シン
これで信じる気になっただろう?
ミノリ
うん…
ミノリ
当事者であるサキコさんの様子を見たらね
ミノリ
やっぱり、絵に込められたメッセージを
ミノリ
無意識のうちに受け取っていたんだ
ミノリ
さすがだね、シン
ミノリ
呪いの絵の真相を解き明かしてさ
ミノリ
サキコさんも、モエさんのメッセージを知ることができて良かった
ミノリ
あのままだったら、ずっと罪悪感に苛まれて
ミノリ
死んじゃったかもしれないし
ミノリ
サキコさん、リストカットの痕いっぱいあったからね
シン
気づいていたのか
ミノリ
まあね
シン
お前もさ、サキコさんのように前向きに…
ミノリ
それより
ミノリ
小学生の頃を思いだしたよ
ミノリ
真実の瞳探偵団、覚えてるでしょ
シン
もちろん
ミノリ
あの頃は楽しかったなぁ…
シン
なあ、ミノリ
ミノリ
うん?
シン
今回のことでわかっただろ
シン
この世に霊現象は存在しないんだ
シン
死んだら、それで終わりなんだよ
ミノリ
呪いの絵については理解したよ
ミノリ
きっとシンの推理が正しいんだね
ミノリ
サキコさんも良い結果になったと思う
ミノリ
でも、それでも…
ミノリ
あたしはまだ、諦めきれない
ミノリ
幽霊も、死後の世界も
ミノリ
今回は証明できなかったけど
ミノリ
もしかしたら、あるかもしれない
シン
いい加減に学ぼうぜ
ミノリ
やだ
ミノリ
幽霊も死後の世界もあるんだって信じ続ける
ミノリ
それで、いつか証明するの
ミノリ
安心して死ぬために
シン
本当に、お前って奴は…
シン
救いようのないバカだよ…
シン
だけど、絶対に死なせないぞ
シン
幽霊も、死後の世界も存在しないんだ
シン
そんなもののために死ぬなんてくだらない
シン
どんなにつらくても
シン
この世界で生きなきゃならないんだ
モエ
ありがとう、あなたたち
モエ
あなたたちのおかげで、色々とスッキリしたよ
モエ
本当はね、道具を壊されて落ち込んでいたわけじゃないの
モエ
あのとき、親友だと思っていたサキコもいたの
モエ
でも、サキコは見ているだけだった…
モエ
それがね、すごく悲しかったの
モエ
だけど、さっきのサキコを見て
モエ
サキコの本心が聞けて良かった
モエ
本当は、助けてもらいたかったよ…
モエ
でも、サキコがそれをすごく後悔しているって知れて
モエ
嬉しかったし、ほっとした
シン
いじめっ子たちに謝罪させる件はどうしますか?
モエ
もういいかな
モエ
本当はわかっていたから
モエ
私が死んだのは、いじめっ子やサキコのせいじゃない
モエ
居眠り運転していた奴が一番悪くて
モエ
ぼんやりと歩いていた私も悪いの
モエ
死んで悔しくて、悲しかったからさ…
モエ
どこかに感情をぶつけたかっただけなの
モエ
だから、もういいんだ
モエ
区切りが付いたからね
モエ
ほら、身体も透けてきたし
モエ
心置きなく、逝ける気がするよ
シン
そうですか…
モエ
本当にありがとう
シン
こちらこそありがとうございます
シン
モエさんの知識のおかげで
シン
ミノリの死を回避できましたから
モエ
面倒な幼なじみを持って大変ね
モエ
でも、幼なじみは大切にしなさい
シン
ええ、肝に銘じておきます
モエ
そろそろ時間みたい
モエ
それじゃあね
モエ
あ、そうそう、そこのあなた
トウコ
あたし?
モエ
あなたも心残りがあるから残っているんだよね
トウコ
はい、恐らく…
モエ
なんとなくだけど
モエ
あなたは、普通の幽霊とは違う気がする
モエ
はっきりとはわからないけどね
トウコ
なぜそう思うんですか?
モエ
根拠はないよ、感覚的なものかな
モエ
なんとなく異質っていうか
モエ
まあ、なにか事情があるのよね
モエ
でも、たぶん大丈夫
モエ
そこの彼氏がきっと解決してくれると思うから
モエ
それだけ言いたかったの
モエ
それじゃあね
トウコ
モエさん、満足して逝けたね…
シン
そうだな
トウコ
サキコさんもきっと立ち直れるだろうし
トウコ
ミノリも信じてくれたし
トウコ
事件解決だね…
シン
トウコ…
シン
さっきのモエさんの話が気になるのか?
