みひろ
ちょっと待って!その水飲めるの?
理子
あっ、そう言えば…。
深野
ああ、それなら心配ない。ここは廃墟とは言え誰かが定期的に管理してるみたいだ。
真一
あっ、そうなんですか?
深野
うん。私も以前、春に来た時にもそこの水は飲んでる。安心していい。
西原
あー、助かった!!
5人は水を飲み始めた。
真一
冷えてて美味い!
理子
喉渇いて死にそうだったから、余計に美味しく感じる!
深野
ハハハ。この水場は例の湧水から引いてるんだよ。
みひろ
え!?
西原
湧水って、教祖が見つけた泉の事ですか!?
深野
ああ、そうだよ…?今も湧いてるんだ。
理子
え、ちょっと待って!そんなの飲んでも大丈夫なの!?
真一
やべぇ!だいぶ飲んじまった!
深野
おいおい君達…。まさかこの水に本当に不思議な霊力でもあると思うのかい?
みひろ
そ、それは…。
深野
ハハハ、迷信だよ!ただの。
西原
そ、そうだよな…。ただの湧水だろ?
真一
だ、だよな…。ハハ。
理子
びっくりしたぁ!
真一達はふと、建物の壁に奇妙な絵が描かれているのに気がついた。
真一
この変な絵、一体何だろうな?
西原
宗教画ってやつか?
みひろ
これって人間なの…?
理子
うわ、気持ち悪い!
描かれているのは人間らしいがバランスがおかしい。異常に頭が大きかったり、腕が長い者もいる。さらには首から上が獣になっている人間、虫のように手足が沢山生えているものすらいた。
深野
ふむ、迷信のついでにこの絵についても語っておくかな…。
理子
この奇妙な絵は何なんですか?
深野
これはね教団の教義に関係してるんだ。さっき湧水を飲むと病が治るという話はしたね。
でも、それには続きがある…。
でも、それには続きがある…。
真一
つ、続きって何ですか?
深野
うん。さらに水を飲み続けると永遠の命が手に入るという教義さ。しかも人間を超えた姿に進化出来るという…。
深野は壁の絵をうっそりと眺めながら話をしている。
理子
まさか、本当にそんな事…。
深野
ああ。もちろん言い伝えに過ぎない。でもだからこそ"トコヤミの夜"などという習慣が出来たのかも知れない。
西原
あの、教祖があの世から戻って来るという話ですか?
深野
そう。彼らは不老不死という願望にいつしか取り憑かれたんだろう。
深野は小さく身震いした
深野
少し水を飲み過ぎたかな…。ちょっと手洗いに行ってくるよ。
そう言って深野は建物の裏手へと消えて行った。
真一
あのおっさん、随分とこの村に詳しいんだな…。
みひろ
何か、ちょっと怖いかも…。
理子
それに、この教団っていうのも明らかに変だよ…。こんな宗教聞いた事ない。
西原
ところでさ、今思ったんだけど深野さんてどうやってこの村まで来たんだろ…。
真一
え?
西原
いやさ、俺たちの車以外何も止まってなかったろ?
みひろ
そう言えば、こんな山の中まで何で来たんだろうね…。
理子
ちょっと、変な事言わないでよ!誰かに送ってもらったとかじゃないの?
真一
なあ、さっき水飲んでから寒気するの俺だけかな?
みひろ
え?真一、具合悪いの?
真一
うん、ちょっと…。
西原
悪い、実は俺もあの水飲んでから胸のあたりが変な感じなんだわ。
理子
ちょっ、どういう事!?
理子がそう言った瞬間、建物の裏手で何かが割れるような音が響いた。
みひろ
きゃっ!!
西原
な、何だよ今の音?
真一
あのおっさんじゃないのか?
理子
何かあったのかな!?
西原
何か変だ。俺がちょっと様子見てくるわ…。
続く