拝啓
冬本番ですね。いかがお過ごしでしょうか。
お久しぶりです。Kです。 返事が遅くなり申し訳ございません。
三者三様、様々な理由で僕に手紙を送り返事を欲しました。
「貴方が居ないと駄目だ」という依存。 「もう1回計画を授けてくれ」という依頼。 「責任を取れ」という転嫁。
見事に自分のことしか考えてませんね。
貴方達のご期待には応えられません。 この手紙が最後です。
そもそも僕は貴方達に復讐する為に、計画を授けていたんです。
もう気づいていると思いますが、「K」は貴方達が中学生の時、虐め倒して不登校に追い込んだクラスメートです。
そして貴方達は考えたはずだ。 「どうして一介の刑事が、あんなに詳しく手紙の内容を知っているのか?」
「Kは取り調べ担当の刑事__橘圭一 なのか」と。
答えはNOです。
貴方達に計画を授けた「K」は
もう生きていません。
順を追って説明しましょう。
俺が病室に着くと、Kは涙を流した
俺
K
俺
俺はKの病室を見回した。
花などの見舞い品の類いが見当たらない。 誰もKを見舞いに訪れてないことは明らかだ
K
K
俺
K
俺
確かに両親を亡くした俺は、Kまでも失ったら天涯孤独になる。
しかし今それは問題じゃない
生まれ持った病気で、20歳まで生きられなくて「その時」が迫りつつあるKを誰も見舞いに訪れない。
別々の所に養子に出され、生き別れた弟の境遇の方が気がかりだ。
K
K
俺
K
K
俺
K
そしてKは自らの置かれた環境を語りはじめた。
忘れたとは言わせません。
病気持ちだから、他とは違うから。 そんな理由で虐め倒したクラスメートの名前。
宿題写し要員にしか見てなかった、 育ちが悪い故に巻き込んだ、 責任転嫁の対象にした、 男子中学生の名前。
俺の弟。 橘圭二。
自分が虐めていた男に、依存し依頼し転嫁してきたと知った気分はどうですか。
これで復讐の意味が分かったかと思います。 しかしまだ終わらないですよ。
最後まで読んで貰います。
K
K
K
K
K
K
涙を流すKを見て、俺は激しく自分を責めた
別々に養子に出されてから何回か手紙のやり取りをしているのに、俺は気づいてやれなかった。
Kが得られなかった平凡な暮らしに、贅沢にも俺は愚痴をこぼしていた。
K
俺
K
Kはまだ涙の跡が残る顔を笑みの形に変えた
K
K
K
K
俺
俺
俺
学校でも家でも虐げられ、死期が近いても誰も見舞いに訪れない弟
弟の苦しみに気づいてやれず、ありきたりな言葉しかかけられない兄
そんな二人はヒーローに憧れた
悪い奴を倒すヒーローに
俺
俺
俺
俺
K
K
それではあの日の約束通り、
刑事になって君達の取り調べを担当した俺からこの言葉を送りましょう。
ザマアみろ
一生十字架を背負って反省していることですね。
最後になりましたが、
俺とKの家族は殺されたんですよ。
父さんは心臓を直接刃で刺され、母さんは大根で撲殺され、その様子は実況動画としてネットに上がっている。
まだ犯人は捕まっていないのですが、必ず捕まえてます。
Kはいなくなってしまったが
ヒーローごっこはまだ続いているんです。
K(橘圭一 橘圭二)
コメント
17件
めちゃくちゃ好きです...! 1話目から積み上げられた読み手の推理を最終話でひっくり返す方法、とても良かったです...!