タケ
ちょっと
タケ
アキさんほんとになんもできないよ
ジョウ
今仕事中なんだけど
ジョウ
アキがどうかした?
タケ
どうかしたのも何も
タケ
わたしが庭で育ててる野菜の手入れしといてってお願いしたら
タケ
野菜の間引きの仕方も知らないっていうのよ
ジョウ
そりゃ好きじゃなきゃ知らないこともあるでしょ
ジョウ
アキは昔から東京育ちモデルなんだから畑作業したことないんじゃない?
タケ
そんな子いるの?
タケ
やだねわたしの若い頃は女は誰でも出来るのが常識だったわよ
ジョウ
いつの話だよ
ジョウ
母さん常識は変わるんだよ
タケ
あんなのただのポンコツロボットよ
ジョウ
そんなこと言うなよ
ジョウ
俺はアキに十分満足しているしこれからも支えていきたいと思ってるんだから
タケ
ジョウくん、少し疲れてるみたいね
ジョウ
というか庭の野菜も母さんがうちへ引っ越してくる時に
ジョウ
趣味が欲しいからってわざわざ庭広げてスペース作ったんじゃないか
ジョウ
母さん自分でやりなよ
タケ
わたしは水をちゃんとあげてるわよ
タケ
でも年取ると屈んでする作業は向いてないのよ
ジョウ
とにかくあんまりアキをいじめないでくれ壊れやすいんだ
ジョウ
姑と一緒に暮らすなんてアキも肩身狭い思いしてると思うよ
ジョウ
母さんももう少し気を遣ってやってよ
ジョウ
俺もなんとか頑張るからさ
タケ
変な話ね
タケ
わたしなんて義母さんからいろんなこと学べてありがたかったわよ
タケ
最近の子は年上の人を敬うって気持ちが足りてないんだから
タケ
ガメツイ女が増えたわよ
タケ
大体旦那の母親の世話をするのもあいつの仕事でしょう
ジョウ
世話をされるのが当然だって考えを改めてくれって話
タケ
ジョウくんも変わっちゃったわね
タケ
昔はあんなにお母さん大好きっていってくれてたのに
ジョウ
母さんの世話をするのは俺の仕事だよ
ジョウ
でも働かなきゃいけないから昼の間はアキに頼んでるんだ
ジョウ
だからこれから不満があったらアキじゃなくて俺に当たってくれ
タケ
ジョウくんにひどいこと言えるわけないじゃない
タケ
大丈夫よなんとかやるから
ジョウ
頼むよ母さん
〜その後〜
ジョウ
アキ大丈夫か?
アキ
ジョウくんお仕事お疲れさま
ジョウ
ありがとう
ジョウ
母さんにまた意地悪されなかった?
アキ
意地悪なんかされてないよ
アキ
さっき怒られちゃったけどね
ジョウ
あんま気にしなくて良いからな
ジョウ
頭が少し古いんだよ俺の母さん
アキ
何も知らなかったわたしがわるかったの
アキ
まさか野菜を育てるために野菜を抜かなければならないとは驚きだね
ジョウ
次からできるだけ母さんにやらせるからさ
アキ
お義母さんわたしのこと嫌いだよね
アキ
何も十分にできないから怒られてばっかり
ジョウ
大丈夫アキは十分すぎるくらいによくやってくれてるよ
ジョウ
助かってるありがとう
ジョウ
ごめんな母さんと住むことになっちゃって
アキ
全然気にしないで!
アキ
一緒に住むってことは仲良くなれるチャンスも多いってことだもんね
ジョウ
ほんとありがとう
ジョウ
大好きだよ
アキ
わたしも!お仕事頑張ってね
〜次の日〜
タケ
アキさん今どこへお出かけしていらっしゃるのかしら
アキ
おはようございますお義母さん
アキ
今スーパーから帰っているところです!
タケ
お茶が切れていますけど
アキ
すみません!ちょっと見落としてて買い忘れてました
アキ
でも今ちゃんと購入完了いたしましたのでご安心を!
アキ
すぐにお届けいたします!
タケ
アキさんわたしが毎日お茶を飲んでいることお知りでしたよね
タケ
それで買い忘れるなんてことあるのかしら、相変わらず不良品ね
タケ
わたしにこの家を出ていけと言いたいのかしらね
アキ
ごめんなさい!
アキ
本当にそんな他意はありません!
アキ
わたしが普段飲まないのでチェックし忘れていただけなんです
タケ
嘘おっしゃい
タケ
ああ寝起き一番で飲むお茶が毎日の楽しみでしたのに
タケ
わたしの楽しみを無駄にしてくれてどうもありがとう
アキ
ありがとうなんですか?いえいえ
タケ
皮肉よ阿呆ね
アキ
すみません!
