の姿に気づく

セオドア

ッ…！？

セオドア

おい！逃げろ！

セオドア

殺されるぞ！

子供

なんかいってるー！

子供

なんてー？

セオドア

逃げろ！早く！

セオドア

早く逃げるんだ！

子供

！？

子供

ひゃっ！

モブ

死ねェ！ガキ共ッ！

ザシュッ！

セオドア

はっ…。

モブ

セシル様、この死体はどうされますか？

セシル

そのままにしておけ。

セシル

行くぞ。

モブ

はっ。

セオドア

ッ……。

ダッ！（セオドアがセシルに駆け寄る）

セオドア

父さん！

セシル

なんだセオドア。

セシル

休憩はもう終わりだぞ。

セオドア

そんなことはどうでもいいです。

セオドア

なぜ子供を切り殺したのですか！

セシル

ギリカール人に向かって馴れ馴れしく話しかけたからだ。

セシル

我らは清きギリカール人だ、子供だろうとなんだろうと無礼な行為は許されない。

セオドア

！…

セオドア

…僕は無礼な行為だとは思いませんでしたよ。

セオドア

あの子供達は船と僕に興味を持っていただけです。

セオドア

殺す必要はなかったのではないですか？

セシル

…。

セシル

セオドア、

シュッ！（セシルが短剣を抜きセオドアの顔面に突きつける）

セシル

お前は俺が間違っていると言いたいのか。

セオドア

！？

セシル

なんて親不孝な奴なんだ。

セシル

俺はお前の親である以前にギリカールの外交大臣だぞ？

セシル

補助官風情のお前が口出しできる相手じゃないってことがまだ分からないのか。

セシル

いいか

セシル

俺が正しいと言ったことは全て正しいのだ。

セシル

お前には俺の考えを否定する立場も、権利も、力も全く存在しない。

セシル

身の程を知れ、ガキが。

セシル

おいお前ら！

モブ

は、はい！

セシル

セオドアに重りをつけて海に突き落とせ。

モブ

！？

セオドア

！

セオドア

と、父さん…！

セシル

コイツは俺の考えを否定したんだ。

セシル

こんなガキが死んだところで問題はない。今すぐ落とせ。

モブ

は…はっ！

セオドア

！

セオドア

やっ…

セオドア

も、申し訳ございません！

セオドア

許してください！

セオドア

僕が全て間違っていました！あんな愚民、さっさと死んだ方が良かったんです！

セオドア

僕は非常に愚かでした！浅はかでした！

セオドア

もう二度と刃向かいません！だから…どうかそれだけは！！

セオドア

海に落とすのだけは…ッ！

セシル

…。

セシル

…はぁ、

セシル

気分が変わった、重りを外してやれ。

モブ

はっ

セオドア

…！

セシル

今回だけ特別に許してやる。

セシル

城に着くまで隅で反省してろ。

セオドア

はい…。

セオドア

誠に申し訳ございませんでした…。

セシル

フン、

セシル

お前ら、城に着くまで一切セオドアと口を聞くな。いいな？

モブ

はっ！

モブ

かしこまりました！

数日後ルシタス城では…

シゼ

！

シゼ

アレンとアークから手紙だ…！

シゼ

早速見てみよう。

ペラッ

シゼ・ノーディン様へ

こんにちは。お元気ですか？アレンです。

お嬢様、お城での生活はいかがですか？

誰かにいじめられてはいませんか？ご飯はしっかり食べていますか？

