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唐揚げ争奪戦

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唐揚げ争奪戦

1 - 華太総受け。なぐかぶ、わなかぶ、のだかぶ、こばかぶ。

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2023年08月17日

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計算機を叩きながら、パソコン入力を行っている俺達のもとに、南雲の兄貴が、ひよっこりと顔を出す。

南雲梗平

なぁ、華太知らね?

速水泰輝

小峠の兄貴なら、炊事場にいますよ

飯豊朔太郎

ばっ、速水!

小峠の兄貴が、炊事当番の日は、小峠の兄貴の居場所は、秘匿(ひとく)にしなければならない決まりがある。

速水泰輝

あ!

それなのに、速水は小峠の兄貴の居場所を聞かれ、あっさりと口を滑らせちまった。

南雲梗平

へぇ~、今日の食事当番は華太か

南雲梗平

良いこと聞いたわ。速水、ありがとな

南雲の兄貴は、足取り軽やかに去っていった 。

今日の昼食は、最悪おかずなしになるかもしれねぇ。

速水泰輝

飯豊君、ごめんね

久々に、小峠の兄貴の飯が食べれると思って、楽しみにしていただけあって、落胆は大きい。俺は溜め息と共に、肩を落とした。

工藤恒清

なんかまずいんですか?

俺達のやり取りを見守っていた、恒清が不思議そうな表情を浮かべ、口を挟む。

速水泰輝

そっか、最近入ったばっかだもんね

飯豊朔太郎

まずい以外のなにもんでもねぇよ。俺達、舎弟達には死活問題になりかねないくらいにな

工藤恒清

飯豊朔太郎

口で説明するよりも、炊事場みれば分かるから

速水泰輝

そうだね。直接見る方がいいかもね

工藤恒清

炊事場を覗くと案の定の光景が展開されていた。

南雲梗平

華太、一口、な、一口だけだから。ほら、味見係はいるだろ?

南雲の兄貴が、小峠の兄貴の背後から抱きしめて、唐揚げをねだっている。

小峠華太

一口だけですよ

そんな南雲の兄貴に根負けした、小峠の兄貴が、唐揚げを差し出す。

南雲梗平

ラッキー。いただきまーす

南雲の兄貴は美味しそうに、唐揚げを食べる。

飯豊朔太郎

あー、なるからだよ

工藤恒清

唐揚げ1個くらいなら、大したことないんじゃないですか?

速水泰輝

それが、一人だけならね

小林幸真

お前ら、こんなどこで何してんだ?

小林幸真

お、今日は華太が当番か

一番厄介な兄貴に見つかってしまった。小林の兄貴に見つかった時点で、今日の昼食は、白飯のみに決定したも同然。

小林幸真

南雲の兄貴だけ、味見してるとかズルい

小林幸真

華太ぉ~、俺も味見する

小峠華太

こ、小林の兄貴?なんでここに

そういうと、小林の兄貴はバットを掴み、豪快に口の中に、唐揚げを流し込んでいく。ジュースを飲むかの如く。

小林幸真

うまうま

小林の兄貴の暴挙(ぼうきょ)に呆気にとられていたが、いち早く、南雲の兄貴が正気を取り戻し、小林の兄貴に制止の言葉をかける。

南雲梗平

小林、それは食い過ぎだ

ただ制止するのが遅かった。南雲の兄貴が制止した時点で、バットの中の唐揚げは、残り2個になっていた。

南雲梗平

小林、どうすんだよ、これ

小林幸真

2個だけ残しててもしょうがないから、責任持って、全部食べまーす

残り2個の唐揚げも、小林の兄貴の口へと消えていった。

南雲梗平

いや、そういう事じゃないだろ

舎弟達は金に余裕ないものが多い。そんな舎弟達に食わす為に、昼食は組で賄ってくれている。

そして、いましがた俺達の昼食に出されるはずだった唐揚げは、全て小林の兄貴が平らげてしまった。

工藤恒清

確かに、これは死活問題ですね

飯豊朔太郎

小峠の兄貴の唐揚げ食べたかった

速水泰輝

皆、ごめんね

そこに、たまたま、廊下を通りかかった、和中の兄貴が顔を出す。

和中蒼一郎

何を揉めている?

炊事場に立つ、小峠の兄貴の姿、空になったバットを見て、和中の兄貴は即座に状況を把握(はあく)したようだ。

和中蒼一郎

華太、有り合わせで、何か作れないのか?

兄貴達は外に食べに出れば、問題ないが、金に余裕のない舎弟にとっては厳しい。流石に、白飯だけなのは、不憫(ふびん)だと思った和中の兄貴が、別の物を作れないのか、小峠の兄貴に打診(だしん)してくれた。

小峠華太

そうしたいのは山々なのですが、材料が足りないのと、メニューにばらつきが出るので

小峠の兄貴が作る料理は人気だ。その上、メニューが全員異なるとなれば、おかずの争奪戦が始まりかねない。

和中蒼一郎

そうか

小峠華太

それに、作り直そうにも、鶏肉がないので・・・

ふと、小峠の兄貴が、炊事場の入り口に立つ俺達の存在に気づく。

小峠華太

・・・・誰がゲロった?

飯豊朔太郎

速水です

工藤恒清

速水の兄貴です

速水泰輝

僕です

小峠華太

はぁ~、速水、これで鶏肉買ってこい

小峠の兄貴は、怒る訳でもなく、溜め息をついたかと思うと、ポケットから財布を取り出し、ゲロった罰として、速水に買い出しを命じた。

速水が、小峠の兄貴の財布を受け取ろうとした瞬間、横から別の財布が差し出された。

和中の兄貴が、財布を差し出してきたのだ。

和中蒼一郎

俺が出そう。妻の財布から、出させる訳にはいかん。妻の食い扶持(くいぶち)くらい、夫の俺が払おう

小峠華太

(和中の兄貴、結婚してなかったはずだが、妻って、誰のことだ?)

