テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
129
ねこねこにゃんこ
838
45
#〔インターネット少年/少女〕
狸野 ゆゆせ
249
コメント
1件
すがさん、第8話読み終えました〜🥀 配信本番の空気感がめちゃくちゃリアルで、画面越しに二人の楽しそうなやり取りが浮かんできました。ひかりが「安心する」って素直に言っちゃった後の慌て方とか、レイの「今のところは」って小さく付け足すとことか、もう…心臓にくるやつです。 お互いを「ただの同期」って言いながら、もう絶対ただの同期じゃない距離感になってるのが、読んでてすごくもどかしくて甘酸っぱかったです。次はどんな配信を見せてくれるんだろう。すごく楽しみです🖤
朝比奈 ひかり
朝比奈ひかりは、パソコンの画面を確認して、満足そうに頷いた。 今日はいよいよ、月城レイとの視聴者参加型コラボ配信の日だ。 企画の内容も、話す順番も、視聴者から募集した質問も、昨日のうちに二人で確認してある。サムネイルだって、何度も修正して完成させた。 あとは配信を始めるだけ。 ……なのに。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
通話越しに、レイの呆れたような声が聞こえてくる。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
思わず声が大きくなる。 すると、レイは少しだけ笑った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
あまりにも自然に言われて、ひかりは一瞬だけ返事に詰まった。 レイはいつもこうだ。 冗談ばかり言っているくせに、肝心なところでは不思議なくらい頼りになる。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイの笑い声が聞こえる。 それだけで、ひかりの胸にあった緊張が少しだけほどけた。 大丈夫。 今日もきっと、楽しい配信になる。 なにしろ、隣にはレイがいるのだから。
配信開始の時間。 待機画面には、開始を待つ視聴者のコメントが次々と流れていた。
『待ってました!』 『今日の同期コラボ楽しみ!』 『この二人、最近一緒にいる率高くない?』 『公式が供給してくれるの助かる』
ひかりはコメント欄を見ながら、思わず苦笑した。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
いつもの調子で言い合っているうちに、カウントダウンがゼロになる。 画面が切り替わり、二人のアバターが並んで表示された。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
『始まったw』 『いつもの二人だ』 『息ぴったりすぎる』 『もうこの掛け合いが企画』
コメント欄は、開始早々にぎやかだった。
ひかりが進行し、レイが軽く茶化す。 レイが話を脱線させれば、ひかりが笑いながら戻す。 どちらかが言葉に詰まっても、不思議と長い沈黙にはならない。 まるで、何度も同じ配信をしてきたかのように。
実際には、まだ数えるほどしか一緒に配信していない。 それなのに、ひかりはもう、レイが次にどんな言葉を返してくるのか、なんとなく分かるようになっていた。 そしてレイも、ひかりが困ったときにどんな顔をするのか、声が少しだけ上ずるのはどんなときなのか、だんだん分かるようになっていた。
朝比奈 ひかり
ひかりが明るい声を上げる。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイが答える。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイが笑い、ひかりもつられて笑った。
『何この平和な空間』 『お互いのことちゃんと覚えてるのいいな』 『レイ、ひかりのことよく見てるよね』 『二人とも楽しそうでこっちまで楽しい』
画面の向こうから届く言葉に、ひかりは自然と笑顔になった。 誰かが楽しんでくれている。 自分の言葉に、レイの言葉に、笑ってくれる人がいる。 それが嬉しかった。 そして、レイと一緒なら、その楽しさがもっと大きくなる気がした。
配信開始から四十分ほどが経ったころ。 ひかりは、次の質問を読み上げようとして、手を止めた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
画面に映し出された質問を見て、ひかりは少しだけ眉を寄せる。 レイが横から尋ねた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
数秒。
ほんの数秒だったはずなのに、ひかりには妙に長く感じられた。
『きたあああ』 『質問者ナイス』 『これは気になる』 『逃げるなよ二人とも!』
コメント欄が勢いを増す。
朝比奈 ひかり
ひかりは笑いながら言った。
朝比奈 ひかり
