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律
12
#なりきり注意
らお🐦⬛🎭
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コメント
1件
わあ……第1話からすごい読後感です。キセキの世代って呼ばれる天才たちが、当たり前のようにスタメンに君臨している日常が丁寧に描かれているなかで、最後にどんでん返しのように現れる凪くんの正体。特に「可愛いトカゲ」のセリフ、心臓にきました。彼がずっと手加減してバスケしていたって事実だけで、もうすべての前提が覆る感じがたまらないです。文体の緩急も巧みで、体育館の空気が震える描写に引き込まれました。続きが気になります🌷
帝光中学校の第一体育館。そこは「キセキの世代」と呼ばれる、十年に一人の天才たちが集う聖域だった。今日も今日とて、コートの上では常人離れした激しい音が響き渡っている。
桃井さつき
桃井さつきがスコアブックを片手に、スポーツドリンクを配る。
黄瀬涼太
青峰大輝
青峰大輝がドリンクを一気に飲み干し、頭からタオルをかぶる。
赤司征十郎
緑間真太郎
赤司征十郎
いつも通りの騒がしい日常。誰もが自分たちの才能を疑わず、自分たちこそがこの時代の頂点だと信じて疑わない。そんな彼らの視線の先、サブコートのゴール下で、静かにシュート練習を繰り返す一人の少年がいた。寒露凪。キセキの世代と同じ2年生でありながら、一軍のベンチを温めることが多い、目立たない男。
黄瀬涼太
黄瀬が床に寝転んだまま、不思議そうに凪の姿を見つめる。
桃井さつき
桃井が少し寂しそうにスコアブックに目を落とす。凪のスタッツは、いつも平均的で、決して悪くはないが、突出した数字が一つもないのだ。
緑間真太郎
青峰大輝
青峰が退屈そうにボールを人差し指の上で回しながら、ポツリと呟いた。
黄瀬涼太
青峰大輝
紫原敦
紫原敦が大きな体をベンチに沈め、ポテトチップスを口に放り込みながら不満げに声を漏らす。
赤司征十郎
赤司が静かにそれを嗜める。だが、赤司の目は、ずっとサブコートの寒露凪から離れていなかった。赤司の「天帝の眼(エンペラーアイ)」を持ってしても、凪という男の底が見えない。いや、底が見えないのではない。「何も無い」ように見えるのだ。それが、逆に不気味だった。その時、体育館の重い防音扉がギィと音を立てて開き、監督の白金耕造が入ってきた。その顔は、いつも以上に険しく、真剣そのものだった。
監督の白金耕造
その重々しい声に、部員たちが一瞬で緊張感を取り戻し、監督の前に整列する。キセキの世代の面々も、それぞれの立ち位置についた。
監督の白金耕造
その言葉が落ちた瞬間、体育館の空気がピキリと凍りついた。
桃井さつき
桃井が思わず、持っていたペンを落としそうになりながら声をあげる。黄瀬も、自分が外されたことに驚き、目を丸くしている。
赤司征十郎
赤司が、一歩前に出て白金監督を真っ直ぐに見据えた。その瞳には、決定に対する明確な疑問が宿っている。白金監督は深く、本当に深くため息を吐いた。そして、キセキの世代の面々を、どこか哀れむような、あるいは恐れるような複雑な目で見つめた後、サブコートから歩いてくる凪を一瞥した。
監督の白金耕造
凪は手元にあったボールを、両手で丁寧にカゴに戻すと、一歩一歩、ゆっくりとした足取りで歩いてきた。その表情には、スタメンに選ばれた緊張もなければ、キセキの世代と並ぶ高揚感もない。ただ、深く静かな、底の知れない黒い瞳が、そこにあるだけだった。
寒露凪
凪のその、あまりにも普通すぎる態度が、逆に青峰の神経を逆撫でした。
青峰大輝
青峰が牙を剥くように挑発的な笑みを浮かべる。だが、凪はそれに怒る風でもなく、いつものように穏やかに、少しだけ申し訳なさそうに微笑んだ。
寒露凪
青峰大輝
青峰はフンと鼻を鳴らし、凪から顔を背けた。だが、誰も気づいていなかった。白金監督の手が、ほんの少しだけ震えていたことに。
翌日、練習試合の会場である体育館は、異様な熱気に包まれていた。対戦相手の上崎中学校は、全員が中学生とは思えないほどの巨体を持ち、その目つきは勝利への執念というよりも、相手を叩き潰すという凶暴性に満ちていた。
モブ1
相手のセンターが、紫原の前に立ち塞がりながら下品な笑い声をあげる。
紫原敦
赤司征十郎
赤司が冷淡に指示を出す。凪は「了解」とだけ短く答え、コートの隅のポジションへと移動した。試合開始のホイッスルが鳴り響く。序盤は、いつも通りの帝光中学校の独壇場だった。赤司の完璧なゲームメイクから、青峰が野生的なドライブで相手を置き去りにし、緑間が美しい放物線を描く3ポイントを沈める。紫原はゴール下で絶対的な壁となり、相手のシュートをことごとく叩き落とした。
青峰大輝
青峰が相手のディフェンスを軽々と抜き去り、ワンハンドダンクを叩き込む。スコアは一気に開き、誰もが帝光の圧勝を確信した。ベンチの黄瀬も、「やっぱり俺が出なくても余裕っすね」と退屈そうに欠伸をなだめている。
しかし、上崎中もそのまま引き下がるようなチームではなかった。彼らの真の恐ろしさは、点差が開いてからの、手段を選ばないラフプレーにあった。第2クォーターの中盤、ルーズボールを追いかけた黄瀬(この時メンバーチェンジでコートに入っていた)の前に、相手のフォワードが故意に足を投げ出した。
黄瀬涼太
黄瀬が体勢を崩し、コートに激しく叩きつけられる。ボールはそのままサイドライン際へと転がっていった。
モブ1
相手の巨漢選手が、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながらボールを拾い上げ、そのまま無人の帝光ゴールへとカウンターを仕掛けようとした、その瞬間だった。
――ドンッ!!!!!!!
