村長
ほほーう。その様な儀式があるのですな。こりゃー大変だー。

ジン
ええ。まぁ。

お姉さん
ねーお父さん大変でしょう?
だから色々とこの世界の教えてあげたら?

村長
まぁーのー。
それもいいかもしれんな。
そーいえば、あやつはどこへいった?

お姉さん
あら?そういえばあの子どこに行ったのかな?

村長
また門の周りをウロウロしているかもしれん。ちょっと見てきてくれ。

お姉さん
はーい!
じゃぁゆっくりしていってね!

ジン
あ、ありがとうございます………

村長
如何されたか??

ジン
あ、いえ!すみません。

村長
……君は……“ここの”者かい?

ジン
え??

村長
大丈夫、怒ったり追い出したりはせんよ。単純に知りたいだけじゃ。

ジン
えっとそれは。

村長
……なるほどのぉ。
その反応で察しがつくわい。

ジン
……

村長
ハッハッハッ!
実はの。お客が来るなんて滅多にないのじゃ。

ジン
そうなんですか?

村長
そうじゃ。
だがここが田舎だからじゃない。

ジン
え?

村長
我らが鼠族だからじゃ。

ジン
鼠族だから?

村長
鼠族は昔から忌み嫌われておる。
ここに村があるのは昔から嫌われて、町々から追い出された結果なのじゃ。

ジン
そんな……

村長
昔は都会や色々なところに鼠族はおった。仲良く暮らしていたのじゃが、ある時に“猫族”が奮起を起こしての。

ジン
猫族が?

村長
そうじゃ。忌々しい鼠族を街から追い出せとな。
もう何十年も前の話じゃ。
それ以来猫族とは仲は悪いのじゃが、今となっては会いもせんからの。
どうでもよくなったわ。

ジン
……

村長
じゃがもしお前さんが猫族の差金だったり、この村を脅かす様な事をした日にはワシもタダではあかんぞ。

ジン
絶対にないでしそんな事はしません!

村長
そうか……すまんの!!
変な事言ってしまったわい!

ジン
あの……

村長
なんじゃ?

ジン
猫族の事はよくわかりました。ありがとうございます。
ただ一つ気になる事がありまして。

村長
?

ジン
その、鼠族はどこが鼠なのでしょうか?俺と…私とあまり変わりようがないのですが?

村長
……ハハハなんじゃそんな事か!

ジン
え?

村長
そうじゃな。では鼠族と言われる所以を見せてやろうかのぉ。

ジン
え?

村長
驚くなかれ。
はぁーーーーーーーーー!!!

ジン
ぐ!!(なんだ!?すごいパワーを感じる)

村長
どこを見ておる。

ジン
え??

村長
お主の後ろにおるぞ。

ジン
そんなまさか?!

振り向くとそこにいる村長は鼠の尻尾と耳をした獣人となっていた。
ジン
耳ぃーーー!!
し、しっぽーーーー!

村長
そりゃーそうじゃ鼠じゃからの。

ジン
いつの間に後ろに…
か、かわいい。

村長
お主、気持ち悪いこと言うの。

ジン
あ、すみません!!

村長
ふぃーーー。

ジン
あ、戻った。

村長
所謂戦闘モードになると、その“種族”の獣人化して動ける様になるのじゃ。

ジン
なるほど!!だから尻尾と耳が変わったのか!

村長
鼠族は特性として鋭い反射神経と素早さを爆発的に増幅する事が出来る。
これはどの一族にも引けをとらん。

ジン
おお!凄い!

村長
にして、ワシの子は特に凄いぞ。2人とも類稀な才能に溢れておる。

ジン
え?あの二人が??

村長
ハハハ!そうじゃ!自慢の子じゃからな!

お姉さん
ちょっとお父さん!!今獣人になったでしょ!

村長
おお!おかえり!!

お姉さん
おかえりじゃないわよ!勝手に獣人化になるのは良くないって言ったのお父さんじゃないの!!
鼠族がバレるからって……

村長
すまんすまん!えっとジンさん?だっけか?この方なら大丈夫じゃよ!いい意味でも悪い意味でもなんもせんからの!!

ジン
ハハ……(まぁーそうですけどね)

お姉さん
もう!!

?
あ……

ジン
あ!さっきの!
…また会ったね。

?
へへー!お兄さんどうしたの?

ジン
え?えっとね。お父さんとちょっとお話をしていたんだよ!

?
そうなんだ。

ジン
うん。優しいお父さんでいいなー。

?
いいでしょー!
ねーねー。なんでお姉ちゃんの事をお姉ちゃんって言うの?お兄さんのお姉ちゃんじゃないのに。

ジン
え?んとね。話せば長くなるよーな。

お姉さん
私が言ったのよー。
お兄さん…ジンさんがなんて呼んだらわからないからお姉さんって呼んでって。

?
そっかー。じゃー私も妹って呼んでいいよ。

ジン
……妹?