誰に向けた言い訳なのか、自分でもよく分からなかった。 隣でレイが小さく吹き出す。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
そう言って、レイは少しだけ考える素振りを見せた。 ひかりは、なんとなく身構える。 レイなら、きっとまた適当なことを言って笑いに変える。
月城 レイ
レイが口を開いた。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
あまりにもあっさりした答えだった。 レイは特別なことを言ったつもりもないらしく、そのまま続ける。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
ひかりは、すぐに返事ができなかった。 冗談ではない。 いつもの軽口とも違う。 レイは、ごく自然に、本当にそう思っていることを答えている。 そのことが分かってしまったから。
朝比奈 ひかり
ようやく出てきた言葉は、それだけだった。
『回答がガチすぎる』 『一緒にいて楽って最高の褒め言葉じゃん』 『レイ、さらっとすごいこと言ったな』 『ひかりちゃん固まってるw』
コメント欄の勢いは止まらない。
朝比奈 ひかり
ひかりは慌てて笑顔を作った。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイがあっさり否定する。
朝比奈 ひかり
思わず声が漏れた。 レイは、ほんの少しだけ間を置いてから、続けた。
月城 レイ
その瞬間、ひかりの思考が止まった。
『ひかりとは、だって』 『今の聞いた?』 『もう一回言ってくれませんか』 『てぇてぇ……』
朝比奈 ひかり
ひかりは勢いよく画面を切り替えた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
レイの笑い声が響く。 悔しい。 悔しいけれど、どこか嬉しい。 そんな気持ちが胸の中でぐちゃぐちゃになって、ひかりは次の質問を読むことだけに集中することにした。 一方のレイも、画面の向こうではいつもの余裕そうな表情を保っていた。
けれど、本当は少しだけ緊張していた。 あれは冗談ではない。 一緒にいて楽なのも、話していて疲れないのも、ひかりだからだ。 誰にでも同じことを思うわけではない。
でも、それをそのまま伝えるには、まだ少しだけ勇気が足りなかった。 だから、言葉を軽くする。 いつも通りの声で、何でもないことのように。 ひかりがそれをどう受け取ったのか。 気にならないと言えば、嘘になる。
配信は、その後も順調に進んだ。 好きなゲームの話で盛り上がり、視聴者のコメントに笑い、次に挑戦したい企画について語り合う。 気づけば、終了予定の時間が近づいていた。
朝比奈 ひかり
ひかりが言うと、レイが頷く。 画面に表示されたのは、こんな質問だった。
『これから二人でやってみたいことはありますか?』
月城 レイ
レイが言う。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
笑いながら、ひかりは少し考えた。 やってみたいこと。 ゲームの大会に出るのも楽しそうだし、歌ってみたを投稿するのもいい。 二人で大型企画に挑戦してみるのもいいかもしれない。 いろいろ思いついたけれど、最初に口から出たのは、もっと単純な言葉だった。
朝比奈 ひかり
レイがこちらを見る。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ひかりは少しだけ笑った。
朝比奈 ひかり
言ってから、はっとした。 ……あ。 今の、少し素直すぎたかもしれない。 コメント欄を見ないようにしていたのに、視界の端で文字が流れる。
『安心する!?!?』 『今のは大事な発言』 『ひかりちゃんからも出ました』 『もう二人でずっと配信してくれ』
ひかりは慌ててレイを見る。
朝比奈 ひかり
何が「ね?」なのか。 自分でも分からなかった。 ただ、レイが何か言ってくれたら、少しは落ち着く気がした。 レイは、そんなひかりを見つめていた。 ほんの一瞬だけ、いつもの軽口が出てこなかった。 そして。
月城 レイ
いつも通りの声で、そう言った。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
――まただ。
また、そうやって。 何でもない顔で、そんな言葉を口にする。 ひかりは、今度こそ返事に困った。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイは何でもないように頷いた。 けれど、その返事をしたあと、ほんの少しだけ口元を緩めていた。 ひかりには、それが見えなかった。 代わりに、コメント欄の騒ぎだけが目に入る。
『ひかりとなら、だって!?』 『レイくん、それ特別扱いでは』 『二人とも無自覚なの?』 『はい、公式ありがとうございます』
朝比奈 ひかり
ひかりは必死に訴える。
月城 レイ
レイも続けた。
『ただの同期(大声)』 『そのわりに距離が近い』 『はいはい、同期ね』 『明日にはまたコラボしてください』
朝比奈 ひかり
ひかりが言う。