トウコ
まあ、ね
トウコ
だってモエさん勘違いしてたもの
トウコ
シンのこと、彼氏だって
トウコ
別にそういうのじゃないのにね
トウコ
ま、あたしは検討してあげてもいいけど
シン
…………
トウコ
ごめん…
トウコ
うん、ちょっと気になってる
トウコ
あたしは、普通の幽霊と違うのかな
トウコ
この世に存在しているのも
トウコ
心残りがあるからじゃないのかな…
シン
俺にはわからない
シン
でも、トウコがどんな存在であっても
シン
俺たちの関係は変わらない
トウコ
ありがとう、シン
トウコ
それよりさ、遠くからシンの推理するところ見ていたけど
トウコ
さすがだったよ
トウコ
サキコさんがやってきたときはどうなるかと思ったけど
シン
結果的に良かったな
シン
やっぱり推理を細部まで作り込んだおかげだな
シン
急な出費は痛かったけど
シン
ペトロールも用意しておいて良かった
トウコ
モエさん、ペトロール持っていなかったもんね
シン
だな
シン
美術室にも置いてなかったし
シン
あったとしても備品を割るわけにもいかないし
シン
買って偽装するしかなかった
トウコ
ミノリを納得させるためだもん、仕方ないよ
シン
いくら思い込みの激しいミノリといえども
シン
それなりに説得力のあるトリックを示してやらないと
シン
納得しないからな
トウコ
科学的な証拠と、心理的な根拠
トウコ
二つ用意したおかげで中々それっぽかったもん
シン
化学物質過敏症というのはちょっと苦しかったけどな…
シン
ペトロールで本当に体調不良になるか疑問だし
シン
でもまあ判定が難しい病気だし
シン
ミノリが調べたところで真相はわかるまい
トウコ
それよりもさ、「202」と「SOS」のトリックだけど
トウコ
あれのほうが苦しくなかった?
トウコ
実際、ミノリも半信半疑だったし
シン
たしかに、危なかったな
シン
でも、あのトリックを用意したおかげで
シン
サキコさんは変わるきっかけを得られたんだ
シン
必要な偽装工作だったと思う
トウコ
そうだね…
トウコ
なにはともあれ
トウコ
事件解決だね
数日後
少年の幽霊
あ、お兄ちゃんたち
シン
やあ、バスの少年
少年の幽霊
あれからずっとお父さんのそばにいて
少年の幽霊
お父さんを観察していたんだけど…
少年の幽霊
わかったことがあるんだ
少年の幽霊
実はね
少年の幽霊
お父さんは
少年の幽霊
本当のお父さんじゃなかったんだ…
シン
えっ…
少年の幽霊
ぼくは、お母さんの浮気相手の子どもみたい
トウコ
そんな…
少年の幽霊
お父さんはそれで悩んでいたんだ
少年の幽霊
お父さん、浮気相手のことも調べたみたいで
少年の幽霊
日に日にぼくが浮気相手に似てきて
少年の幽霊
ずっと苦しんでいたんだ
シン
そうだったのか…
少年の幽霊
ぼくは、お父さんのそばにいるだけで苦しませていたんだよ…
少年の幽霊
ぼくが殺された理由は、そういうことだったんだ
シン
そっか…
シン
これからどうするんだ
シン
もしつらかったら、俺たちと一緒に…
少年の幽霊
ありがとうお兄ちゃん
少年の幽霊
でも、いいんだ
少年の幽霊
ぼくにはまだやることがある
シン
やること?
少年の幽霊
お父さんが、これからどういうふうに生きるのか見届けたいんだ
少年の幽霊
お父さんの気持ち
少年の幽霊
ぼくが生まれた意味
少年の幽霊
それがわかるまで…
少年の幽霊
ぼくはお父さんのそばにいるよ
シン
生まれた意味、か…
シン
難しいな
トウコ
あたしにも、生まれた意味はあるのかな
トウコ
幽霊として、ここに留まっている理由も
シン
あるさ
シン
今はわからないだけで
シン
いつか見つかるよ
トウコ
それが見つかったとき
トウコ
あたしはどうなるのかな
シン
あっ
トウコ
どうしたの?
シン
ミノリからメッセージが届いたんだけど
シン
また霊現象が発生したって…
トウコ
まさか…
シン
そのまさか
シン
「今度こそ本物っぽい。あたしも幽霊になれる日は近い」
シン
だってさ…
トウコ
この調子じゃ、また忙しくなりそうね…
シン
ミノリの野郎…
シン
あいつが死ぬ前に、俺が過労死しそうだな…








