ーちゅんちゅん、チチチー (訳:朝だぞ起きろ人間共！)

バタバタと飛び起きて

時計を見てまた飛び跳ねる

盛大に寝坊して遅刻ギリギリ

こんな日に限って家族はみんな朝早い

文句を垂れても始まらない

慌てて身支度を整える

初恋あるあるその1 『好きな子の夢を見がち』

幸せなはずなのに

遅刻ギリギリのせいで余韻にも浸れない

鞄にお菓子と菓子パンを詰め込んで

しっかりと鍵の確認をして家を出る

変な鳴き声を上げながら

既に人通りが少なくなった通学路を走った

まだ一日の始まりだと言うのに

もう残りライフは少なくなってしまった

人生で1番の全力疾走のおかげで

奇跡的に始業の5分前には校門に着いた

初恋あるあるその2 『好きな子に会う前に見た目チェック』

ポポイと靴から上履きに替える

教室から1番近いトイレに入り

鏡を見て身だしなみを整える

キーンコーンカーンコーン

結局アホ毛は立てたまま

自分の席に急いで座った

1時間目の途中

トントン

授業中に回ってきた紙切れ

よくある手紙回しだ

宮下

初恋あるあるその3 『好きな人なら嫌な事でも何でもよくなる』

こっそりと宮下クンの方を見る

宮下クンもこちらを見ていたらしく

目が合うと、口パクで『アホ毛』って言われた

本当なら怒れるはずなのに

恥ずかしいけど嬉しくて

両手で顔を隠して俯く

初恋あるあるその4 『ちょっとした事で相手も自分に気があると想像する』

1人で悶々と想像していると

パコンッ

教科担任に頭をしばかれた

休み時間

初恋あるあるその5 『緊張して上手く話せない』

初恋あるあるその6 『思わず言い返して痴話喧嘩みたいになる』

そこでピタリと動きを止める

そしてギクシャクと手を引っ込めた

初恋あるあるその7 『無意識に距離が近くなる』

宮下クンが照れてるなんて

レアなものを見てしまった

初恋あるあるその8 『好きな人がたまに可愛く見える』

宮下クンの背中を見送り

ふぅっと大きく息を吐く

秘密とか言われると変にドキドキしてしまう

宮下クンは優しい男の子

クラスの皆に話し掛けてる

勘違いしたらダメ

そんなの分かってるけど

意識せずにはいられない

初恋あるあるその9 『勘違いしない様にセーブをかける』

キーンコーンカーンコーン

無情にも授業開始の合図は鳴った

下校中に伸びをしながらポツリと呟く

学校は嫌いじゃないけど

どうしてこんなに長く億劫に感じるのだろう

家までの道をテクテク歩きながら

頭の中は別世界へと飛んでいた

初恋あるあるその10 『一日の終わりに好きな人の思い出を遡る』

初恋あるあるその11 『好きな人の好きな人が知りたい』

初恋あるあるその12 『告白の仕方をめちゃくちゃ悩む』

初恋あるあるその13 『悩み過ぎて溜め息が多い』

驚き過ぎて声がひっくり返ってしまった

宮下クンはクスクスと笑って隣を歩く

おそるおそる宮下クンに聞くと

初恋あるあるその14 『思ってる事がたまに口に出る』

安堵の溜め息を吐くと

宮下クンは口をムッとへの字に曲げた

宮下クンは少し不機嫌なまま

スタスタと何処かへ歩いて行く

訳も分からないままに

大人しくその後ろを着いて行った

着いたのは近くの神社

この時間はほとんど人がいない

初恋あるあるその15 『相手の反応が良くないと嫌われたと思いがち』

柔らかく微笑む宮下クンを見て

本当に怒ってないんだと安心する

宮下クンは短く返事をすると

分かりやすく深呼吸をした

宮下クンの頬が赤くなってる

つられてコッチも赤くなる

けど頭が追い付かない

今、何を言われたの？

宮下クンは背中を向けて帰って行った

しばらくぼぉっと突っ立っていたけど

さすがに暗くなってきたので家に帰った

お風呂上がりで濡れた髪を乾かしながら

自室のベッドでくつろぐ

ご飯も食べて宿題もやった

今日はもう寝るだけ

そうポツリと呟いて

ドライヤーをガタンッと床に落とした

大声で叫ぶと

下からお母さんの「月乃うるさい！」って声が聞こえた

でもそんなの頭に入らないくらい

頭も心も爆発していた

初恋あるあるその16 『告白されたと気付くのが遅い』

初恋あるある講座 〜fin〜