夢を見た…
幼い頃のとてもとても懐かしい夢。
私が病院で1人で泣いていると、あの子は来てくれた。
私の不安を消そうと、色んな話をしてくれた
おばあさんのこと、親友の男の子のこと、自分の夢のこと…
そんなあの子のことが、私は大好きだった。
あの子が先に退院する日、私はまた泣いた。
寂しくて、心細くて、離れたくなくて。
そしたらその子は私をこっそり病室から抜け出させてくれた。
病院の隣の小さな公園で、2人で見つけた四葉のクローバー。
泥んこになって、でも2つ見つけて嬉しくて。
2人の宝物にしようって約束した。
そして私はクローバーに願った。
〝また、会えますように〟って…。
キラキラ、キラキラ……輝く思い出。
でも、今、あの子は居ない…。
桃
優衣
寝ぼけた目を擦りながら辺りを見渡す優衣。
帰りのHRが終わったようで、生徒がチラホラ帰り出している。
どうやら最後の授業の途中で寝てしまい、そのまま時間が過ぎていたようだ。
桃
優衣
昨晩、優衣は望とキスをしかけたことが頭から離れず、眠れずにいた。
それが原因でさっきまで寝てしまっていたのだ。
桃
優衣
桃
悪戯っぽく笑う優衣。
2人は荷物をまとめ、教室を出た。
桃
桃が伸びをしながら呟く。
優衣
桃
優衣
そんな会話をしながら、帰り道を歩いていたその時。
圭
圭が大きく優衣の名前を呼び、駆け寄ってきた。
優衣
桃
圭
桃
優衣
圭の後ろから、チラチラとこっちを見ている人物。
望
優衣
望だった。
桃
優衣
桃
ジロジロと望と圭を見る桃。
桃
優衣
桃
優衣
圭
優衣と桃の間に入る圭。
優衣
圭
優衣
ピーン!と耳の横で手を真っ直ぐに挙げる圭。
圭
優衣
圭
そう言って、圭は右手を優衣に差し出した。
真剣な眼差しで、じっと優衣を見つめている。
桃
優衣
あまりに急な出来事に、どうしたらいいか分からなくなる。
圭の眼差しが本気ということをヒシヒシと伝える。
しかし、優衣はこの手を取ることができない。
どうしよう………
その時だった。
望
望が、優衣の手を掴む。
そして、自分の方へと引き寄せた。
望
そう言い、優衣を連れ、その場から走り去った。
優衣
名前を読んでも望は振り返らず、ひたすら優衣の手を引いて走った。
荒くなる、2人の息遣いと上がっていく体温。
もう止まることが出来ない、想い…。