?
そうだよ!だってお姉ちゃんの妹だから妹だよ。

ジン
……うん。わかった。じゃー妹さんって言うね!

妹
やったー!
よろしくね!

ジン
はい。よろしくお願いします。

村長
うんうん!良い子だぞ!我が子よ!

お姉さん
もうー。
それよりジンさんは今後どうするんですか?

ジン
……そうですね。
やはりこの辺りの1番でかい街に行ってみようかと思います。
スベル石の事もありますが、色々なものをこの際だから見てみようかなと。

お姉さん
……お父さん!

村長
なんじゃ急に大声をあげて。

お姉さん
私もジンさんについて行っていいかな?

ジン
ええ!?

村長
……

お姉さん
街まで結構な距離があるし、それに1人より2人の方が何かといいと思うんですよね。スベル石も見つかると思います!

ジン
(マジかー!それはそれでめんどくささいことにーーーーー!)

村長
うーむ……

ジン
(ゴクリ)

お姉さん
ね?お父さん!?

妹
私もいく!!

ジン
え??

村長
え?お前もか??

妹
いくーー!いくったらいくーー!

お姉さん
ちょっとちょっと!我儘言わないの!

ジン
いやいや!そもそもそんな急に!

村長
ほれほれ。ジンさんも困っておるじゃろう。

お姉さん
ジンさん!?
私じゃお邪魔ですか?

ジン
いや、お邪魔ではないですが……ほらね…

村長
なんじゃ?うちの娘達が邪魔なのか?

ジン
村長さん!けぇっっっっっしてそんな事ではないのですよー。

村長
ふむ。ならよい。

ジン
(くぅー回避不能ってやつだー。なんなんだよぉーー)

村長
まぁー考えておくわい!

お姉さん
えーーー!?

妹
ずるいぞーお父さんー!!

村長
まぁまぁー。
そんなに急がんでもええじゃろ。
それよりご飯にしようではないか!
今日の獲物はなんじゃ?

お姉さん
もう……ポテトナゲットとウイングルの肉炒めよ。

ジン
ウイングル?

お姉さん
先程、ジンさんに襲って来た動物です。
凶暴ですが、とても良い肉になるのですよ。

ジン
あの時の動物が?
へぇー。

お姉さん
さ!お父さんの答えは後でちゃんと聞くとして、用意しましょう!

妹
私も手伝うー!

お姉さん
料理を作っている間、ジンさんは村を見てきてください。

ジン
え?ありがとうございます。

村長
それが良い。小さいが色々と新鮮なものがあるだろう

ジン
はい。ではお言葉に甘えて…

妹
行ってらしゃいー

ジン
………さて。
時間を作れたからブラっとするか。

ジンは村を散策していたが、村長の言う通り、全てが新鮮に感じた。
ジン
(なるほど。
色々見て回ってみたが、
家の作りはほぼ木を使っているのか。
昔ながらの日本の作りに似ている。
田舎の村だからなのか、はたまた都会に行けば作りが変わってくると思うが、しかし、本当にファンタジーの世界にいるな。まぁいるんだけど。
後、気になるのは鼠族だからといって鼠の独特の嫌悪感は全くないな。本当に人間に似ている。
村の人達も殆ど俺と変わりはない。
変わっているのは襲いかかってきた動物だ。
あの動物は多分俺の世界にいた動物達と同じ。オオカミに似ていたが、
きっと種族みたいなのが違うんだろうな。

村長
おー!いたいた!

ジン
あ、村長さん!

村長
そろそろご飯ができるから家に帰ろう。

ジン
はい!

村長
…先程はすまんなぁ

ジン
あ、いえいえ!そんな。

村長
……ジンさんや。

ジン
はい?

村長
娘を……頼んでもええかなのぉ??

ジン
え??そんな改まって……

村長
あやつは……娘は…憧れがあるのじゃ。

ジン
……え?

村長
小さい時からずーとこの世界を見てまわりたいと言っておるんじゃ……猫族に追いやられて、この村に来た時も、決して心が揺れる事はなく…見てまわりたい……いつか必ずとな……あやつの夢じゃ。

ジン
……

村長
無理にとは言わん。
ジンさんは、何か……大きな目的があるようじゃからの……

ジン
え?決してそんな……

村長
ハッハッハッ!
ワシぐらいの年になれば、そんな隠し事ぐらいお見通しじゃわい!

ジン
ハハ……かないませんね。

村長
目的は何か聞かないようにするよ。
あんたを見た時から、何かこう……
安心する懐かしさがあるからの。

ジン
懐かしさ??

