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贈り物

1 - 贈り物

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2020年03月10日

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私は中村真優美。 双子の娘の母。

中村 真優美

花!咲!
遅刻するわよ!

はーい!

いってきまーす!

2人は小学生3年生に なった。

もうすぐあの日から9年経つ。

中村 真優美

武さん、私も行ってきます。

旦那

...

そう言いながら仏壇の写真に 手を合わせた。

今から話すのは9年前に起こった 悲劇と奇跡の話だ。

2011年3月11日...

出産のため入院していた時 私は仕事中の旦那と 電話をしていた。

旦那

おお...もうすぐ
産まれるのか!

中村 真優美

ええ、そうよ。もうすぐ
パパになるのよ笑

旦那

ああ、楽しみだなぁ
出産に立ち会えないのが
残念だけど...

中村 真優美

気にすることないわ
お仕事頑張ってね

旦那

ありがとう。
なるべく早く終わらせて
すぐに向かうよ。

中村 真優美

ええ、わかったわ。

まさか、この電話が 旦那との最後の会話になるなんて その時は知る由もなかった...。

そして...

...オギャア!...オギャア!

助産師さん

おめでとうございますー!

助産師さん

元気な双子の女の子ですよ!

私は元気な双子の女の子 を出産した。

中村 真優美

わぁ...私の娘達だ...

早く旦那にも娘達の姿を見て欲しい と私は楽しみに待っていた。

しかし、午後2時46分...

中村 真優美

!!地震!!

大きな揺れが私を襲った。

助産師さん

中村さん!大丈夫ですか!?

中村 真優美

は、はい!

助産師さん

こちらに避難して
ください!!

中村 真優美

娘達は?!

助産師さん

産まれた子達はこちらで
安全な場所に避難させています!

助産師さん

中村さんも早く!

私は必死で病室から出た。

促されるがままに高台まで避難した

中村 真優美

はぁ...はぁ...

助産師さん

産後なのに走らせてしまって
ごめんなさい。

中村 真優美

いえ、大丈夫です

中村 真優美

(旦那は...大丈夫なのかしら)

私はただただ旦那の無事を 祈るしかなかった。

すると...

中村 真優美

!!なにあれ?!

助産師さん

!!つ、津波です!!

大津波が私たちの町を飲み込む

中村 真優美

(私の家が...)

震災は私たちの生活を 大きく変えてしまった。

震災発生から1日後...

中村 真優美

(よく眠れなかったな...)

助産師さん

中村さん、体調は
どうですか?

中村 真優美

不安でよく眠れませんでした

助産師さん

先程、中村さんの旦那様の
会社の方から連絡があったの
ですが...

中村 真優美

え?

助産師さん

今旦那様の上司が
こちらへ向かっているそう
なので暫くお待ちください

中村 真優美

は、はい

中村 真優美

(何があったのかしら...)

旦那とはあの電話のあとから 連絡をとれていなかった。

そして、旦那の会社の上司が 病室にやってきた。

旦那の上司

中村くんの奥さんで
間違いないですね?

神妙な面持ちで私に話しかけた。

中村 真優美

ええ、はい

中村 真優美

...どうしてここに?

旦那の上司

ちょっと今から向かうところに
ついてきて欲しいんです。

中村 真優美

わかりました...

言われるがままに、 私はその後をついて行った。

旦那の上司

ここの部屋に...

部屋に入ると、そこには 旦那の姿があった。

中村 真優美

えっ...嘘...

私はその場でへたり込んだ。 旦那は亡くなっていた。

旦那の遺体の横には 津波に飲まれた 花束があった

旦那の上司

...こういうことなんだ

中村 真優美

そんな...どうして...

旦那の上司

丁度中村くんが
仕事を終えた頃に地震が
起ったんだ。収まってから
車でここへ向かっていた時

旦那の上司が涙をこぼし はじめた。

旦那の上司

津波に...巻き込まれて...

旦那の上司

今朝...車で...遺体で
発見された...。

中村 真優美

...そうなんですか

私は悲しさのあまり 涙が出なかった。

旦那の上司

私が...私が中村くんを
早く病院へ向かわせれば...
こんなことには...

旦那の上司

部下とその家族に辛い思いを
させてしまった私は...

旦那の上司

上司失格だ...!

旦那の上司は泣きながら 土下座をした。

中村 真優美

...部長さんの責任
じゃないです!

旦那の上司

...

中村 真優美

確かに旦那は亡くなって
しまいました...

目から大粒の涙がこぼれた。

中村 真優美

でもそれと引き換えに

中村 真優美

可愛い可愛い娘達を
私に授けてくれました

中村 真優美

きっと...旦那からの
最後の贈り物です...

旦那の上司

奥さん...

私は冷たくなった旦那の 体をしばらく抱きしめた。

中村 真優美

武さん...

中村 真優美

私達のことは
心配しないで...

中村 真優美

大切に大切に
育てるから...

旦那

...

その時に旦那の顔が 少し笑顔になった気がした。

数日して私は退院し、 娘達をつれて実家に帰った。

母は持病があり、 出産に立ち会うことが できなかった。

真優美...聞いたよ...
武さんが亡くなったって...

中村 真優美

ええ...

中村 真優美

可愛い娘達と
引き換えにね...

そうなのね....

中村 真優美

それでね、この子たちの名前を
考えたの

なんだい?

中村 真優美

「花」と「咲」

可愛らしい名前じゃないの

中村 真優美

被災した街にまた

中村 真優美

笑顔の花が咲きますように

中村 真優美

そんな意味を込めたの

きっと武さんも...
喜んでいるよ...

中村 真優美

ええ...そうね...

お父さん...孫が生まれたよ...

母はそういいながら父親の 仏壇に手をあわせた。

そして、9年後の3月11日 午後2時46分

テレビの音声

...黙祷

中村 真優美

...

...

...

震災の犠牲者に黙祷を捧げ 旦那の仏壇へ向かった。

お父さん、私達9歳になったよ

私達が生きているのはお父さん
のおかげだよ

中村 真優美

娘達は元気です...
これからも...
天国から...

中村 真優美

暖かく見守っていて
くださいね...

私達は旦那の遺影を見つめながら 静かに仏壇に手を合わた...。

終わり。

もしこの話を見て 不快に思われる方が いたらごめんなさい。

震災で犠牲になった方々の ご冥福をお祈り申し上げます。

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