一覧ページ

旧国、異世界へ！？

第43話 - 第43話　縋るは思い出

1,221

2025年12月02日

#旧国

#ナチス

#日帝

#イタ王

#ソ連

#カントリーヒューマンズ

ゆるゆるまうんてん＠参加型始動

子どもたちを寝かしつけたシスターは

一人静かに外を眺めていた

フランス

……

だが、彼女の心は荒れていた

一体なぜ？

なぜ戦争なんか？

そもそも、なんで前線にイギリスが？

様々な疑問が、フランスの頭を行ったり来たりする

フランス

……神よ

フランス

これは、貴方様が課した

フランス

何らかの、試練なのですか……？

声は聞こえない

神の声なんてない

だからこそ、フランスは

自分で決めなければならなかった

フランス

……（最後に縋れるのは神ではない）

魔法使いは『想い』を元に魔法を使う

その『想い』の根源

それは……

フランス

（……思い出）

……魔法使いが最終的に縋ることができるもの

それは、かつて自らを強くしてくれた思い出だけ

『守りたい』『強くなりたい』

『大切なひとを助けたい』

……そう、想いを抱くきっかけの思い出

フランス

（……あの、絵本）

フランスは無意識に

あの思い出の絵本へと足を運んだ

怖くて手に取ることができなかった

歳を重ねるごとに、あの幸せすぎた日々を思い出すことを恐れて

……ずっと、しまいこんでいたあの絵本

イギリスがくれた、あの絵本

フランスは

当時より古びているけれど、大切に保存されてきたであろうその絵本を開いた

『昔々、あるところに』

『一つの小さな街がありました』

『その小さな町には』

『ひとりの孤独な少年がいました』

『孤独な少年は、街の人たちから遠ざけられ、嫌われていました』

『まちの大人たち曰く、彼は"いみこ"と呼ばれるひとだそうです』

『「寂しい」とも言えず、「悲しい」とも言えない』

『その感情を、少年はずっと一人で抱えていました』

『ですがある日、ある青年がやってきました』

『町の人達は青年を歓迎しました』

『しかし、少年は木の陰に隠れていました』

『少年を見つけた青年は、少年に駆け寄ります』

『「君の名前は？」』

『そう、声をかけるために』

『今まで、誰も話しかけてくれなかった』

『名前なんて、聞かれたこともなかった』

『なのに、あなたは』

『「なぜ、僕に話しかけてくれるの？」』

『「なぜ、僕を気にかけてくれるの？」』

……『青年は言いました』

『「……君は」』

『「なんだか、つまらなそうな顔をしている」』

フランス

！

フランス

……

フランス

（……私が、イギリスに話しかけた理由）

フランス

（たしか、こんなことだった気がする）

フランス

（つまらなそうで）

フランス

（どこか、寂しそうで）

フランス

（……誰かを求めている目をしてたから）

フランス

（………）

フランス

（……オルゴール）

フランス

（まだ持ってるかしら）

フランス

（……なーんて、持ってるわけないか）

とんだ茶番だったのかもしれない

それでも確かに

大切な思い出だった

フランス

（……助けなきゃ）

フランス

（……いや、違う）

フランス

（助けたいんだ……！）

フランスは魔道具を手に取り

フランス

（今度は、神様じゃない）

フランス

（私に誓う）

フランス

（今度こそ）

大切なひとを守るんだ…！！

コツコツコツ……

そう、牢を歩く音が響く

城は人がいないため、思いのほか静かだ

パラオ

……こんにちは

中国

……こんばんは、の間違いだろ？

パラオ

あぁ、確かにそうだね

中国

……兵隊長が、何か用？

ぶっきらぼうに捕らえられた中国はそう言う

兵隊長と、目を合わせる気もないらしい

その時

ガチャリ、と

鍵の開く音が鳴った

中国

……

中国

は？

パラオ

…

無言で中国を見つめるパラオ

それに、中国はかなりの不信感を抱いた

中国

……どういうつもりだ？

パラオ

どうもこうもない

パラオ

今なら逃げれるよ

中国

……なに考えてんの、お前

中国

我を逃がすってことは、裏社会のBOSSを逃がすってことだ

中国

そんなことしたらお前、クビどころじゃないだろ

パラオ

だろうね

パラオ

処刑されてもおかしくないかな

中国

だったらなんで

パラオ

……

パラオにじっと見つめられ、中国は言葉を止める

中国

な、なんだよ……

パラオ

……多分、私と君は同じ

パラオ

いや……僕も、こうなってた道が

パラオ

君と同じ道を歩んでいた可能性がある

中国

……どういうことだよ

中国

お前は兵隊長、我は裏社会のBOSS

中国

どう考えたって正義と悪の真反対

中国

客観的に見たら対比的存在だろ

パラオ

悪は正義で、正義は悪だよ

パラオ

絶対的に、悪と言えるものなんてないし

パラオ

絶対的な正義もない

パラオ

みんな手探りで、それぞれの正義を探して、それを守り続けてるんだ

中国

さっきからなにを…

パラオ

…この国で兵隊になっていなかったら

パラオ

僕も復讐に燃えてたかもしれない

中国

……は？

パラオ

アロティアへの復讐

パラオ

僕の恩人を奪った奴らへの復讐をね

中国

……

パラオ

……でも、そうはならなかった

パラオ

……僕は、幸運だったんだ

中国

……何が言いたいんだよ、お前

パラオ

……思い出したんだろう？

パラオ

恩人の本当の望みを

中国

…！

パラオ

……好きにしたらいい

パラオ

逃げるか、新しい人生を生きるか、責任を負うか……あるいはそれ以外の全く違う道

パラオ

他でもない、君が選ぶんだ

与えられた無限の選択肢

それに中国は戸惑い……

先代BOSSの言葉を思い出した

『世界が平和になればいい』

それが……本来、先代の想いだった

中国

……

中国

作戦は？

パラオ

作戦…？

中国

戦争

中国

アロティアとの

パラオ

！

パラオ

……

パラオ

参戦、するつもり？

中国

……

中国は黙秘する

だが、パラオはその姿から何かを感じ取った

パラオ

……魔法は、使える？

中国

…

中国

基礎だけなら

パラオ

そうか……わかった

そうしてパラオは

中国に作戦を話した

誰も死なないための

むちゃくちゃだけれど、彼らの想いで溢れた作戦を

中国

……それ、本当にうまくいくアル？

パラオ

さぁ？

パラオ

でも……いまのところ血は流れてない

パラオ

……それに、私は信じているから

パラオ

恩人に似た

パラオ

全く知らない誰かを

中国

……お前、噂に聞くよりバカだな

パラオ

ばっ……！？

パラオは心外という目で中国を見る

それを見て中国は

今まで見せてこなかった微笑みを浮かべた

だって

表情が似てたから

かつてのBOSSに

中国

せいぜい、生きろよ

パラオ

こっちのセリフだ

そして中国は

とある場所を目指した

パラオ

……

パラオは無線を手に取り

パラオ

『……これより、指揮官を変更』

パラオ

『カナダ王子の命を受け』

パラオ

『私、兵隊長パラオが』

覚悟を決めた