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家族愛/友愛系まとめ

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家族愛/友愛系まとめ

8 - またあの時の向日葵畑で

♥

360

2021年08月01日

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秋之助

あちぃ…

清史郎

この暑さも、感じるのは
これが最後かな

義彦

馬鹿を言うんじゃありません

横から聞こえたその声に 顔を上げる

清史郎

義彦

義彦

僕達はまた
ここに戻ってきます

義彦

…絶対

怒ったように こちらを見る義彦は

諭すみたいに そう言った

清史郎

叶えられるかも分からない
約束なんて

秋之助

でもさ

いつの間にか 秋之助も立っていて

秋之助

だからこそ、
頑張れるんじゃねぇの?

清史郎

……

義彦

しかし、そうは言っても
無闇矢鱈にするべきでもない

清史郎

難しいな

秋之助

考えても埒が明かねぇ

清史郎

…俺もさ、本当は

清史郎

3人で帰ってきて
またここで

清史郎

1面の向日葵畑
一緒に見たいよ

義彦

じゃあ、約束すれば
良いじゃないですか

義彦

そういう為のものでしょう

秋之助

よし!

秋之助

俺達は、何がなんでも

秋之助

一緒に!

秋之助

向日葵畑を見る!
んでバカ騒ぎする!

清史郎

秋之助…

義彦

バカ騒ぎまで入れますか

秋之助

なんだよ、
入れた方が楽しいだろ

清史郎

…ふはっ

出発前日になっても 変わらない2人に

思わず吹き出して

清史郎

賛成

自分も立ち上がる

義彦

清史郎まで…

秋之助

取り敢えず

秋之助

今日は飽きるまで
バカ騒ぎすっぞー!

秋之助が 俺と義彦の間に入って

肩を組んだ

義彦

暑いですけど!?

清史郎

いや本当そのとおり!

清史郎

秋之助暑い!

秋之助

最後とか言ってただろー

秋之助

楽しめよー!

清史郎

…この野郎!w

思い切り 秋之助の手を引っ張り

秋之助

ぅおっ!?

義彦

なっ…!

勢いで 3人とも向日葵畑に転がる

頭上で花を咲かせる たくさんの向日葵は

今まで見てきた中で

1番、綺麗に輝いていた

初めて、人を殺した

“死にたくなかった” ただそれだけで

自分のことで 精一杯だった

飛び交う悲鳴と 銃声と

倒れていく

ひと

ヒト

頭が

真っ白になって

清史郎

っああぁぁあああ!!!

夢中で 引き金を引いていた

それは義彦も秋之助も 同じだったようで

生き延びた後の 励まし合いが救いだった

大勢いた筈のこちらの人数が いつの間にか

半数ほどにも減った ある日

身体に異変が生じた

立つのにも時間を要し

身体の全てが 思うように動かない

大丈夫と言い張る俺を 指揮官に連れて行ったのもまた

義彦と秋之助の 2人だった

指揮官

そんな状態

指揮官

役に立てるわけが
ないだろう

清史郎

し、しかし!

2人とまだ

もう少しだけ

共に居たくて

指揮官

残るのは不許可だと
そう言っている

指揮官

明日

清史郎

指揮官

我が国への最後の船だ

指揮官

それに乗って
帰れ

清史郎

……

指揮官

返事はどうした

清史郎

…はっ

指揮官

集合!

義彦

はっ

秋之助

はっ

指揮官

……

向かおうとして 視線で止められた

清史郎

……

話している内容も どこか遠くに聞こえた

指揮官

我々は何としてでも

指揮官

一機でも多くの
敵を撃ち落とし

指揮官

一隻でも多くの
敵船を落とさねばならない!

指揮官

よって……

・ ・ ・

翌日

港まで見送りに来た2人は

『抜け出してきた』 と言って笑った

秋之助

生きてろよ

清史郎

なんで秋之助が言うんだよ

秋之助は微笑んだまま 何も言わない

義彦

…先に戻って
待っててください

義彦

向日葵、楽しみにしてます

清史郎

それは任せて

清史郎

義彦と秋之助も…

義彦

……

秋之助

……

清史郎

…何でもない

義彦

清史郎

義彦

約束してください

義彦

決して忘れないと

清史郎

え、は?

義彦

会えなくなった皆のことも

義彦

それから……

秋之助

俺らのこともな

清史郎

…何言ってんだよ

清史郎

なんでそんな、

清史郎

……

もう会えないみたいな なんて

言える訳もなくて

秋之助

叶えられるかも
分からない約束は

秋之助

しないって言ってたよな?

秋之助

忘れないでおくことなんて
出来ることだろ

清史郎

そうだけど…!

指揮官

お前ら何してる!

秋之助

おっと

義彦

僕達はもう戻ります

義彦

どうか、達者で

清史郎

おい、っ

秋之助

じゃーな

秋之助

いってくる

義彦

いってきます

去っていく2人の背中は

なぜか

もう二度と会えないみたいで

いつまでも

見えなくなるまで

見えなくなってからも

ずっと 見つめていた

今年も 目の前に広がるのは

あの時と同じ 向日葵畑

 

……それでどうなったの?

清史郎

日本に戻った俺は

清史郎

焼け野原になった向日葵畑を
必死に元通りにして

清史郎

ずっと、2人の帰りを
待っていたよ

清史郎

…報せが入ったのは
いつだったかな

清史郎

2人は特攻隊として……

清史郎

……

 

おじいちゃん?

清史郎

……いや、お前は
まだ知らなくていいな

 

…?

 

でも、おじいちゃんが
生きててくれて

 

私、嬉しいよ?

清史郎

そうか…ありがとう

清史郎

いいか、これだけは
憶えておいてほしい

 

なに?

清史郎

どんなに大切に想ったものも
人も、出来事も

清史郎

いつかは消えていってしまう

清史郎

会えなくなってしまう

 

うん

清史郎

でも

眩しい太陽を仰いで

あの時よりも 暑くなったなと感じる

清史郎

忘れなければ

清史郎

忘れることさえしなければ

清史郎

それらは

清史郎

心の中で、永遠に
在り続けるんだ

 

心の中…

清史郎

まだ難しかったかな

 

…ううん

 

忘れちゃダメなんだよね

清史郎

そうだ

ちらりと横を見れば 走ってくる女性の姿が見えた

清史郎

お母さんが来たよ

 

あ!

 

すみませんお義父さん

 

遊んでくださって
ありがとうございます

清史郎

いや、構わないよ

 

私達は先に
戻ってますね

清史郎

わかった

 

おじいちゃん、後でね!

清史郎

ああ、後で

手を繋いで 2人が先に戻っていくのを

微笑ましく見やる

これから先

あんなに辛い思いは 経験してほしくない

ちゃんと約束 守ってくれてるじゃないですか

清史郎

……!

久し振りだな! 向日葵畑も見事じゃねぇか!

清史郎

…頼まれたからな

生きててくれて 良かったです

間違っても まだこっちに来んなよ

清史郎

……わかってるよ

年を取って乾いた目に

じわりと水が滲んで

一雫

向日葵の黄色の上に

静かに落ちた

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