体育館全体の空気が、一瞬で、完全に爆ぜた。それは、物理的な爆発ではない。だが、体育館にいた観客、ベンチの控え部員、審判、そしてコート上の両チームの選手全員の肌が、ビリビリと焦げるような激しい衝撃に襲われた。あまりの恐怖に、全員の呼吸が強制的に止められる。
黄瀬涼太
床に倒れていた黄瀬が、目を見開いたまま固まる。先ほどまでニヤニヤと笑いながらボールを持っていたはずの、上崎中の巨漢選手が、ボールを持ったまま、その場に崩れ落ちるようにへたり込んでいた。彼の体は、ガタガタと小刻みに震えている。その顔は完全に血の気を失い、まるで巨大な、天を突くような捕食者を目の前にした、哀れな小動物のように、恐怖で涙を流していた。その恐怖の中心に、いつの間にか立っていたのは、寒露凪だった。
寒露凪
凪の声は、いつも通り、信じられないほど穏やかだった。だが、その背後に、コート上の全員が確かに「視て」しまった。体育館の天井を突き破らんばかりの、漆黒の鱗に覆われた、古の、巨大な、世界の終わりを体現したかのような『竜』の幻影を。
桃井さつき
ベンチにいた桃井は、その圧倒的な「圧」に気圧され、悲鳴すらあげられず、シートに深く沈み込んで胸を押さえていた。過呼吸になりそうなほどの恐怖が、彼女の小さな体を支配している。コート上の青峰、緑間、紫原、そして赤司すらも、その場で完全に硬直していた。一歩も動けない。指先一つ、動かすことができない。彼らの持つ突出した才能、そして野生の勘が、脳細胞の全てを使って、目の前の存在に対して最大級の警報を鳴らし続けている。
青峰大輝
彼らの本能が、そう絶叫していた。十年に一人の天才たちが、ただの「捕食される側の弱者」として、そこに立ち尽くすしかなかった
青峰大輝
青峰が、額からボタボタと滝のような冷汗を流しながら、今にも折れそうな心をひっしに繋ぎ止め、絞り出すように声を震わせた。凪は、床に転がったボールを、片手で軽々と、まるで綿毛でも扱うかのように拾い上げた。その何気ない仕草一つで、体育館の空気がさらにメキメキと音を立てて重くなる。
寒露凪
凪が軽く、手首の返りだけで放ったボール。それは青峰の胸元に、全くの無音で、完璧な回転で収まった。だが、青峰はそのボールをキャッチしたものの、その手はガタガタと震え、ボールを落としそうになっていた。
寒露凪
凪は自嘲気味に、少しだけ寂しそうに笑い、自陣のコートへとゆっくり歩いていく。その背中は、あまりにも大きく、そして遠かった。
寒露凪
赤司が、その人生で初めて、両方の瞳を驚愕と屈辱、そして底知れぬ恐怖に染めて、凪の背中を睨みつけた。彼の「天帝の眼」が、凪の周囲の未来を予知しようとした瞬間、脳裏に映ったのは、全ての未来が黒い炎で焼き尽くされる絶望の光景だけだった。
赤司征十郎
寒露凪
凪が、ゆっくりと振り返る。その瞬間、彼の瞳が、人間のそれから完全に変貌した。まるで生物の頂点に君臨する古の巨竜のように、縦長の細い瞳孔を持つ、黄金色の瞳が怪しく、禍々しく輝いた。
寒露凪(竜人)
緑間真太郎
緑間が息を呑み、一歩後退りする。彼のラッキーアイテムなど、この圧倒的な暴力の前の前では、何の慰めにもならなかった。紫原はお菓子を食べる手を完全に止め、本能的な恐怖に全身をガタガタと震わせ、今にも泣き出しそうな顔で凪を見つめていた。あの、誰よりも巨大な紫原が、小さく縮こまっていた。
寒露凪
凪がふっと、小さく息を漏らした瞬間、体育館を支配していた、あの精神を押し潰すような重圧が、嘘のように消え去った。空気が軽くなり、全員が激しく咳き込みながら酸素を肺に送り込む。だが、キセキの世代の胸に深く、深く刻まれた恐怖と、絶対に埋めることのできない「格の違い」は、二度と消えることはなかった。彼らが「キセキ」ともてはやされ、天狗になっていたその裏側で。本物の「神話」が、静かに牙を隠して、彼らの浅い才能を見下ろしながら、ただ笑っていたのだった。