以前教えてくださった2人のお友達とはうまくやれていますか？

お嬢様が猫のぬいぐるみを持って私達とお別れしてから、はや数週間が過ぎました。

あの日からお嬢様のお部屋は来客用の部屋になり、私は寂しさに押しつぶされました。

小さな可愛いお嬢様がお一人でおじいさまのために、恐ろしいお城でお仕事をするなんて… 今でもお城に飛び込んでいきたい気持ちです。

でも、そんなことをすると捕まっちゃうので

　お嬢様を信じて頑張って働いて待つことにしています。

お嬢様、

どれだけ離れてても私はお嬢様の味方ですからね！

シゼ

アレン…。

あ、そういえば

届いたお金はきちんと私がおじいさまがいらっしゃる病院に渡しました。大変感謝されておりましたよ！

シゼ

！

シゼ

（よかった、ちゃんと届いたんだ…！）

シゼ

（大金を送るからギリカールの役人に怪しまれないか不安だったけど安心した…）

シゼ

（破壊神さんが特殊な魔法でもかけてたのかな…。）

もし、帰ることができたとしたらすぐにおじいさまの元へ会いに行きましょう。私がご一緒します！

このアレンは、ずっとずっとお嬢様が帰られるのを待っていますから

どうかお元気でお過ごしください。

だんだんと肌寒くなってきているのであったかくして寝るんですよ。

アレン

シゼ

（アレン…相変わらずあったかいお手紙だったな。）

シゼ

（読みながらおうちに帰りたくなってきた…。）

シゼ

！

シゼ

（もう一枚入ってる、アークからだ！）

ペラッ

こんにちはお嬢様。アークです。

最近寒くなってきましたね。お体は平気ですか？

今、私は支店の責任者から長男様の秘書を務めています。

長男様は血こそ繋がってはいないものの、カタリナ様の意志を継ぎ店の経営を頑張っておられます。

また、よくお嬢様の昔話を聞いてきますよ。

どうやら長男様もお嬢様のことを大切に思っているみたいです。

無論、 1番思っているのは私ですけどね。

シゼ

！…

シゼ

ふふっ…。

さて、

改めましてお嬢様、この間はおじいさまへの治療費を送ってくださりありがとうございました。

…しかし、恐れながら私はお嬢様に対してある不安があります。

シゼ

？…

おじいさまの治療費はクリジア人というのもあり、とても高額でした。

一体どんなお仕事をしてこんな大金をお稼ぎになったのですか？

まさか、危ない仕事をしたのではないでしょうね…？

シゼ

！…

シゼ

（やばい、城に行ってすぐにお金を送ったから、怪しまれてる…）

シゼ

…。

シゼ

（申し訳ないけど、無視しよう。）

お嬢様、

例え危なく汚い仕事をしたとしても、心はカタリナ様のようにまっさらで美しくあってください。

悪しき心になってはいけません。それでは、お返事お待ちしております。

アーク

シゼ

アーク…。

シゼ

（美しく生きてみせるよ、絶対に。）

シゼ

早速返事を書いて送ろう

シゼ

…と、言いたいところだけど

シゼ

まずはマリアの部屋の掃除をしなきゃ…。

シゼ

失礼します。

シゼ

マリア様ー、お部屋を掃除しにきましたよ。

マリア

ア゛ア゛ァァアァァァアア゛ア゛ッ！

シゼ

！？

マリア

いやぁぁァッ！そんな！

マリア

ﾋｷﾞｬｧｧｧァアｧｧｱｧｧ！！

シゼ

…。

シゼ

(((マリアがアレンみたいになってる)))