月城 レイ
レイは、すんなり肯定した。 そして、小さく付け足す。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
最後までそんな調子で、配信は笑いに包まれたまま終了した。
配信終了のボタンを押す。 画面から二人のアバターが消え、賑やかだったコメント欄も見えなくなった。 静かになった部屋で、ひかりは大きく息を吐いた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ヘッドセットを外しながら、ひかりは背もたれに体を預ける。 楽しかった。 本当に、楽しかった。 準備した企画がうまくいったことも、視聴者が楽しんでくれたことも嬉しい。 だけど。
朝比奈 ひかり
ひかりが言うと、レイは笑った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
レイは、わざとらしく考えるふりをした。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
ひかりは固まった。 通話越しの声は、さっきまでと変わらない。 冗談を言うときの、あの少し楽しそうな声。 だからきっと、いつものからかいだ。 そう思おうとした。
朝比奈 ひかり
気づけば、そんなことを聞いていた。 レイは少しだけ黙った。
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
いつものように笑って、はぐらかす。 なのに、ひかりの胸はさっきから落ち着かない。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
言えるわけがない。 そんなことを言われると、意識してしまうから。 冗談なのか、本音なのか分からないから。 そして、本音だったらいいのに、なんて思ってしまうから。
朝比奈 ひかり
ひかりは、結局いつもの言葉で逃げた。 レイは、それ以上追及しなかった。
月城 レイ
短く返して、それから少しだけ声を落とす。
月城 レイ
ひかりは顔を上げた。
朝比奈 ひかり
月城 レイ
朝比奈 ひかり
月城 レイ
あまりにも自然に言うものだから、ひかりは少しだけ笑ってしまった。
朝比奈 ひかり
それだけで、胸があたたかくなる。 次の企画の予定はまだ決まっていない。 それでも、また一緒に配信をすることが、もう当たり前の予定みたいに思えた。 それが嬉しい。 少し怖いくらいに。
通話を切ったあと、月城レイはスマートフォンを机の上に置いた。 暗くなったモニターには、自分の部屋がぼんやり映っている。
月城 レイ
自分で言った言葉を、もう一度思い返す。 勢いだった。 ……いや、違う。 勢いに任せて、言ってしまっただけだ。
本当は、ずっと思っていた。 ひかりが楽しそうに笑うところも。 こちらの冗談に、少しむきになって返してくるところも。 真剣な話になると、急に声がやわらかくなるところも。
ひとつひとつが、少しずつ気になっていた。 いつからだったのかは、もうよく分からない。 ただ、最近はひかりと話せる時間を楽しみにしている。
次は何を話そうか。 どんな企画をしようか。 ひかりはどんな反応をするだろうか。 そんなことを、自然に考えるようになっていた。
月城 レイ
レイは小さく呟いた。 ひかりの前では、いつだって余裕でいたい。 冗談を言って、からかって、相手の反応を見て笑っていたい。 でも最近は、ひかりが何か言うたびに、こっちのほうが動揺している気がする。
今日だってそうだった。 『レイと一緒にやると、なんか安心するんだよね』 あの言葉を聞いた瞬間、胸の奥が妙に熱くなった。 自分も同じだったから。
ひかりと一緒なら、多少の失敗も怖くない。 言葉に詰まっても、気まずくならない。 無理に面白いことを言おうとしなくても、自然に話せる。 そんな相手は、今までそう多くなかった。 だからこそ、余計に大切にしたいと思う。 ……大切にしたい、か。
レイはそこで、考えるのをやめた。 今はまだ、言葉にしなくていい。 急いで答えを出す必要もない。 ただ、次にひかりと話すときも、今まで通り笑っていたい。 できれば、今までより少しだけ長く。 そう思いながら、レイはスマートフォンを手に取った。
ひかりとのトーク画面を開く。 何か送ろうとして、指が止まった。 『今日は楽しかった』 それだけ送るのも、なんだか照れくさい。 結局、レイは短く打ち込んだ。
月城レイ:今日はおつかれ。ちゃんと休めよ
少しして、返信が来た。
朝比奈ひかり:レイもね! 今日はありがとう。すっごく楽しかった!
レイはその文面を見て、思わず笑った。
月城 レイ
何が、とは自分でも分からなかった。 ただ、ひかりが楽しんでくれたことが嬉しかった。 そして、次もまた一緒に笑いたいと思った。 それが今の自分にとって、何より確かなことだった。 まだ、恋だなんて名前をつけるには早い。 けれど。
ひかりの隣にいることが、いつの間にか当たり前になっていた。 そして、その当たり前が、これからも続けばいいと思っている。 その気持ちだけは、もう冗談ではなかった。