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お嬢
7
HISAKI𓃠
4
31
光が消え、再び訪れた最初の暗闇
戻ってきた俺は、その場に膝をついて激しく肩を震わせていた
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
相棒を遺してきた悲しさと寂しさが一気に溢れ出し、俺は声を上げて泣きじゃくる
その姿を、小さな男の子の天使はどこか寂しげに見守っていた
やがて涙を拭い、まだ震える足で立ち上がった俺に、天使がフワリと近づく
天使
天使
ゆあんくん
ゆあんくん
天使
天使
場面は変わり、シェアハウスのえとさんの部屋
ベッドの上で膝を抱え、えとさんはじっとスマホの画面を見つめていた
映っているのは、生前の賑やかなチャット履歴
俺のバカなボケに、えとさんがキツめのツッコミを入れている画面だ
えと
えと
そんなえとさんの前に立ち、俺は「えとさん!」と叫ぶが、当然声は届かない
俺は「なぁ、今回も声を届けてくれよ!」と頼むが、天使は「やだね〜。あれは最初だけの特別サービス。未練は君自身の力で晴らしてね〜?」と、冷たく突き放す
物は触れない
声も届かない
俺は悔しそうに拳を握るが、ふと、えとさんの机の上にあるからぴちのミニフィギュアが目に入る
生前、えとさんの部屋に遊びにきた時、俺は自分のフィギュアとえとさんのフィギュアを向かい合わせに並べて、よく悪戯っぽく遊んでいた
ゆあんくん
俺は愛おしそうに、机の上のフィギュアへとふと手を伸ばした
その瞬間
触れられないはずの手が、想いの強さによって
ーー一瞬だけ、実体を持ってフィギュアに当たった
カチャッ……と、2つの人形が不自然に向かい合わせに動く
えと
風もないのに動いた、自分とゆあんくんのフィギュア
えとはハッとして机を見つめる
不審に思うよりも先に、えとの脳裏に、いつもこうやってフィギュアを並べてニシシと笑っていたゆあんの悪戯っぽい笑顔が浮かんだ
えと
えと
えと
誰もいない空間に向かって、ボロボロと大きな涙をこぼしながら微笑むえと
自分の気配に気づいてくれたえとさんを見て、俺の瞳からも涙が溢れ出す
俺はえとさんの正面に立ち、涙を溜めながらも、いつものような悪戯っぽい笑みを浮かべた
そして、前を向いて力強く、何もない空間へ拳を突き出す
えとさんの目に、俺の姿は見えていない
けれど、目の前の空気がフワリと揺れた気がした
いつも隣で悪ガキみたいに笑っていた、あいつの気配が確かにそこにある
えと
えとさんは涙を拭い、俺と全く同じ、負けず嫌いな悪戯っぽい笑みを浮かべた
そして、俺が拳を突き出しているであろう、何もない空間へ向かって力強く拳を突き出した
――コツン
触れ合わないはずの空間で、2人の拳の軌道が、吸い寄せられるようにぴったりと重なった
えとさんは愛おしそうに目を細め、掠れた声で呟く
えと
えと
えと
ゆあんくん
ゆあんくん
ゆあんくん
感謝が伝わった瞬間、俺の身体は「膝のあたり」までサラサラと金色の粒子になって消え始める
それを見た天使は「はい、時間切れ〜」とパチンと指を鳴らした
涙を溜めながらも、最高の悪戯っぽい笑顔でグータッチを交わしたえとさんの姿を目に焼き付けながら
俺は再びあの最初の暗闇へと引き戻されていった
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