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第1話 - あ

2023年12月22日

#恋愛

結城　真矢

マミ

サヤ

マミ

あんた、大学の第一希望の志望校、難しいんだって？

マミ

パパから聞いたんだけど

サヤ

今の時点では、そうなってる

サヤ

でも、私必ずこれから頑張って成績上げて、受かるから

マミ

そんなの、誰が保証する、っていうの？

マミ

成績も別にとびぬけて良いわけじゃないんだし、

マミ

挑戦校なんて、受かるわけないでしょ

サヤ

そんなことない！

サヤ

やってみないと、分からないじゃん

マミ

あのねぇ

マミ

ママ、浪人なんてさせられないからね？

マミ

もし、落ちたりなんかしたらどうするの？

サヤ

私は、何としてでも第一志望校に行きたいの

サヤ

もし、ダメだとしても自分でバイトしながら予備校も通うから、心配しないで

マミ

あのねぇ、理系の予備校なんて今授業料、いくらか知ってるの？

マミ

撮る授業料にもよるけど、1年間で100万円近く払う人もいるんだから

マミ

そんなんで、バイトしながら勉強も、なんて...

マミ

そんなこと、サヤにできるわけがないでしょ！

サヤ

やってみせるもん

サヤ

そもそも、全然学校の個人面談に来ないくせに、

サヤ

結果だけ見て、無理とか判断しないでよ

マミ

大学受験なんて、すべては結果なのよ

マミ

それまで、どんなに努力しても...

マミ

結果を出した人だけが最後、報われるの

サヤ

そんなこと、分かってるよ

マミ

分かってるなら、しっかり現実を見なさい

サヤ

なんで、最初からあきらめろ、みたいなこと言うの？

サヤ

せっかく頑張ってるのに...

マミ

頑張ってるなんて、そんなの自己満足でしょ？

マミ

そんなものからは、何にも生まれないのよ

マミ

高校受験とは違うのよ？

マミ

甘くないの

サヤ

甘くないのは、私も知ってるよ

サヤ

でも、まだ夏なんだし、可能性はあるじゃん

マミ

あるわけないでしょ

マミ

とにかく、今度の進路希望調査では、受験校は下げなさい

マミ

ママは面談に行けないけど、ちゃんと先生とも話すのよ

サヤ

また、面談には来ないんだ

サヤ

あのさ、ママって私と話しする気ないよね？

マミ

ママね、進路を決めるのに話し合いとか、別に必要ないと思うんだけど

サヤ

は？

サヤ

私のことなんて、どうでもいいの？

マミ

そうじゃなくて

マミ

さっきも言ったけど、大学受験はそう甘くないの

マミ

受験の幅も広いし、高校受験とは違って難易度も高いのよ

マミ

それなのに、いつまでも夢見てたらいけないって言ってるのよ

マミ

浪人なんてしたら、就活にも悪影響なんだから

サヤ

あのさ

サヤ

私がしたいことよりも、ママは自分の周りからの評価が気になるんでしょ？

マミ

は？何言ってるの？

サヤ

私がもしダメだったら、周りから何か言われて自分が恥をかくから、

サヤ

とでも思ってるんじゃないの？

マミ

違うわよ

マミ

浪人ってね、想像以上に辛いのよ

マミ

みんなが受かってるのに、自分だけは毎日予備校に通わないといけないのよ

マミ

メンタルがそんなに強くないサヤに、そんなの耐えられないでしょ？

サヤ

あのさ、なんで私が合格できない前提で話してるの？

サヤ

そんなに、私のことが信じられないの？

マミ

だって、テストの成績もとびぬけてよかったことなんてないじゃない

マミ

模試の成績だって、今まで一番いい判定でＤ判定でしょ？

マミ

波がありすぎるのよ

サヤ

いつも叱責ばっかりで、全然応援もしてくれない

サヤ

私だって、そんなママの言いなりになるのは嫌だから

マミ

でも、勝手に進路変えるなんてこと、ママ許さないからね！？

マミ

勝手なこと、するんじゃないわよ

～1週間後～

マミ

ちょっと！サヤ！

マミ

あんた、いつまで外にいるの！？

マミ

今、どこにいるの？

サヤ

塾が終わって、今近くのコンビニにいるの

サヤ

アイス食べたら帰るから

マミ

あんたね、夏休みだからって、

マミ

ダラダラしてる暇ないでしょ！？

マミ

そんなんで、よくママに反抗なんてできるわね

サヤ

ダラダラしてるわけじゃないし

サヤ

授業のあとに、みんなで自習して、そのご褒美にアイス食べてるだけじゃん

マミ

ご褒美って...

