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里志は今宵『静』の中に眠っていた、愛夜子の『動』激しさに触れ、体中が心地よく痺れた。
この間のようにバスルームで二人は大切にし合った。
*
――――ベートーヴェンの『エリーゼのために』が愛夜子に聴こえる。 里志と一緒に高みへと達した愛夜子は振り返り、里志に抱きつく。 愛夜子がシャワーを開けると色とりどりの花びらが降り注いだ。里志と愛夜子は互いを撫で合う。
*
手を繋ぎ、バスタブにいざなう愛夜子。 向かい合わせで、愛夜子は里志の膝に乗った。
愛夜子
里志
愛夜子
里志は愛夜子の瞳を黙って見つめ頷いた。
気が遠くなる程里志に抱きしめられる。
愛夜子
切ない表情の里志。
里志
愛夜子
下を向き暫く押し黙り、口にした。
愛夜子
里志には望子が浮かんだ。仕事がバリバリ出来る望子。情に厚い望子。胸が苦しくなって来た。愛夜子だって必死で生きている。
オレは、愛夜子と一緒にいたい
それは、望子がキャリアウーマンでしっかり者だから、ではない。ただ、愛夜子と一緒にいたい、それだけだ。
愛夜子
愛夜子が向かい合ったままお湯の中で、里志の左肩にもたれかかる。
里志
***
二人は絡み合い、もつれ合い重なり、転がって水飴のようになった。 境い目など無い。 嬉しさと悲しさに、手を繋ぎ瞳を閉じている。
あたしだけの里志!
オレは……望子と別れよう
二人、同じタイミングで横を向き、パズルがハマるかのごとく抱き合った。
愛夜子
里志は愛夜子を抱き寄せ言った。
里志
愛夜子
里志の首に手を回し抱きつく愛夜子。
愛夜子
里志
と言って里志は黙ってしまった。
愛夜子
愛夜子が擦り寄る。
里志
愛夜子
里志
愛夜子は里志の心の葛藤を無論お見通しだ。 逢う日などすべて、里志に合わせようと考えるし、今の恋人と切れるのも簡単ではないのだろうと半ば黙認した。
愛夜子
あさっては日曜日だ。
里志
愛夜子
すると新しい名刺にメモをし始める愛夜子。
愛夜子
メモした名刺を里志に両手でそっと差し出す愛夜子。
里志
里志は大事そうに手に取り、目を通した。
そこには住所が。
愛夜子
里志
愛夜子
里志の腕に絡みつき子どものように喜ぶ愛夜子。
里志
愛夜子が可愛くて仕方のない里志。
***
今日の愛夜子は炎のようでもあり、煌々とした光を放つ真珠のようでもあった。
愛夜子
里志
愛夜子
里志
愛夜子
――――帰宅し、望子に別れ話、しないとな
と暗い気分になる里志。
***
帰宅した里志。 夜8時。もう望子は帰っているだろう。 3回のコール音で望子が電話に出た。
望子
里志
望子
……言葉に詰まる里志。
望子
里志
望子
里志の言いたいことを感じ取る望子。そして望子ははっきりと言った。
望子
里志
望子
声を荒げる望子。
里志は深呼吸をした。そして言った。
里志
望子
里志
望子
それもそうだな、と考える里志。
里志
望子は言葉を失う。それは束の間ですぐに怒り始めた。
望子
里志
望子
里志は黙っている。
望子
耳を疑う里志。
里志
望子
里志はさらに胸が辛くなって来た。
子どもを捨てるなど、オレに出来るか?
里志
自分はなんて酷い奴なんだと悲しくなる里志。
望子
里志
望子
ガチャリ。 望子が一方的に電話を切った。
里志は、絶望的な気分になった。 だが、苦しめば苦しむほど、愛夜子を求めた。愛夜子との優しい時間が恋しい。
――――そして翌日。
状況、気持ちは最悪だが、仕事を投げ出すわけには行かない。 今日も必死で塗装作業にいそしむ里志。
塚本
先輩の塚本が作業に打ち込む里志に声を掛けて来た。
里志
塚本
一瞬ペンキのついた刷毛を止めた里志だったが、振り切るかのようすぐに作業を続行した。
塚本
刷毛を置く里志。
里志
塚本
里志は悩みに悩み、出口を探していた。
里志
***
――――居酒屋のテーブル席で塚本と向かい合わせの里志。
やって来た瓶ビールを塚本のグラスに注ごうとした。
塚本
里志
穏やかな表情でうんうんと頷く塚本。
塚本
里志
塚本
里志
少し不快な表情の里志。
塚本
しかし里志は、塚本の言うことがあながち間違いではないような気はしている。 儚げでありながら、熱い芯を持っている。芯がありながらも危ういムードの愛夜子のことを……。
里志は、なにもかも含め、そんな愛夜子が好きだ。
塚本
里志
里志は、昔から自分を可愛がってくれている塚本を非常に信頼している。一見おチャラけて見えるがとても誠実な男だ。
塚本
里志
グイッとビールを飲み干す里志。
塚本
心配そうに耳を傾ける塚本。
里志
塚本
里志
タバコに火をつけ、黙っている塚本。煙がしみたような表情をする。
塚本
ビールをあおる里志。
塚本
里志
塚本
里志
束の間タバコの煙をくゆらせた後
塚本
と塚本。
里志は、塚本に相談をしたかったわけではない。 かといって背中を押して欲しかったのかと言われればそうでもない。
ただ、押し黙っておくのが耐え切れなかった。 どこかへ打ち明けなければ立ち上がれなかった。
自分の弱さを思い知る里志。
塚本
居酒屋を出た時、塚本は里志の肩を軽く叩いた。
里志
塚本と別れた後、里志はスマホを取り出した。 望子からの着信履歴は無い。そして愛夜子からも連絡は無かった。
望子は明日仕事だ。 身重の望子を放って、愛夜子に逢いに行く自分。
里志は苦悩した。 だが、誘惑に負けたのではない、言い訳なんかじゃない。 何度も何度も考えた。 愛夜子と共に過ごすのはさだめのような、自然の理だと感じられてならない。 里志は真面目に、一人の女性しか愛せないという答えに辿り着いた。