秋之助
清史郎
これが最後かな
義彦
横から聞こえたその声に 顔を上げる
清史郎
義彦
ここに戻ってきます
義彦
怒ったように こちらを見る義彦は
諭すみたいに そう言った
清史郎
約束なんて
秋之助
いつの間にか 秋之助も立っていて
秋之助
頑張れるんじゃねぇの?
清史郎
義彦
無闇矢鱈にするべきでもない
清史郎
秋之助
清史郎
清史郎
またここで
清史郎
一緒に見たいよ
義彦
良いじゃないですか
義彦
秋之助
秋之助
秋之助
秋之助
んでバカ騒ぎする!
清史郎
義彦
秋之助
入れた方が楽しいだろ
清史郎
出発前日になっても 変わらない2人に
思わず吹き出して
清史郎
自分も立ち上がる
義彦
秋之助
秋之助
バカ騒ぎすっぞー!
秋之助が 俺と義彦の間に入って
肩を組んだ
義彦
清史郎
清史郎
秋之助
秋之助
清史郎
思い切り 秋之助の手を引っ張り
秋之助
義彦
勢いで 3人とも向日葵畑に転がる
頭上で花を咲かせる たくさんの向日葵は
今まで見てきた中で
1番、綺麗に輝いていた
初めて、人を殺した
“死にたくなかった” ただそれだけで
自分のことで 精一杯だった
飛び交う悲鳴と 銃声と
倒れていく
人
ひと
ヒト
頭が
真っ白になって
清史郎
夢中で 引き金を引いていた
それは義彦も秋之助も 同じだったようで
生き延びた後の 励まし合いが救いだった
大勢いた筈のこちらの人数が いつの間にか
半数ほどにも減った ある日
身体に異変が生じた
立つのにも時間を要し
身体の全てが 思うように動かない
大丈夫と言い張る俺を 指揮官に連れて行ったのもまた
義彦と秋之助の 2人だった
指揮官
指揮官
ないだろう
清史郎
2人とまだ
もう少しだけ
共に居たくて
指揮官
そう言っている
指揮官
清史郎
指揮官
指揮官
帰れ
清史郎
指揮官
清史郎
指揮官
義彦
秋之助
指揮官
向かおうとして 視線で止められた
清史郎
話している内容も どこか遠くに聞こえた
指揮官
指揮官
敵を撃ち落とし
指揮官
敵船を落とさねばならない!
指揮官
・ ・ ・
翌日
港まで見送りに来た2人は
『抜け出してきた』 と言って笑った
秋之助
清史郎
秋之助は微笑んだまま 何も言わない
義彦
待っててください
義彦
清史郎
清史郎
義彦
秋之助
清史郎
義彦
義彦
義彦
清史郎
義彦
義彦
秋之助
清史郎
清史郎
清史郎
もう会えないみたいな なんて
言える訳もなくて
秋之助
分からない約束は
秋之助
秋之助
出来ることだろ
清史郎
指揮官
秋之助
義彦
義彦
清史郎
秋之助
秋之助
義彦
去っていく2人の背中は
なぜか
もう二度と会えないみたいで
いつまでも
見えなくなるまで
見えなくなってからも
ずっと 見つめていた
今年も 目の前に広がるのは
あの時と同じ 向日葵畑
清史郎
清史郎
必死に元通りにして
清史郎
待っていたよ
清史郎
いつだったかな
清史郎
清史郎
清史郎
まだ知らなくていいな
生きててくれて
清史郎
清史郎
憶えておいてほしい
清史郎
人も、出来事も
清史郎
清史郎
清史郎
眩しい太陽を仰いで
あの時よりも 暑くなったなと感じる
清史郎
清史郎
清史郎
清史郎
在り続けるんだ
清史郎
清史郎
ちらりと横を見れば 走ってくる女性の姿が見えた
清史郎
ありがとうございます
清史郎
戻ってますね
清史郎
清史郎
手を繋いで 2人が先に戻っていくのを
微笑ましく見やる
これから先
あんなに辛い思いは 経験してほしくない
ちゃんと約束 守ってくれてるじゃないですか
清史郎
久し振りだな! 向日葵畑も見事じゃねぇか!
清史郎
生きててくれて 良かったです
間違っても まだこっちに来んなよ
清史郎
年を取って乾いた目に
じわりと水が滲んで
一雫
向日葵の黄色の上に
静かに落ちた