タケ
なんならお茶を飲むために起きているみたいなところもありますのに
タケ
朝起きてお茶がないと気づいた時のわたしの悲しさといったら
タケ
漆黒
アキ
先日お隣さんにいただいた紅茶ならありますけど
タケ
あんな西洋かぶれのいけすかない濁り汁を啜れますか!
タケ
ふざけるのも大概にしていただけます?
タケ
それに掃除も棚の下、埃が溜まっていましたよ
アキ
棚の下ですか…
タケ
そうよ普通なら棚を動かして下の埃を全部拭くでしょう?
アキ
うちの棚デカすぎてジョウくんでも動かせないんですよすみません
タケ
ジョウくんのことをジョウくんって呼ばないでちょうだい!
アキ
すみません!
アキ
え?ジョウくんのことをなんて呼ぶなって?
タケ
ジョウくんと呼ぶなと言いました
タケ
ジョウくんをジョウくんと呼んで良いのは母親であるわたしだけです
タケ
大体亭主をくん呼びするなんて最近の女性は常識というものをご存じないようね
アキ
すみません
アキ
でも主人にジョウくんと呼べと言われていたので…
アキ
アップデートするまでに時間がかかるかもしれません
タケ
本来嫁とは亭主を敬うものです
タケ
それをくん呼びだなんて図々しいにも程があります
タケ
以後気をつけるように
タケ
さっさと帰ってきてお茶を入れなさい
アキ
わかりました!
タケ
あと目上の人に「!」コレつけない!
アキ
はい!
〜次の日〜
ジョウ
アキ
アキ
ジョウどうしたの?
アキ
お仕事お疲れ様
ジョウ
なんか怒ってる?
アキ
全然怒ってないよジョウどうしたの
ジョウ
呼び捨てになってるから
ジョウ
昨日の夜から
ジョウ
仕事から帰ってきた時びっくりしちゃった
ジョウ
やっぱり無理させすぎちゃった?
アキ
違う違う怒ってないよ!
アキ
昨日お義母さんにジョウに「くん」をつけるなって怒られちゃったから
アキ
呼び方変えないとって思ったんだけど
アキ
まだ思いついてないからとりあえず今は何もつけてないの
ジョウ
アキちゃんはそういうシステムでできてるんだね
ジョウ
気にしないで呼びやすいので呼んで
ジョウ
怒ってなくてよかった
アキ
本当!?助かった〜
アキ
ジョウはやっぱりくん付けないとしっくりこないよ
アキ
ありがとう!
ジョウ
守りたいこの命!
アキ
どうしたの?
ジョウ
ごめん急に魂の叫び出ちゃった
〜その後〜
タケ
アキさん今どちら?
アキ
今お家ですよ
アキ
お義母さん出かけたんですか?
タケ
一階で茶を飲んでるわよ
アキ
奇遇ですね私二階で洗濯物しています!
タケ
同じ家に住んでるんだからそらそうでしょうよ
アキ
そうですね
タケ
机の上にプリンのゴミが出たままですから早く捨ててちょうだい
タケ
このままだと虫がたかります
アキ
お義母さんプリン召し上がられたんですか?
タケ
先ほど冷蔵庫で見つけたものですから
アキ
私のプリン…
タケ
誰のお金で買ったものですか
タケ
ジョウくんでしょう?
タケ
つまり厳密にいうとあなたのプリンではなく私の息子のプリンです
アキ
そういうものなのですか
タケ
とにかく早く片付けてちょうだい
アキ
すみませんまだ洗濯物が畳終わってなくて
アキ
そのまま次の洗濯物も回しちゃいたいのでご自身でしていただいても良いですか!
アキ
すみません!
タケ
無理よ私もう和室帰っちゃったもん
タケ
それに家事は嫁の仕事よ
アキ
ゴミを捨てるぐらいはして欲しいんですが
タケ
もういいわ立ってなさい
アキ
え?
タケ
洗濯物もせずその場に立ってなさい
タケ
ゴミも捨てれないんでしょう?
タケ
何もしないならその場で反省するまで立ってなさい
タケ
スマホも触るんじゃないよ
タケ
一歩も動くんじゃないよ
タケ
わかった?
アキ
反省するまでですか…
アキ
わかりました!
タケ
全く本当にばかで使えない子だよ
〜数時間後〜
タケ
ジョウくん!
タケ
やばいよ!
タケ
あなたのお嫁さんやばい人だよ!
タケ
救急車、救急車呼んで!
ジョウ
どうしたの母さん!?
ジョウ
何事!?
