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放課後の教室には、私と心逢だけが残っていた。 机の上に伸びる夕日の光が、さっきまでの授業の気配を少しずつ消していく。 私は鞄を閉じるタイミングを逃して、なんとなく席に座ったままでいた。 心逢は窓際に立って、校庭の方をぼんやり眺めている。 多分目線の先に居るのは、錯綜といずみなんだろう。 誰もいない教室は、音が少ない。 遠くの部活の声と、カーテンが揺れるかすかな音だけが聞こえる。
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不意に声をかけられて、私は少しだけ肩を揺らした。 振り向くと、彼女はいつもの調子で、でも少しだけ柔らかい表情をしていた。
𓏸𓏸
そう答えると、彼女は「そっか」と短く言って、私の隣の席に腰を下ろす。 それだけで、教室の空気が少し変わった気がした。 会話は続かない。 でも、沈黙が嫌じゃないのは、心逢だからだと思う。 別に彼女にとって、私は特別でも何でもない、ただのクラスメイトなんだろうけど。 夕日がさらに傾いて、机の影が長く伸びる。 そろそろ帰らなきゃ、と思いながらも、立ち上がる理由が見つからない。
ca
彼女がそう言って立ち上がる。 私もそれにつられて席を立った。 二人きりの放課後は、誰にも見られないまま、静かに終わった。 誰の思いも変わらないまま、誰にも知られないまま。