鐘は鳴る

永井の言葉で、三浦たち3人が一斉に残念そうに溜め息を吐いた。

永井が吐き捨てるように言った。

大晦日の2日前、三浦たちは仲の好いチームで明後日の初詣へ向かう計画を立てた。

メンバーは三浦、永井、佐々木、そして紅一点の阿部広美。

この阿部広美がボソッと呟いた。

永井と佐々木もそうだ、と言わんばかりに同時に頷いた。

その日の夜に行われた忘年会で、広美を除く三浦と永井と佐々木が部屋の隅に集まった。

永井は明らかに動揺の色を浮かべたが、

酔いが回ってきた永井は自然と口調が荒くなっている。

三浦も顔を赤らめて「違う、違う」とかぶりを振って否定する。

唯一、酒に強い佐々木だけは旨そうに酒を飲んでいた。

佐々木が眉を潜めた。

すると、三浦と永井が一緒に笑い出した。

佐々木が首を傾げると、代わって永井が説明を始めた。

三浦が酒臭い臭いを口から発しながら佐々木に詰め寄った。

三浦と永井はお互いに阿部広美への想いをぶつけ合いながら盛り上がっていた。

佐々木は呆れ顔で酒を飲んで、気持ち良さそうに息を吐いた。

大晦日前日の12月30日、午前中の大掃除を済ませてから三浦と永井は、

除夜の鐘が中止されてない神社を探しに市外へまで出向いた。

2人が必死にあっちこっちを探し回っている間、佐々木はのんびり大掃除をしていた。

その日の夜、グループLINEで三浦と永井の呟きが流れてきた。

翌日の12月31日、大晦日の夜。

佐々木と広美より後に、三浦と永井は集合場所に集まった。

2人とも顔が楽しくなさげだ。

三浦と永井が顔を見合わせていると、佐々木が笑いながら間に入った。

阿部広美は楽しそうに笑顔を振りまいて先頭を歩き始めた。

三浦と永井はお互いに不思議そうに広美の後ろ姿を見ながら足を進めた。

徒歩で20分が経過した頃、沢山の明かりに照らされて一つの建物が見えた。

西洋のランプで照らされた広場と教会を見た三浦が声を上げた。

永井も珍しいものでも見るように賑やかな広場を見回した。

スマホの時計を確認すると年越しまで後3分もなかった。

教会から現れた神父が広場の鐘へと近付き、準備を始める。

三浦たちはバツが悪そうに下を向いた。

…10

…6

…1

カーン、カーン。

「Happy new year!!」

2020.01.01 作

2020年、明けましておめでとうございます🎍

本年もよろしくお願い致します m(_ _)m