瑠華
どういう事ですか?!
父
こうするしかなかったんだ。すまない。相手方も了承して下さってるし、今更……
瑠華
私はそんな奴と……!
父
本当にすまない。迎えとしてそれなりに強い者を付けてくれるということだから、心配は大丈夫だ。
瑠華
私はそんな事を言っているんじゃ……!
父
本当にすまない。でも相手方も同じ種。家としても断れないのだ。
瑠華
そんな。
とある御屋敷。その屋敷に住む1人の少女。瑠華はたった今自分の知らないところで政略結婚が決まっていたことに腹を立てている。
瑠華
私は……っ!相手の方の顔も名前も知らぬまま嫁に出されるのですか?!
父
すまない!
『すまない』しか言わない父にもまた、腹を立てていた。将来は好きな者と結婚しなさいと言っていた父もまた、家の事しか考えていなかった。
瑠華
そうですか。わかりました。父上。貴方にはもう飽き飽きです。もう一生会いませんから。
歳三
総司。言い出しっぺはお前なんだ。手前が行け。
総司
えぇ?!自分で行ってくださいよぉ。僕はその件に殆ど関わってないじゃないですかぁ!
歳三
手前が言い出したんだろ。そろそろ結婚しないと年増ですよ〜って。
総司
それはそうですけど、でもそういうのは自分で行くのが礼儀でしょう?
歳三
はぁ。いいから行け。
総司
えぇ?
歳三
じゃあ切腹しろ。
総司
なんで。僕何も悪いことしてないしまだ死にたくないんですぅ!それに、まだ近藤先生のお役に立ちたいので!それは無理です!
歳三
だったら行け。手前ならもし何かあっても大丈夫だろ。だから行け。
総司
人を物みたいに……。はぁ。しょうがないなぁ。僕の命の為に行きますよ。
女性
お嬢様。お迎えの方がお見えになりましたよ。
瑠華
……。どうぞ。
総司
はじめまして。新選組の沖田総司と申します。
瑠華
貴方が、私の?
総司
いえ。
瑠華
え。じゃあ本人は……。
総司
僕はその本人に無理強いされてここに護衛として来ました。だから今頃本人は屯所でしょう。
瑠華
あの、そのご本人はどういう方なのですか?
総司
知らないのですか?てっきりもう会っているのかと。
瑠華
私も無理強いをされて政略結婚させられたので。ところで、貴方人間、ですよね?
総司
いえ。
瑠華
え。でも、見た目は人間ですよ?動物の耳も生えてないし、角だって。
総司
あぁ。でも、ちゃんと貴方と同じ妖ですので。
瑠華
は、はぁ。
悠真
瑠華!
瑠華
悠真……。
悠真
おいそこのやつ!手前人間だな?!瑠華を離せ!
総司
え。ちゃんと妖ですよ?
悠真
そんなはずないだろ!俺は、瑠華が政略結婚させられるって聞いて今ここにすっ飛んで来たんだ!お前みたいなやつには渡さない!
総司
えっと、相手は僕じゃないです。僕はただ本人に無理強いをされて護衛としてここに来ただけで……。
悠真
じゃあお前が妖だって証拠を出せ!
瑠華
ゆ、悠真!そこまでは……。
総司
いいですよ。ほら。
すると、人差し指を立てた沖田は、その先端に青い炎を纏わせた。
総司
これでいいでしょう?それと僕、早く行かないと歳さ…副長に怒られるので。
悠真
……っ。
瑠華
妖っていうのは本当だったんだ……。でも、あの炎の量だと、未熟なはず。なんで私の護衛を……。
総司
……?何かいいました?
瑠華
あ、いえ。
平助
お?!総司ぃ!おかえりっ!お。その隣にいるのが噂の土方さんの女か?
総司
そうだよ。あれ?平助。いつもの二人は?
平助
二人はどっちも仕事でさぁ。いねーんだよなぁ。
総司
ふーん?
平助
っつか、土方さんもう年増だろ?これ以上女が出来なかったら、モゴッ!
総司
発言には気をつけようかぁ。平助。今よからぬ事を言おうとしたでしょぉ。ね?ここは男所帯だよぉ?
瑠華
……。(ちょ、嘲笑……。笑顔が黒い……。って言うか、相手の方。土方さんって言うんだ。)
総司
さ。行きましょう。
総司
とーしさーんっ!入りますよぉ。
歳三
……チッ。総司手前。俺の部屋に入る時は一言声を掛けてからと言っているだろう。
総司
えぇ?今回はちゃんと声掛けましたよぉ?入りますよぉって。
歳三
それは入ってから言ってるだろ。ダメだ。あと総司。頼んだことは?
総司
ここにいますよ。ほら。こちら、瑠華さんです!
瑠華
ど、どうも……。
歳三
土方歳三だ。よろしくな。
瑠華
は、はい。
総司
あ、歳さん照れてる。
歳三
照れてねーよ?!