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序章 等活(とうかつ)地獄

??

......ぇ、起きて

橋本 三留(みつる)

......?

俺は聞き覚えのある声で目を覚ました。

視界は真っ暗だが、自分がどういう状況で拘束されているかは身体の感覚でわかった。

木の椅子に、頑丈に固定されている俺の足はびくとも動かない。

両腕は背もたれの後ろで、両腕がちぎれそうな程キツく締め付けられている。

橋本 三留(みつる)

(いっ......痛いっ......!)

橋本 三留(みつる)

(一体、なんなんだよ.......?)

??

あはっ、起きた?

どこかで聞き覚えのある声。 だが、思い出せない。

橋本 三留(みつる)

お......お前、誰なんだよ?

??

え?自分の状況、わかってる?

??

君、拘束されてんだよ。

??

これから何されるかわからないってのに、ずいぶん余裕だね。

橋本 三留(みつる)

えっ......

橋本 三留(みつる)

何されるか、わからない......?

嫌な汗が、だんだんと身体から湧き出てきて、息ができなくなる、胸が苦しい、

橋本 三留(みつる)

(あ、あれ、俺、これから何されるんだ......??)

??

いいね、その感じ。

??

だんだん、自分の状況がわかってきたみたいだね、

??

えらい。えらい。

??

ところで君、自分の罪はなんだかわかる?

鼓動が早くなる。

橋本 三留(みつる)

(自分の......罪?)

橋本 三留(みつる)

(ま、まさか、あの件がばれたのか?)

橋本 三留(みつる)

(そんなはずはない、だって、あの件は、俺とあいつにしか知らないはず。)

橋本 三留(みつる)

(あの場に、2人しか居なかったんだから。)

奴が耳元で囁く。

??

めぐみちゃん。

??

か・い・だ・ん

橋本 三留(みつる)

ああああああああああああああああああ!!

橋本 三留(みつる)

(ばれた、ばれたばれたばれたばれた......!)

橋本 三留(みつる)

(なんで、どうして、その件は、俺とあいつしか、知らないはずなのに!)

??

うふふ

??

......さぁ。地獄へ落ちな。

橋本 三留(みつる)

がはッ............っ!

その言葉を奴から聞いた瞬間、俺の口の中に大量の粉のようなものが流し込まれた。

橋本 三留(みつる)

(くっ......苦しいっ......!)

橋本 三留(みつる)

(息が......できない......)

次第に、意識が遠のいていく。

俺、死ぬのか.......?

気づけば、辺りは誰もいない真っ赤な世界にいた。

橋本 三留(みつる)

(なんなんだ、この世界......)

橋本 三留(みつる)

(ウッ.......!!)

次第に、俺の足に尋常じゃない痛みが走る。

下をみると、地面は無数の針で埋め尽くされてるじゃないか!!

橋本 三留(みつる)

(痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたい......ッ!!)

俺の足が、血まみれになっていく。

橋本 三留(みつる)

(グッ......クソッ!)

橋本 三留(みつる)

(ああっ......めぐみ......)

橋本 三留(みつる)

(俺が、悪かった......。)

第1話 地獄の案内人

熊本県立 ○○高校

今朝、緊急で職員会議が開かれた。

校長

えー、皆さん。
落ち着いて聞いてください。

校長

蛇喰(じゃばみ)先生のクラスである2年2組の "橋本 三留(みつる)"君ですが

校長

一昨日、自宅で橋本くんの死体が発見されました。

龍希(たつき)先生

えっ...

ザワザワ

他の先生たちはザワつく。

校長

橋本くんの死因は、大量の覚せい剤の服用、

校長

そして、大量の刃物の刺傷があったとのことです。

校長

自宅の庭で死体が発見されたことから、警察は他殺として捜査しているみたいです。

校長

それに加え、覚せい剤の出処は分かっていません。

鳥鼠(とね)先生

.......

龍希(たつき)先生

そ、そんな...

校長

このことを受け、薬物乱用防止の呼びかけ、

校長

" 相談箱 "の強化、

校長

そして、いじめがあったかどうかのアンケートを生徒に受けさせてください。

校長

みなさん、宜しいですね?

校長からの呼びかけに、皆が頷く。

校長

また、捜査の進展があったら連絡してくれるそうです。

校長

気を引き締め、生徒たちの安全を守るよう務めてください。

校長

では、授業の準備に入ってください。

校長のその言葉を聞いて、 各々が授業準備に差し掛かる。

鳥鼠(とね)先生

(俺も、数学のプリント刷りにいかなきゃな...)

そう考え、俺は職員室を後にした。

プリント室

俺は、今朝の職員会議を思い出していた。

鳥鼠(とね)先生

(はぁ......2人目か......)

実は、先月も1人この学校の生徒が亡くなっている。

1人目は 神崎 めぐみ。 うちの学校の2-1の女の子。

つまり、僕が担当しているクラスの生徒である。

鳥鼠(とね)先生

(確か、放課後に学校の階段で足を滑らせて事故で亡くなったんだっけ。)

鳥鼠(とね)先生

(しかも、防犯カメラの記録も無かったんだよな。)

学校の監視カメラは壊れていて、記録されていたり、されていなかったりでまちまちだった。

そのため、事件性はないとし、 神崎 めぐみの死は " 事故死 " と判断された。

すぐに病院に連れていけば、 彼女は助かったかもしれない。

だが周りに誰もいなかった彼女は、 本当に運が悪い。

そんな事を思い出しながら、僕は今、 1時間目に使用する数学のプリントを大量に刷っていた。

龍希(たつき)先生

鳥鼠先生、大変っすね〜

後ろで、声がした。

僕より1つ上の学年の先生。 国語科の教師である。

鳥鼠(とね)先生

まぁ......今朝の職員会議は、結構驚きました。

鳥鼠(とね)先生

まさか、先月に続いて2人もうちの学校の生徒が死んだなんて...

