放課後の教室。
オレンジ色の夕日が窓から差し込み、机や床を淡く染めている。
部活や下校で生徒たちはほとんどいなくなり、教室にはわずかな声と風の音だけが残っていた。
三神愛梨
えっと……ここがちょっとよく分からなくて
三神愛梨は、教科書を抱えて一輝の席にやってきた。
転校してきたばかりの彼女にとって、授業内容はまだ追いつくのが大変らしい。
新藤一輝
ここはな……こうやって公式を変形するんだ
一輝は少し照れくさそうにしながらも、真剣な表情でノートを広げた。
クールな印象とは違い、説明は分かりやすく丁寧だ。
三神愛梨
なるほど……!ありがとう、一輝くんって教えるの上手なんだね
新藤一輝
別に普通だよ
そう言いながらも、一輝の耳がほんの少し赤くなっていた。
愛梨はそのさりげない優しさに、胸が温かくなるのを感じる。
———その頃、廊下を歩いていた鎌井柑奈は、ふと教室の中を覗いた。
窓越しに見えたのは、楽しそうに話し合う一輝と愛梨の姿。
一輝が誰かに勉強を教えているなんて、今まであまり見たことがなかった。
その光景が、なぜか胸の奥をざわつかせる。
鎌井柑奈
(……別に、なんとも思ってないし)
そう心の中で言い聞かせるけれど、視線はどうしても二人から離せなかった。
ポニーテールを握る手に、ほんの少し力が入る。
友達
柑奈ー!早く行こー!
友達に呼ばれて、はっと我に返る。
鎌井柑奈
う、うん!今行く!
無理やりいつもの明るい笑顔を作って、足早に廊下を歩き出した。
教室の中では、まだ愛梨と一輝の穏やかな声が続いている。
夕焼けの空は、少しずつ夜の色に変わっていった———。






