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素晴らしい作品です。
やっぱり面白いですね!!
時刻は10時45分
ヴィクターが車を停めたのは、以前伺ったキャサリン・オマーの邸宅前だった。
ヴィクターは車から降りると、少しの間じっと耳をそばだててから、
拳銃に弾が込められているのを確認し、忍び足で屋敷に足を踏み入れた。
遡ること30分前…。
ヴィクターの携帯に、キャサリン・オマーから電話が入った。
キャサリン
ヴィクター
初対面の際、刑事の訪問を子どものようにはしゃいで迎えた彼女が、
明らかに緊迫した口調で震えているのをヴィクターは瞬時に理解し顔が強張った。
ヴィクター
キャサリン
キャサリン
キャサリン
ヴィクター
ヴィクター
電話越しから荒い息づかいと聞き取り辛い言葉をボソボソと呟くキャサリン。
よほど恐怖に怯えているのだろう。
ヴィクター
ヴィクターはあえて強めに問うと、キャサリンはようやく震える口を動かした。
キャサリン
ヴィクター
ヴィクター
キャサリン
奥からなにかが暴れるような音がした後、
電話は切れてしまった。
フランクリン警部に事情を説明し、キャサリン・オマーの邸宅に着いたヴィクターは、
まだ潜んでいるかもしれぬ殺人犯に注意しながら中へ忍び込んだ。
ヴィクター
部屋の中は真っ暗だった。
ヴィクターは持参した懐中電灯の明かりを点け、豪華な室内を見回した。
いつかキャサリンと話をしたリビングの机の上には、飲みかけのワインが置かれていた。
二つのワイングラスにそれぞれ、微量のワインが残されている。
ヴィクター
ヴィクター
犯人は顔見知りか?という疑惑が脳裏を過ったが、まずはキャサリンを探さねば。
ヴィクター
ヴィクターはまだいるかもしれぬ得体の知れない殺人犯の存在に注意しつつ、
ワインセラーの場所を探した。
忍び足で歩を進めながらヴィクターはここで話をしたときのことを振り返った。
そして、ワインを取りに行くと言って立ち上がったキャサリンが向かった先を思い出し、
その方向へ足を進めた。
ヴィクター
レンガ調の壁に囲まれた小部屋の奥に地下へ通じる階段が見付かった。
木製のハッチは普段、南京錠で施錠しつあることが一目で分かった。
南京錠が見当たらないところを見ると、キャサリンが持っているのだろうか?
ヴィクターは足元を照らしながら、ゆっくりと地下へ通じる階段を降りた。
ワインセラーは想像よりも狭いが、豊富な種類のワインボトルがセラーに揃っていた。
これが仕事でなければじっくり観察したいところだが、そんな場合ではない。
ヴィクターはゆっくりとセラー内部に明かりを回りながら照らした。
ヴィクター
ヴィクターの視線が一点に絞られた。
キャサリンの姿は何処にもない。
しかし、彼が今照らしている光の中にあるのは世にも不気味なモノだった。
寝かすように置けるワインセラーには数多くのワインが保管されている。
ただ…ヴィクターの目に入ったセラーに寝かされてあるのはワインではない。
人間の腕だった。
こちら側を見上げるように斜め上に上がった手とは反対の奥には、
独特の鉄分の臭いを発しながら生々しい血がセラーの隙間から流れていた。
もう一つ、ヴィクターの目を引き付けたのがもう人の力で動くことのない手が握っている、
一輪の薔薇だった。
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクターはこの事件に薔薇がどう関係しているのだろうか?と、しばし考え込んだ。
それが過ちだった。
不意に、扉がバタンッと閉まる音が聞こえた。
唐突の出来事に驚いたヴィクターの耳にまた別のガチャッという音が聞こえた。
慌てたヴィクターにもそれが南京錠で施錠された際の音と瞬時に判断出来た。
完全に閉じ込められてしまった。
ハッチの扉越しに誰かが走り去る音が聞こえたが、なすすべもなく顔を歪めた。
無論、南京錠の掛けられた扉はびくともせず、ヴィクターは文字通り監禁状態に陥った。
ヴィクターは携帯を取り出し、幸い通話が可能と知りフランクリンに連絡を入れた。
事態を把握したフランクリン警部の指示で刑事が動員され、ヴィクターは救出された。
監禁されてからわずか約30分後のことだった。
ワインセラーから人間(女性)の腕が発見されたこともあり、現場は騒然となった。
助け出されたヴィクターは別室で額に手を当て、落胆した様子で座っていた。
フランクリン
フランクリン
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクター
フランクリン
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクター
フランクリン
フランクリン
フランクリン
ヴィクター
ヴィクター
ヴィクター
フランクリン
フランクリン
フランクリン
ヴィクター
その後の調べで、ジェシカの自宅から採取した指紋と地下の腕の指紋は一致し、
切断された腕が紛れもなくジェシカのモノだと判明した。
2019.06.30 作