鳥鼠(とね)先生

まだ実感湧いてないです。

龍希(たつき)先生

それだけじゃないっすよ。

龍希(たつき)先生

ついこの間、東京からクソ遠い熊本のこの学校に転任してきたばかりなのに、

龍希(たつき)先生

こんな事件に巻き込まれちゃうなんて。

僕は東京の高校教師を諦め、 新卒でこの熊本県の高校に来た。

3ヶ月ほどたって、 もうすぐ楽しい体育祭な待っている。

そこで、この事件が起きた。

そのことを気にかけてくれるとは、 龍希先生は意外と優しいかもしれない。

龍希(たつき)先生

それから、相談箱の強化って言ってたじゃないっすか。

龍希(たつき)先生

俺あれ、意味無いんじゃないかな?って思ってるんですよね〜

龍希(たつき)先生

だって最近の子って、ああいうの使わないし。

龍希(たつき)先生

なんせ、設置場所が皆の教室から離れすぎてるし、薄暗いところにあるじゃないですか。

龍希(たつき)先生

あそこに行くと、幽霊が出るって噂もあったみたいだったし。

鳥鼠(とね)先生

それは僕も思いました。

鳥鼠(とね)先生

相談の紙入ってるところ、見たことないです。

龍希(たつき)先生

わかる。

龍希(たつき)先生

だから俺も、もう何年も確認してないっすもん(笑)

龍希(たつき)先生

多分、他の先生も同じなんじゃないかな。

龍希(たつき)先生

入れてっていっても、絶対いれてくれないっすよ。

教師達が相談箱の中身を全く確認しないないことは、なんとなく分かっていた。

デジタル化が進んでいるこの時代に、 言いにくい相談をわざわざ紙に残す生徒なんていないと思っているのだろう。

なんとなく、その気持ちは分からなくもない。

ピーッ ピーッ

そんな事を考えていると、授業に使うプリントが全て刷り終わった。

きっと龍希先生もプリントを刷りたいだろうし、 時間も迫っていたので早々に話を切り上げ、

僕は印刷室を後にした。

2-1

ザワザワ

教室に着くと、案の定噂は回っているようで、 いつもの10倍は教室がうるさい。

鳥鼠(とね)先生

はい、皆さん。
ホームルーム始めますよ。

鳥鼠(とね)先生

席に着いてください。

クラスの生徒達

はーい

僕がそういうと、皆席に着く。 数分もかからない。

鳥鼠(とね)先生

では、これからホームルームを始めます。

鳥鼠(とね)先生

皆は知っているかもしれませんが、先日、この学校の生徒が亡くなりました。

鳥鼠(とね)先生

ですが、変な噂を流すようなことは控えてください。

鳥鼠(とね)先生

それから、悩み事があったら1人で抱え込まず、大人に相談するようにしてください。

鳥鼠(とね)先生

"相談箱"もあるし、僕はみんなの為なら何時間でもお話聞くからね。

鳥鼠(とね)先生

それから、変な人について行ったり、薬物に手を出しちゃいけないってことは、

鳥鼠(とね)先生

皆もわかってると思う。

鳥鼠(とね)先生

今まで以上に、徹底して守りましょう。

鳥鼠(とね)先生

そして、今からいじめに関するアンケートの紙をお渡しします。

鳥鼠(とね)先生

帰りの会で、集めるからね。

鳥鼠(とね)先生

何か知ってることがあるなら、皆には正直に答えて欲しい。

そう伝え、アンケートの紙を配り終わった後、 僕はホームルームを終わらせた。

クラスの生徒達

......

僕のクラスの子達は皆、真剣な顔をしていた。

きっと、皆なら素直に答えてくれるはずだ。

帰りの会

帰りの会になって、僕は、 皆が書いたいじめに関するアンケートを回収した。

鳥鼠(とね)先生

(うーん......該当するものは無さそう)

紙をざっと見たが、クラスのいじめに該当しそうなことを記述している生徒は見当たらなかった。

当然である。

僕のクラスに限って、いじめなんて起きていないことは分かっていた。

鳥鼠(とね)先生

はい。皆さんの分のアンケートを確認しました。

鳥鼠(とね)先生

皆、ありがとう。

鳥鼠(とね)先生

じゃあもう、今日は帰ってもいいですよ。

鳥鼠(とね)先生

みなさん、さようなら。

ガタンッ

狗巻(いぬまき)君

......

僕の言葉を聞いた瞬間、教室の1番前に座っている狗巻君が一目散に教室から出ていった。

クラスの生徒達

せんせー、またね!

鳥鼠(とね)先生

はい、また明日ね

それに続き、他の皆がぞろぞろと教室を出ていく。

狗巻君以外は、基本的に僕に挨拶してくれる。

「ばいばい」「また明日ね」 の言葉を生徒から聞くと、

なんだか僕を必要としてくれるようで嬉しかった。

心猫(ここね)

鳥鼠先生。

心猫(ここね)

少し、お話いいですか?

心猫ちゃんと、隠れるように隣にいる隼兎(はやと)くんが、僕に話しかけてくれた。

鳥鼠(とね)先生

うん、どうしたの?

隼兎(はやと)

......

心猫(ここね)

話したいことがあるんですけど、お時間ありますか?

鳥鼠(とね)先生

うん、大丈夫だよ。

鳥鼠(とね)先生

大事な話そうだから、教室変えようか。

鳥鼠(とね)先生

科学室、来てくれる?

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