五条悟は上から任務を言い渡されていた。 任務内容は『不自然な痕跡を残して消滅する呪霊』の調査である。正直消滅しているなら下手に関わりたくない、というのが本音だったが任務は任務なので大人しく消滅した地点まで赴いた。 日も落ちかけ、月が見えるようになった時刻 五条は繁華街をのんびりと歩いていた。繁華街は夜からが本番だというように活気づいている。別にサボっている訳ではない。 ここから微量だが呪霊の気配を察知したのだ。 気配の感じからして4級以下だろう。いつもなら放置する呪霊だっが様子がおかしい。 ゆっくりと気配が消えかかっているのだ。 気配を探りながら歩いた先にいたのは1人の少女と無抵抗の呪霊。
五条 悟
ポツリと零した一言に少女は振り返る。路地裏にいるせいで見えずらいが歳の頃は15~16。品のある黒髪に燃え立つような赤色の瞳。身長は小柄でどこか幼さを感じさせる。 そんな少女の両手から今まさに呪霊が消えようとしていた。
○○
ころりと鳴る鈴のような声だった。いささか不信感に彩られてはいるが耳に馴染む澄んだ声。
五条 悟
○○
五条が問うと少女はずいっと顔を近づけ、驚いたように目を丸くした。
五条 悟
○○
五条 悟
少女の言葉におや?と子首をかしげる。先程少女が持っていたものは呪霊だ。ちーちゃんとは一体なんなのか。
○○
五条は思った。この子は純粋すぎる。 小さいとはいえお世辞にも可愛いとは言えない化け物に「ちーちゃん」と名付け、可愛がれるのだ。
そして恐らく自分が呪霊を祓っているとは少しも思っていないのだろう。 なぜ不自然な痕跡を残しているのかはまだ分からないが原因は見つけた。後は話を聞いて今後を決めよう。
五条 悟
○○
五条 悟
暗くはなっているが手短に済ませればすぐ終わると思っていた。もし遅くなっても自分が送ればいいと。 だが○○は手首の腕時計を確認すると慌てたように顔をあげた。
○○
先生・・・? ○○の言葉が引っかかる。そうこうしている内に○○は文字を走らせた紙をを押し付けて走り去っていった。 『星空園 住所ーーーーーーーーー明日は休みだから朝来て下さい!』 メモに書かれていた場所は児童養護施設『星空園』 彼女は施設で暮らしているらしい。先生とは施設の職員だろう。 貰ったメモを読み返し明日の朝『星空園』に向かうよう伊地知に連絡をした。
~次の日~ 星空園に着くとすぐに客間へ通された。笑いジワの深い人の良さそうな園長に挨拶をして○○を待つ。園長曰く、五条が着いた頃はまだ寝ていたらしい。 少しして足音と共に○○が入ってきた。焦って来たのだろう寝癖がそのままだ。
五条 悟
○○
頭をかきながら苦笑を漏らす。とりあえず○○を前に座らせて園長の退出を確認。 五条は改めて口を開いた 。
五条 悟
○○
五条 悟
そこまで言うと○○の表情がサッと曇った。恐らく今まで可愛がっていた『ちーちゃん』を祓っている人が目の前にいて、ましてや自分が無意識に祓っていると言われて困惑したんだろう。 無理もないが事実なので話を進める
五条 悟
○○
ポツポツと話し出す○○。生まれつき見えるという事は遺伝か何かだろうか?触ったら大人しくなるというのも引っかかる。
五条 悟
○○
不意に俯き悲しそうに瞳を揺らした。目隠し越しに表情を観察すると微かに涙も溜まっている。
五条 悟
○○
とうとう溜息までつきはじめる。相当参っているらしい。 だが、彼女の話から理由は大体察しがついた。 『呪吸操術』 はるか昔誕生した術式で、特別強い訳では無いが自分が強くなればなるほど使い勝手がよくなる。 呪力を持っているものから呪力を吸い上げ、自分の力に変換できる術式だ。
しかし誕生してすぐ後継者が消え、術式は絶たれたはず。 もしや彼女はその生まれ変わりなのか・・・?
もしもその生まれ変わりなのだとしたら全て合点がいく。
呪吸操術を施して祓われた呪霊は死体が残らず塵のように消えるのだ。その為、不自然な痕跡を残して消滅
五条 悟
○○
五条 悟
その一言で彼女は泣き出しそうな表情に変わった。
五条 悟
○○
五条 悟
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 突然のお誘いだった。 私は確かに呪霊と言われてる生き物が見える。でも今まで呪術なんて教わった事もなければ関わった事もなかった。そんな私が呪術師になんてなれるのか。
正直な話不安しかない。
でもこの人はきっと嘘を言っていないと思った。それは直感的に、根拠はないけれど発言1つ1つに私を思いやってくれているのが伝わる。
○○
気づけば私はそんな事を口走っていた。 怖いのも痛いのも嫌い。1人になるのなんて・・・孤独なんてもっともっと嫌い。
でも私なんかに出来ることがあるのなら全力でやり切りたい。それは私に生を実感させてくれるから。
五条 悟
五条さんは薄く微笑んでそう言ってくれた。
私の決意はもう固まっている
○○
五条 悟
五条さんはその後園長に挨拶と話を済ませて帰っていった。私は明日行く高校へ不安と期待を混ぜて荷造りを始める。
荷造りが終わって就寝する時ふと思い出した。
あれから1度も先生達と会話を交わしてないことを・・・
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