シゼ

ど、

シゼ

どうしたんですか？マリア様

マリア

はっ…

マリア

はっ…はぁ…はぁ…

マリア

よ…

シゼ

よ？

マリア

読み進めてた本の受けと攻めの間に…女が割り込んできたぁぁぁあ！！

マリア

ァァアァァァアアアア！！

シゼ

…。

シゼ

（やれやれ、）

シゼ

（また“地雷”を踏んだのか…。）

マリア

なんで！なんでなのよ！

マリア

見て分かりなさいよ！彼らはもう付き合ってるのよ！

マリア

仲良しなんてレベルじゃない！もう恋なのよ！彼らはもうお互いの体じゃなきゃだめになってるの！

マリア

貴方が出なくても、彼らは満たされてるの！

マリア

愛されヒロインなんて聞いてないわ！

マリア

こんなの…私の求めていた展開じゃない！

マリア

…私は

マリア

私は信じてたのに！

マリア

この本が…

マリア

わんこ攻め×お兄さん受けの尊さを証明してくれるって私は信じてたのに…！

マリア

騙された！

マリア

うわぁぁんっ！

マリア

シゼ〜ッ！

シゼ

…。

シゼ

おぉよしよし、

シゼ

怖かったですねー。

マリア

怖かったぁ…。

マリア

でも、どうしよう…。

マリア

私の好きな展開だと思って、たくさん借りちゃったわ…。

マリア

来週から謹慎週間っていうのに、折角な暇つぶしが地雷だなんて…。

シゼ

！

シゼ

謹慎、習慣…？

マリア

あら、聞いてないの？

マリア

ローゼ様の命令で、私とシゼはこれから1週間お部屋で引きこもってないといけないのよ。

シゼ

えっ、

シゼ

（1週間も…！？）

シゼ

それは…一体なぜですか？

マリア

セオドア様とベル様の結婚式があるからよ。

マリア

セオドア様のお父様が邪魔者の気配を消して清潔な状態で行いたいっておっしゃったの。

シゼ

えぇ…

シゼ

私達、結婚式に招待されてませんよね…？

マリア

ええ、もちろんよ。

マリア

さらに言えば、式はルシタス城から遠く離れたギリカールの首都で行うらしいわ。

シゼ

え…っ！

シゼ

（なにそれ…クリジア人の気配がない場所じゃん！私達が謹慎する必要なくない！？）

シゼ

…ず、

シゼ

随分とむちゃくちゃな理由ですね…。

マリア

まぁね…。

マリア

でも相手はギリカールの外交大臣よ。

マリア

従うしかないわ。

シゼ

えぇ…

シゼ

…図書室で1週間分の本を借りてきます。

マリア

私の分もお願いしていいかしら。とびっきり刺激の強いヤツが読みたいわ。

シゼ

わかりました…。

シゼ

これと…あれを借りて

シゼ

マリアにはこれとこれを…

シゼ

おっ！

シゼ

「第三者から見たクリジアの繁栄と滅亡　第5巻」がある…！

シゼ

歴史の勉強になりそうだし、これも持っていこっと…。

シゼ

んっ…！

本に手を伸ばす

シゼ

く…っ！

シゼ

（届かないか…あと少しなんだけどな…。）

シゼ

んん…！

シゼ

…はぁ、

シゼ

（だめだ。）

シゼ

（椅子を持ってこよっと…）

とんとん、（誰かがシゼの背中をタッチする）

シゼ。

シゼ

？

シゼ

！

シゼ

セオドア様…！？

セオドア

なんの本が欲しいの？僕が取るよ。

シゼ

！

シゼ

あ、えっと…。

シゼ

では、この「第三者から見たクリジアの繁栄と滅亡　第5巻」を取っていただけますか？

セオドア

わかった。

セオドア

はい。

シゼ

ありがとうございます。

シゼ

…お帰りになられてたんですね。

セオドア

うん。

セオドア

さっき帰ったばかりなんだ。

セオドア

久しぶりだね、シゼ・ノーディン。

シゼ

はい、お久しぶりです。

セオドア

元気にしてた？

セオドア

あの時みたいに変なおじさんに追いかけられたりしなかった？

シゼ

はい、大丈夫です。

セオドア

本当に？大丈夫？

シゼ

はい。ﾆｺｯ

セオドア

そっか…よかった。

セオドア

…本当によかった。

シゼ

？…

セオドア

…ところで、

セオドア

それ、ノーディンが読むの？

シゼ

？…はい。

セオドア

すごいな…。

セオドア

