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少女
少女が呻きながら、大きな天蓋付きのベッドの上でシーツにくるまっている。丸まっているので、まるで白い大きなダンゴムシがベッドの上にいるようである。
足音が部屋の外から聞こえてきた。その足音を聞くや否や、体を丸めていた少女は勢いよく、ガバっと起き上がる。
そして、少女はベッドから飛び降り、裸足のまま、たたたっと部屋の入り口であるドアの前まで走る。そして勢いよくドアノブをひねった。
少女
嬉しそうに少女はドアを開ける。開けた瞬間、ひっ、と男性の小さい悲鳴が上がる。開けたドアがちょうど、悲鳴の主である男性にぶつかりかけたのだ。
すんでのところで、男性にドアはぶつからなかった。しかし、男性は少し不機嫌な様子で、目の前の少女に説教を始める。
男性
男性は、丁寧な言葉で少女――アウロラ――に対してそう諭す。しかしそんなことお構いなしに、アウロラは「うーーーっ!」と嬉しそうに男性に抱きつ く。
アウロラ
男性
ルべリアは抱き着いてきたアウロラを軽くあしらい、部屋へと入る。抱き着いたのにさらりとかわされたアウロラは、不満そうな表情になる。部屋に入ったルべリアは、その部屋の床を見て、さらに不機嫌な表情になる。
ルべリア
床の上には、色々な色で塗りつぶされた絵や、おそらく人物が描かれていると思わしき――ぐちゃぐちゃしているが……――絵が散らばっていた。ついでに床――白い絨毯が敷かれている――の上には様々な色のクレヨンで落書きされていた。
それを見て、頭を少し抱えるルべリア。
アウロラがこの屋敷にやってきてもう半年が経とうとしている。あの頃に比べれば、野性的で手に負えなかったアウロラも随分と落ち着いたし、ルべリアもアウロラの扱いにはだいぶ慣れてはきた。だがそうは言っても
ルべリア
いい加減、キレそうなのである。
そうは言っても、アウロラに対して、頭ごなしに怒鳴り散らすということはできなかった。
と、いうのは。アウロラを見てみると、その表情はこれでもかというくらいキラキラしているからだ。まるで天使のように何の悪意もない。
天使のように、というか、そもそもの話、ルべリアは天使が嫌いなので、ルべリアとしては、あまりそのような表現を用いたくはないのだが。とにもかくにも、そのような表情のアウロラを見ると、どうしても怒鳴る気力が失せるのであった。
――天使。それは清らなる存在であり、唯一神と呼ばれる存在に絶対的な服従をする者達。
ルべリアは悪魔であった。悪魔というのは、天使とは真反対で唯一神に逆らう存在。そして天使とも対立する者達だ。
だからルべリアは、天使が嫌いだった。それに天使は表向きは綺麗な言葉を並べるだけ並べ立てるが、その実、裏では非道なことをすることもあった。例えば。
ルべリア
ルべリア
アウロラ
ルべリアが考え事をしているのを見たアウロラはルべリアの目の前まで近寄ってきて、ルべリアの顔を覗き込む。見た目は17、8くらいであったが、言葉使いのせいか、まだまだ幼く見える。
心配そうにルべリアを見つめるアウロラ。
そんなアウロラの視線に気づいたのか、ルべリアはすぐに考え事をやめた。
ルべリア
アウロラ
嬉しそうにぴょんぴょんっと飛び跳ねるアウロラ。しかし彼女のその喜びようは、次のルべリアの一言であっさりと砕け散ることとなる。
ルべリア
悪魔のように――というか悪魔なのだが――にっこりとアウロラに微笑むルべリア。その一言を聞いて。
アウロラ
涙目になるアウロラであった……。