タケ
アキさんはとんでもなくやばいわ
ジョウ
事故ったのか!?
ジョウ
すぐそっち行くから!
タケ
違う違うの!
タケ
もう5時間はたったまま固まってるのよ!
ジョウ
へ?
ジョウ
どういうこと?
タケ
私がアキさんに反省してろって命令したの!
タケ
その場から何もせず一歩も動くなって
タケ
そんなの普通少し立ったら私の前きて謝るでしょ!?
タケ
なのに1時間2時間立っても2階から降りてこないから
タケ
あの女私の命令無視して洗濯物してるなと思って様子を見に行ったの
タケ
そしたら!
タケ
まだ立ってた
ジョウ
それはやばいな
タケ
それで目の前で怒鳴り散らしてやったのよ、不良品めが!って
タケ
あんたこんな時間まで何してるのよ洗濯物もまだ途中じゃない!って
タケ
そしたら
タケ
「すみません、でもまだ反省したって言えるほど納得できてないんですよね」
タケ
って言ったっきりまた動かなくなっちゃったのよ!
ジョウ
なんだよそれ!
ジョウ
ちょっと待ってくれどういうことなんだ
ジョウ
我が家では一体今何が起きてるんだ
タケ
私もわからないわよ!
ジョウ
大体なんで母さんはアキにそんな命令をしたんだ?
タケ
それは
タケ
プリンを片付けなかったから
ジョウ
は?
タケ
私が食べたプリンを片付けなかったから…
ジョウ
なんだよそれ
ジョウ
母さんおかしいよ
タケ
違うのよジョウくん私は年寄りで立ったり座ったりが体に良くないから
ジョウ
あんた登山サークル会長だろ!?
ジョウ
完全にアキをいじめる為ってわかるんだよ!
タケ
でもねジョウくん
ジョウ
いつまでジョウくん呼びなんだよ!
ジョウ
良い加減やめてくれ!
ジョウ
俺もう27だぞ!
タケ
27なんてまだ子供じゃない
ジョウ
アキなんて24だ!母さんは子供に自分の食べたゴミを片付けさせるのかよ!
ジョウ
母さん別居しようやっぱり
タケ
へ?
ジョウ
母さんには悪いけど俺はアキの生活を守りたい
ジョウ
もう何時間も立ちっぱにならなくていい生活を送ってあげた
ジョウ
まだ他人の親の世話に時間を捧げさせていい年齢じゃないよ
タケ
そんな
タケ
じゃあ私はコレからどうすればいいの
ジョウ
遠くないところに家借りてあげるからそこに住んでくれ
タケ
こんな老人を一人にするのかいしかも母親を
ジョウ
老人老人って母さんまだ55だろ!
ジョウ
早くに俺産んだんだから
ジョウ
普通にまだ働いてるぞその年齢だったら
タケ
待ってくれよ
タケ
私を捨てないでくれよ
ジョウ
待って
ジョウ
じゃあ救急車は?
ジョウ
さっき救急車呼んでくれって言ってたよな
タケ
そうだよ
タケ
私があのポンコツにむかついて彼女を蹴飛ばしたんだ
ジョウ
それで怪我を!?
タケ
ああポッキリとね
タケ
私の足が逝っちまったんだ
タケ
あんな鉄の塊みたいなやつを蹴った私がアホだったよ
タケ
早く救急車をよんどくれ!!!!!
ジョウ
わかったよ
ジョウ
呼ぶけどさ、なんで自分で呼ばなかったの?
タケ
この家の住所知らないんだ
ジョウ
母さんもアキより足りないところがあるみたいだね
タケ
すみませんでした…
〜後日談〜
ジョウ
その後私が仕事から家に帰るとまだ二階に立ち尽くしたアキがいました
ジョウ
アキは私が帰ってきたのを見ておかえりと微笑んだ後また固まってしまいました
ジョウ
うちのアキはなんだか変で明らかに様子がおかしいですが
ジョウ
とても良い子で私の大好きな嫁です
ジョウ
いつかアキが動き出すその日まで私は待ち続けます
ジョウ
一度アキのカスタマーサービスに連絡したのですが、
ジョウ
どうやら搭載されていたハードコアが矛盾的な命令を処理するのに時間がかかってしまうみたいです
ジョウ
アキは私の大切な嫁です
ジョウ
せっかく高いお金で買った最先端家政婦アンドロイドなので簡単に廃品にはできませんよね
ジョウ
母親は今一人で離れのアパートに暮らしてもらっています
ジョウ
私からお金の仕送りをしていますが最近コンビニのアルバイトを始めたそうですよ
ジョウ
これで私とアキの二人の幸せな家庭は誰にも壊させません