確か君は16歳なんだよね？

シゼ

はい…。

シゼ

（中身は25歳だなんて言えない…。）

セオドア

すごいね…若いのにクリジアの歴史に興味があるなんて、

セオドア

賢い。

シゼ

いやいや、そんなことないですよ。

シゼ

そういえば、セオドア様はどうしてここへ…？

シゼ

ここはクリジア人専用図書館のはずですが…。

セオドア

！

セオドア

あー…その、

セオドア

シゼの姿を見たから…久しぶりだなと思って。

セオドア

気づいたら、入っちゃった。ﾆｺｯ

シゼ

そうなのですか…。

シゼ

（相変わらずかっこいいな…）

シゼ

（前世でもこんなに美しい顔をした人いなかった気がする。）

シゼ

早く出たほうがよろしいのではないですか？

シゼ

もし、ベル様の関係者に見つかったら…。

セオドア

！…

セオドア

ベルに？

シゼ

はい。

シゼ

折角、ご結婚されるんですから、修羅場になりそうな状況は避けないと幸せが減っちゃいます…。

セオドア

！…。

セオドア

幸せ…？

セオドア

シゼには僕が幸せに見えるの？

シゼ

えっ？

セオドア

シゼにも、僕は幸せに見える？

シゼ

？…

シゼ

（えっ…どういうこと？）

シゼ

…幸せなのでは、ないですか？

セオドア

…。

セオドア

……。

セオドア

…僕は……

セオドア

…ううん。

セオドア

僕は幸せだよ。

シゼ

！…

セオドア

執事は僕の将来を期待してくれるし、

セオドア

お金だって困ってない、

セオドア

ご飯も美味しいし、みんなお祝いしてくれるし…とても優秀な家の女性と結婚できる。

セオドア

うん…。

セオドア

僕は、幸せだ。

セオドア

幸せであるべきなんだ。

シゼ

？、

シゼ

（セオドアの顔…どこか暗い感じがするんだけど、気のせいかな。）

シゼ

（それに声も…）

シゼ

（私に聞かせる、というより）

シゼ

（自分に言い聞かせてるみたいな…。）

シゼ

セ、

シゼ

セオドア様…？

セオドア

ｸｽｯ…。

セオドア

ごめんごめん。

セオドア

変なこと言って困らせちゃったね。

セオドア

緊張してるんだ、僕。

セオドア

じゃあ、

セオドア

もう行くね。

シゼ

！

シゼ

あっ、

シゼ

ちょっと待ってください！

セオドア

？

シゼ

（折角だから、あの質問を…！）

シゼ

セオドア様は、クマイド・カーリアという王子様について何かご存知ですか？

セオドア

？…

セオドア

クマイド・カーリア？

セオドア

まだ若いのによく知ってるね。

セオドア

クマイド・カーリアは敵国、ツルキスの王子様だよ。

セオドア

とっても怖い王子様でね、今から数年前の戦争で当時のギリカールの軍事大将の首を切り、

セオドア

死体を市民に見せびらかしながら城に入ったという話があるんだ。

セオドア

…奴は、悪魔だよ。

シゼ

ひぇっ…。

セオドア

彼について調べることは、あまりおすすめしないかな。

シゼ

そ…そうですね。

シゼ

これ以上調べると、怖くて眠れなくなる気がします。

セオドア

ふっ、

セオドア

うん。それがいいよ。

セオドア

じゃあね、シゼ。

シゼ

はい。

シゼ

お幸せに…セオドア様！

セオドア

うん。

セオドア

…。

それから1週間後、

セオドア・レティオールはベルという女性と結婚しました。

式場では沢山の人が彼らを祝い

とっても賑やかだったといいます。

しかし彼は知りませんでした。

この結婚の裏には…

とんでもない秘密が隠されていたのです。

15話　おわり

とある物書きの挑戦譚【第二期】

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415

9件

連日更新ありがとうございます！！！😭 セオドア様がかなり苦労人ですね……心の中でずっと応援してました。マリア様の「受け女攻め地雷事件」も凄い分かります……… 流石マリア様…と感嘆の声を漏らしました笑

プロフィール

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