マミ

そんな勉強で疲れたって言うたびに、そんなことしてんの？

マミ

2日前だって、帰るの遅かったじゃない

マミ

今だって、もう23時過ぎてるのよ？

マミ

そんな自分に甘くしてるから、いつまでたっても成績なんて伸びないのよ！

サヤ

何それ...

サヤ

ママって、本当に私のこと叱ることしかできないんだね

サヤ

ほんと、呆れてしょうがないよ

マミ

褒められたかったら、模試で一校でもA判定くらいとってみなさいよ

マミ

悔しいんだったら、それくらい本気出してみなさい

サヤ

悔しいとか、そんなんじゃないよ

サヤ

ママがいかに私に興味ないのか、呆れてるだけ

マミ

は？

マミ

そうやって、すぐにママのせいにするんだから

マミ

1週間前に、先生からもらった電話でも聞いたのよ

マミ

娘さん、志望校は挑戦校のママでいいんですよね、って

マミ

私が言ったこと、何にも分かってないじゃない！

サヤ

だって、その場にいなかったママに発言権なんてないでしょ？

サヤ

指図なんてされたくないから

マミ

本当にもう...

マミ

どうして...こんないうこと聞かない子になったのかしら...

サヤ

頑固なのは、ママ譲りだね

マミ

あんまり、調子乗るんじゃないわよ！

マミ

とにかく、今すぐ帰ってきなさい！

サヤ

はいはい、

サヤ

もう帰るから

～1月末～

マミ

サヤ

マミ

もうそろそろ、志望校のこと本気で考えて

マミ

受ける大学のランク、下げるわよね？

サヤ

下げないよ

サヤ

私、このまま目指してる大学、受けたいから

マミ

もう、このままママの言うこと無視して大学受けるなら、

マミ

ママは、一切、手はかさないからね

サヤ

どうせ、ランクを落とした違う大学に行っても、同じことでしょ？

サヤ

どうせ、私のことなんか認めてくれないじゃん

サヤ

受かったとしても、ランクが低い大学だったら、

サヤ

私のこと娘だなんて思ってくれないんでしょ？

マミ

ママに認めてほしいんだったら、模試の判定くらいもっといい判定、取ってほしかったわ

マミ

もう、遅いんだろうけど

マミ

2次試験はもう約3週間後だし、そこでずべて決まるものね

サヤ

あのね、私だって最初と比べたら、かなり成績上がったんだから

サヤ

全くダメだぅたわけじゃないよ

マミ

それでも、まだまだ挑戦区域にいるのよ

マミ

それでも挑戦する、っていうならもう、勝手にしなさい

マミ

痛い目見たって、知らないんだから

~合格発表日～

マミ

サヤ

マミ

どうだったの？合否の結果は

サヤ

私、ダメだった

サヤ

受かんなかった

マミ

そう...

マミ

やっぱり、ママが言ったとおりね

マミ

受かるわけがないのよ

サヤ

何それ...

マミ

は？何が？

サヤ

その反応も、私が思っていた通りの反応だよ！

サヤ

やっぱり、最後までそんな私のこと、見下すようなことしか言わないんだ

マミ

見下すなんて、そんなつもりじゃないわよ

マミ

ごめんなさいね、心の声が出ちゃったわ

サヤ

もう、ママに何言われようと、もう一回挑戦する

サヤ

絶対に、受かるんだから

～30分後～

先生

塾でサヤさんの担任をしております、あの、サヤさんのお母さんですか？

マミ

はい、サヤの母ですが...

先生

あの、今サヤさんは家にはいますか？

マミ

えっと...いると思いますけど、どうかしましたか？

先生

そうなんですね...あの、合否のことでどうしても伝えないといけないことがあり、

先生

サヤさんに連絡したんですが、出なくて...