そして、和中の兄貴が財布を差し出した事で、支払い戦争が勃発(ぼっぱつ)する。

南雲梗平

和中の兄貴に支払わすんて、とんでもありません

南雲梗平

ここの費用は俺が持ちますよ。将来の嫁の為に

小峠華太

(この前、フラれたと言っていたし、今、懇意(こんい)にしてる女性はいなかったはずだが、将来の嫁なんているのか?)

小林幸真

俺が食ったんで、俺が払います

小林幸真

ちゃんと、彼氏として責任とれる男だと証明しないとな

小峠華太

(そういえば、小林の兄貴は彼女持ちだったな。でも、その彼女は、今回の件には関係ないと思うんだが?)

渦中の小峠の兄貴は、何故、兄貴達が支払いで揉めているのか、分かってなさそうだ。

和中蒼一郎

速水、遠慮せず、俺の財布を持っていけ

南雲梗平

そうそう、遠慮する必要はねぇからな、速水。俺の財布持ってけよ

小林幸真

速水~、勿論、分かってるよな?俺の財布を持ってくだろ?

速水泰輝

えっと、あの、その

三人の兄貴達から詰め寄られ、速水はしどろもどろだ。それもそうだろな。誰をとっても、角がたつ。下手すれば、残り二人からヤキいれが待っている。誰を選択しても待っているの地獄とくれば、誰を選んでも意味はない。

野田一

何しとんじゃ、お前らぁ!!

突如、鬼の形相(ぎょうそう)をした、野田の兄貴の怒号が鳴り響く。

野田一

下等生物、速水。迷う必要はねぇ。華太を除く、全員の財布から一万抜いてけ。3万もありゃあ、鶏肉は事足りるだろ

速水泰輝

はっ、はい!

野田一

お前ら全員、炊事場の立ち入りを禁じる野田!

和中蒼一郎

野田、俺は何もしていない

南雲梗平

俺は唐揚げ一つしか貰ってません

小林幸真

全部食べました。美味かった

野田一

一人だけ出禁にしたら、余計揉める原因になんだろ

野田一

分かったら、とっと出ていく野田!

野田の兄貴が、他の兄貴達を追い払う。

そして、門番よろしく炊事場の入り口に立ち塞がった。

野田一

工藤と飯豊は、お前らは残って華太の手伝え。昼飯の時間までに間に合わせろ

俺達には、小峠の兄貴を手伝うよう、厳命(げんめい)が下された。

小峠華太

野田の兄貴、助かりました

野田一

華太が甘やかすから、付け上がる野田

野田一

飯の件に関しては、全て突っぱねて構わんと、俺がお触れを出しているだろ

小峠華太

すみません、気をつけてはいるのですが、兄貴相手だとつい

極道は縦社会。上の言う事は絶対。普段から、身に染みているせいで、小峠の兄貴も、兄貴達にねだられたら条件反射で差し出してしまうのだろ。

野田一

次からは、気を付ける野田

小峠華太

はい

小峠華太

あ、野田の兄貴

野田一

ん?

小峠華太

実は味見ように一個だけ、別にとっていたものがあるんですが、良ければ味見して貰えませんか?

野田一

作り直すんだから、別に味見な・・・

野田一

やっぱり気が変わった野田

一旦、味見を断ろうとしていた野田の兄貴だったが、ズカズカと小峠の兄貴に歩みよってきた。

小峠の兄貴の顎を掴み、強引に上に向かせたかと思った、次の瞬間、唇と唇が重なった。

たぶん、唇が重なっていたのは数秒程度だったのだろうが、俺には永遠の時間のように感じられた。

野田一

・・・うまかった

野田一

ご馳走さん

小峠華太

/////

へなへなと小峠の兄貴は、その場に座り込んだ。

うん、大丈夫、俺は何も見ていない。

きっと今のは目の錯覚だ。そうに違いない。

甘ったるい空気が流れているのも俺の思い込みだ。

だから、速水、早く帰ってこいぃぃぃ!

こんなにも速水の帰りが待ち遠しいと思ったのは、これが最初で最後だった。

おわり

あとがき 唐揚げ食べたい、きっと華太の作る唐揚げは絶品に違いない( ̄¬ ̄) 全くもって関係ないが、昔、父から不審者撃退術を教わった事がある。 『ボディはかためられたら、攻撃は効かん。襲われたら、顔面を狙え。鼻は、ちょっと当たっただけで出血するから、血が出たら吃驚して怯むから』と、あ、助けを呼べとかじゃないんだな、自分でどうにかしろと。 うちの父も大概だけど、妹の幼なじみの父親はもっとあれだった。防犯ブザーの代わりに、トンカチ持たせ、襲われたら、それで殴るように教えていた。その子のランドセルには、いつもトンカチが入っていた。娘が可愛いのは分かるが、それ不審者の方が危ないだろ。 確かに、顔面への攻撃は有効なんですけどね。顔面の攻撃は怖いから、咄嗟に目を瞑っちゃうから当てやすい。狙うのは、鍛えられない目か鼻。やり過ぎれば、過剰防衛なっちゃいますけどね。あと、逃げ足に自信がなければ、次に狙うのは膝か足首を思いっきり蹴るのがオススメ。歩く、走るの起点は足首や膝、機動力を奪ってしまえばいい。腕よりも足の力の方が強いので、蹴る方が有効的。

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