村長
まぁー信用してるって事じゃ!
だから……ジンさんが良ければ娘をよろしくお願いします。

ジン
村長さん………
わかりました。
娘さんのお力をお借りします。

村長
ハッハッハッ!逆に借りると来たか!
よし!娘にはワシが今晩メシの時に伝えよう!

ジン
わかりました!

村長
では向かうとするかのう。

ジン
はい!

村長
あ、手は出すなよ!!

ジン
だ、だ、出しませんよ!!!!

村長
なんじゃつまらん。

ジン
ハハ……

ジンは家に帰ると綺麗に並べられた食器の上に、食欲をそそるご飯が並べられた。
ジン
美味しい!

妹
でしょー!
お姉ちゃんの料理美味しいんだぁ〜

お姉さん
もうやめてよ。
舌にあってよかったです!

ジン
はい!このポテトも美味しいです!

お姉さん
それはこの子が作ったのよ

ジン
へー。妹さんも料理得意なんだね。

妹
へへへ。
舌にあってよかったのです〜

村長
ハハハ!
美味い美味い!ウイングルの肉は最高じゃわい!!

ジン
はい。最高です!

お姉さん
一杯食べてくださいね!

ジン
ガツガツ!!

妹
うまうまーー!

村長
……娘よ
……行きたいか??

お姉さん
え?

村長
ジンさんと一緒に行きたいか?

妹
行きたい!!

村長
お前じゃないわい!

妹
ブーーーー!

お姉さん
……行きたい!!
ジンさんが良ければ行きたい!!
行って……色んな世界をみたい!!

村長
そうか……
わかった!!行ってこい!

お姉さん
本当!お父さん!?

村長
うむ!

お姉さん
ジンさんも!?

ジン
あぁ。よろしくお願いします!

お姉さん
やったぁぁぁぁ!!
お父さん大好きーー!!

村長
ハッハッハッ!

妹
えーーーずるいーー!
私はーーー?!

村長
お前はもうちょい経ったからな!

妹
嫌だ!絶対に行く!!
ついていく!!!!

村長
ぐぬ……お前は本当に勝手に行きそうじゃわい。

ジン
……妹さんも世界を見たいの?

妹
……見たい!お姉ちゃんとジンさんとで一緒に見てまわりたい!!

村長
これこれーそんな事言うではないー。

ジン
……わかりました!
一緒に行きましょう。

村長
……

お姉さん
ジンさん!?

ジン
大丈夫です!何かあれば俺が全力で守ります。……そんな力はないですけど……ハハハ……
けど!お姉さんもいらっしゃるのであれば大丈夫でしょう。家族が近くにいるって良い事ですし……

村長
……

ジン
村長さん!先程は村長さんのお願いを俺が受け入れました!
そしたら今度は俺のお願いを受け入れてください!
この子……妹さんも同行でお願いします!

村長
……やれやれ。
本当に行きたいか??

妹
……うん!私も……この村を出て、初めての世界を見たい!
色々なものを見てみたい!

村長
はぁ〜しょうがないのう。
良いぞ!行ってきなさい!

妹
本当!?
やったぁぁぁぁ!!

村長
ただし、お姉ちゃんの言う事は絶対に守るんじゃぞ!!

妹
うん!絶対に守る!!
お父さん大好きぃぃぃ!

お姉さん
もう……お父さんも甘いんだから……
でも、良かった!

妹
へへへ!お姉ちゃん!ジンさん!よろしくお願いします!

ジン
うん!よろしくお願いします!

お姉さん
さ!料理が冷めちゃうから一杯食べよ!

妹
はーい!!

村長
ジンさん……ありがとう

ジン
やめてください!寧ろ本当にあったばっかなのに……

村長
本当じゃわい。
これも神様からの何かのお告げだったのかもしれんのぉ。

ジン
神様からの??
そんな事は絶対にないですね。

村長
なんでじゃ?

ジン
神様なんて、ろくなもんじゃないからですよ

村長
……ハッハッハッ!!
まるで神様を知っているような言い方じゃわい!

ジン
ハハハ……

村長
後、一番大事な事じゃが……

ジン
え……なんですか??

村長
手は出すなよ。

ジン
だーかーらー!出しませんってば!!

お姉さん
え?なになに?なんの話?

ジン
え?いやいや!何にも!

妹
お兄ちゃんどうしたの??顔赤いよ!?

ジン
でぇーーい!なんでもないです!
うわぁーー!この料理うまーーーい!

村長
ハッハッハッ!!!

妹
変なのー。

こうして夜がふけていった。
鼠族の村長の家に泊まり、翌日にお姉さんと都会に向かう事になる。