先生

すみません...失礼なことして

マミ

何でしょうか？

先生

サヤさんの受けた大学が、合否の受験番号で記載ミスがあったらしいんです

マミ

あっ、そうなんですね

先生

それで、僕の方でも一応、サヤさんに受験番号がないか見てみたんです

マミ

わざわざ、ありがとうございます

マミ

でも、うちの子はたぶん可能性としてはゼロに近いので...

先生

違うんですよ！

先生

サヤさん、合格していました！

マミ

えっ？

マミ

えっと...あのマヤが...

マミ

合格？していたんですか？

先生

そうです！

先生

本当に頑張っていましたもんね

先生

おめでとうございます！

マミ

いえ...そんなはず...

マミ

あの子が受かるなんて、そんなはずないですよ

先生

でも、サヤさんは最後の模試でも最終的に、C判定を取れていましたし、

先生

可能性は十分上がっていましたよ！

マミ

えっ？C判定？

先生

あれ？聞いていませんでしたか？

マミ

はい、今、初めて聞きました

先生

そうでしたか...

先生

あの、お母さんはサヤさんの受験する学部は、覚えていらっしゃいますか？

マミ

えっーと...

マミ

確か建築学部、でしたっけ？

先生

そうです

先生

ちなみに、どうしてその学部にしたのかは、聞いていますか？

マミ

理由、ですか...

マミ

確か、小学生くらいの時に町で見かけた家を見つけて、

マミ

あんな家に住みたいな、みたいな話をしたことがあるんです

マミ

その時に、私もあんなおうちを建てたいな、みたいなことは言ってましたね

マミ

でも、そんなの昔のことですし、関係ないと思いますよ

先生

いえ、まさにそれだと思います

マミ

え？

マミ

どういうことですか？

先生

建築学部なんて、そんな大変な学部を選んだことに、僕も理由が知りたかったんです

先生

そしたら、サヤさんはその時、

先生

パパとママが一生住めるような快適な家を設計したい、

先生

って言ってましたよ

マミ

え？あの子が？

先生

そうです

先生

建築士になって、最初に設計する家は2人のための家にする、って決めてます

先生

って自慢げに話してくれましたよ

先生

すごく、良い娘さんですね

マミ

そんなはずは、ないと思います...

マミ

だって、いつも私に反抗してくるし、

マミ

そんな親孝行みたいなこと、する子ではないんですよ

マミ

だから、何かの勘違いですよ

先生

でも、サヤさんは憧れの家のデザインとか、

先生

勉強の合間の息抜きにデザインしていたことも、ありましたよ

マミ

そう、なんですか？

先生

はい

先生

本当に、真剣に建築士を目指してるんだ、って思いました

先生

本気で、受験勉強も頑張っていましたよ

先生

なので、サヤさんのことはお母さんの方から、ぜひ褒めてあげてくださいね

マミ

はい...

マミ

ご連絡、ありがとうございました

先生

それでは、受験お疲れさま、とご本人にもお伝えください

先生

失礼します

マミ

はい、失礼します

～5分後～

サヤ

ねえ！ママ！

サヤ

私、第一志望の大学、受かってたみたい

サヤ

これで、もう実家からは離れるから、ママにも迷惑かけないよ

サヤ

だから、安心してね

マミ

サヤ、今までごめんね

サヤ

え？急に...どうしたの？

マミ

建築士になって、ママとパパのために家を設計してくれる、っていう夢、

マミ

まだ持っていてくれたんだね

マミ

すごく、嬉しいわ

サヤ

ママこそ...そんな昔の夢、覚えてくれてたんだね

サヤ

ありがとう

マミ

もちろん、しっかりと覚えてるわよ

マミ

サヤが頑張ったからこその結果よ

マミ

大変化もしれないけど、いつもママとパパがついてるから

マミ

頑張るのよ

サヤ

うん、ありがとう

サヤ

頑張って大学で勉強して、3人で住めるような立派な家、設計するね

～後日談～

サヤ

私は大学を首席で卒業し、卒業後はすぐに建築家として事務所で働き始めました

サヤ

早く独立をしたくて実力を上げたかったので、必死に働き、事務所で働いて3年後に、

サヤ

独立をして建築士としてフリーで働いています

サヤ

そして、今はその仕事場は私が設計した家の一角にあります

サヤ

ママ、パパ、私の3人で居心地のいい家を設計でき、最高の親孝行をできたと思っています

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結城　真矢

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